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KDDIの引力を使ってグローバルに羽ばたく、東証グロース上場のソラコムが目指す世界

 26日、KDDIグループのソラコムが東京証券取引所グロース市場へ新規上場した。26日午前に東証でセレモニーが開かれ、午後には都内で会見が開かれた。

 会見にはソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏や、KDDI 代表取締役社長の髙橋誠氏らが登壇し、上場までの経緯や今後の展望などを語った。

左:玉川氏、右:髙橋氏

 ソラコムの設立は、今から10年ほど前の2014年11月にさかのぼる。その後2017年8月に、KDDIによる子会社化を受け、KDDIグループに参画。IoTプラットフォームサービスをグローバルで展開し、現在は東京本社のほか、米国・ベルビュー(ワシントン州)と英国・ロンドンに事業拠点を構える。

 社名と同じIoTプラットフォーム「SORACOM」は、IoT導入のハードルを下げる法人向けサービス。さまざまな企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させる役割を担い、シェアリングモビリティのLUUPやAI通訳機のポケトークなどが活用事例として挙げられる。

 世界中で600万回線契約の実績を持ち、営業利益は5期連続黒字となる見込みのソラコム。同社の事業を支えるのは、売上全体の7割ほどを占めるという「リカーリング収益」だ。「繰り返す」という意味の通り、サブスクリプションによる定期的な収益を指すリカーリング収益が、継続して伸長している。今回の上場により、国内外でさらなる成長を目指していく。

 東証グロース市場への上場を見据え、ソラコムが進めていたのは「スイングバイIPO」による準備。スタートアップが大企業のサポートによって成長しながら上場を目指すことを、宇宙探査機が惑星の引力を利用して加速する「スイングバイ」と重ねている。

 玉川氏によれば、スイングバイIPOのコンセプトが生まれたのは2018年の年始だという。2017年のKDDIグループへの参画後、想定以上に回線数が増え、「もっとアクセルを踏めばさらに成長できる」と考えた玉川氏は、KDDIの髙橋氏にIPO(新規上場)の手段として相談した。

 そのときの髙橋氏は「非常にサポーティブ」(玉川氏)。しかし、髙橋氏から「一度KDDIグループに入ったソラコムが再び外に出る(上場する)と、けんかでもしているのでは? と思われる。ポジティブなコンセプトを考えてほしい」と言われ、チーム内の検討を経てスイングバイIPOに行き着いた。

玉川氏

 髙橋氏は、自動車などさまざまなものがインターネットでつながる「コネクテッド」について触れ、「我々もトヨタ自動車を中心にたくさんのコネクテッドをやっているが、安定したコネクテッドを求める動きと、スピード感を持っていろいろな領域に拡大するIoTの2種類がある」とコメントした。

 今後のソラコムとの取り組みによって「(安定性とスピード感の)ハイブリッドが手に入る」と髙橋氏。KDDIにとってもスタートアップの力はプラスになると語り、期待感をのぞかせた。

髙橋氏