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路線バスの危険運転を顔認識で防ぐ、KDDI開発のIoTソリューション

 KDDIは、IoTを活用した路線バスの危険運転予防システムを開発。小湊鐵道の協力により実証実験を行った。

 今回、開発されたシステムは、バス運転士の教育に役立つもの。運転席にカメラを設置し、画像解析によって表情や目線の動きを検知。驚いた表情やわき見運転などを記録する仕組みとなっている。

 システムはUSBカメラや小型コンピューター「Raspberry Pi」とルーターを組み合わせて構築。カメラで運転士の顔を5秒ごとに撮影。画像解析サーバーで、驚きや眠気などの表情の変化、わき見運転などを検知。デジタルタコグラフの車両情報と組み合わせ、一定時速以上で走行している場合に注意すべき運転傾向としてレポート化する。

システムの利用イメージ

 同様のサービスとして、ウェアラブルデバイスを用いて運転状況の把握するサービスはすでに他社からも提供されているが、KDDIのシステムは運転士が特別なデバイスを着用する必要がなく、煩わしさや着用忘れの懸念もないことが強みという。

 小湊鐵道の路線バスでは、2017年5月14日~31日の13日間で実証実験を行った。その結果、期間中に290件の注意情報を取得。ヒヤリ・ハットにつながりやすい時間帯の把握や、運転士ごとの傾向把握につながったとしている。

市販のUSBカメラや「Raspberry Pi」を活用

「ヒヤリ・ハット一歩手前」の事例収集に活用

 路線バス会社において、安全管理体制の構築は重要課題となっている。特に近年、バス運転士の疲労や健康上のトラブルを原因とした事故が増加傾向にあることから、国土交通省は事故の前段階にあたる「ヒヤリ・ハット」事例の情報収集・活用を呼びかけてきた。

 小湊鐵道もバスにドライブレコーダーやデジタルタコグラフといった機材を導入し、急ブレーキがかかったときなどに自動で記録体制を整えてきたという。

小湊鐵道 バス部 次長 小杉直氏
KDDI ビジネスIoT企画部 部長 原田圭吾氏

 一方で、課題を感じていたのが、「ヒヤリ・ハットの一歩手前の情報収集」だった。通常、バスの運転士は、急ブレーキを極力使わないような運転を心がけている。つまり、ヒヤリ・ハットにつながるような事例でも、急ブレーキを使われる機会は少なく、ドライブレコーダーで記録されないことも多い。

 こうした「ヒヤリ・ハット寸前」の事例の収集が今回のソリューションの目的だ。今までは運転士の記憶に頼って収集していたこうした情報を、レポートの形式で自動で収集でき、効果的な事故防止教育に繋げられるという。

 KDDIは「IoT クラウド Creator」のサービスとして同システムを開発。同サービスはユーザーのニーズを聞きながら開発方針を策定していくアジャイル開発の手法を採用。小湊鐵道の課題に小回りのきく開発で対応できたという。

 既存のデバイスやサービスの組み合わせで、安価に実現した点も、今回のポイントだ。正式サービス化された際は、月額数千円程度(通信費別)で提供できる見込みとしている。コストについて、小湊鐵道 バス部 次長 小杉直氏は「路線バスには高精度なデジタルタコグラフやドライブレコーダーなど、1カ月に数十万円の維持費がかかる安全装置が取り付けられている。それに付加する機能として、1カ月に数千円というのは優秀だと思う」とコメントした。

 KDDIは今後、正式サービス化への検討を進めていく方針で、小湊鐵道以外のバス・運送事業者への試験展開も始めている。