“おサイフケータイ”5周年、ドコモが記念サイト公開


 携帯電話に非接触IC「FeliCa」のチップを搭載することで、決済機能や会員証機能などが利用できる「iモード FeliCa」がスタートしたのは2004年7月10日のこと。「おサイフケータイ」という愛称で親しまれ、今年で5周年を迎えることから、NTTドコモではこれまでの状況をとりまとめたレポートを発表するとともに、キャンペーンサイトを開設した。

おサイフケータイ、5年の歩み

キャンペーンサイト

 7月1日付けで発表された「ドコモレポート」によれば、5月末時点のおサイフケータイ対応機種を利用する契約数は3480万件、対応店舗数は約90万店となった。

 おサイフケータイ対応機種を持つユーザー4000人と、実際に利用しているユーザー1000人を対象として、3月にアンケートを行った結果も明らかにされている。それによれば、所有者4000人のうち、実際におサイフケータイ対応サービスを利用しているのは26.1%となった。

 利用率を年齢別に見ると、20代男性は35.9%、30代男性は37.3%、40代男性が34.7%となった一方、20代女性は19.8%、30代女性は24.1%、40代女性は17.5%となり、総じて男性のほうが多く利用していることが明らかとなった。

 ただし、2007年度と2008年度で利用率を比較すると、20代/30代男性は前年より1.3倍、40代男性は1.2倍となったのに対し、20代女性は1.6倍、30代女性は1.5倍、40代女性は1.4倍と、男性よりも高い伸び率を記録した。

 利用する場面としては、他を圧してコンビニエンスストアが最も多く、83.9%となった。次いで、自動販売機が26.3%、切符・定期券が26.2%、飲食店での支払いが20.3%などとなっている。多くの場面において、女性よりも男性のほうが利用率が高くなっているが、「薬局・ドラッグストア」「スーパーマーケット」「ショッピングモール」は女性のほうが利用率が高い。

 同社では、おサイフケータイ5周年を記念したキャンペーンサイトをオープン。同サイトでは、オリジナルキャラクターの「忠犬ピッ太」が登場し、キャンペーンの内容やおサイフケータイの使い方を案内する。


課題はユーザー層の拡大

 おサイフケータイが5周年を迎え、ドコモのフロンティアサービス部おサイフケータイ事業推進担当課長の鈴木茂美氏と、フロンティアサービス部の金平真由美氏にこれまでの流れと、今後の展開について聞いた。

――今回のドコモレポートで利用率が示されましたが、どのように捉えていますか?

鈴木氏
 20代~30代の男性が多いということで、ITリテラシーの高いユーザー層に多く利用されていると思います。ただ、女性ユーザーは前年比1.6倍になるなど、伸びは大きいですね。スーパーマーケットやファストフード、ドラッグストアといった店舗で利用されているのでしょう。今後も伸びる余地は大いにあると思っています。

ドコモの鈴木氏(左)と金平氏(右)

――ITリテラシーの高い層が多いということは、裏を返せば、それ以外の層にはまだ利用されていないということになりますが、何が一番大きな課題でしょうか。

鈴木氏
 一番の課題は、初期設定の難しさでしょうか。各種アプリケーションはそれぞれ独自の設計ですので、そのあたりが難しいのでしょう。

――個人情報をある企業に預けて、初期設定や機種変更が手軽に行えるようになれば……と考えることがありますが、実際は難しいのでしょうね。

金平氏
 各種サービスは、各社さんがそれぞれ提供・運営されるものですし、業界によって独特の言い回しや、法律の違いといったものがありますから、現実的には難しいでしょう。

――アンケートを見ると全体の利用率が26.1%とのことですが、どう見ていますか。まずまずの数値、といった印象を受けましたが。

鈴木氏
 伸び率は期待した通り、といったところですが、もっと伸びる余地はあると見ています。

――おサイフケータイがスタートして、手応えを感じた瞬間はあったのでしょうか。

金平氏
 「これは行けるかも」と感じるような、大きな変動ということはなかったですね。全体的な利用率はサービス開始以降、徐々に徐々にと伸びてきた形です。当初は対応機種が限られていましたし、ある程度利用率は保たれていました。いきなりポンと10%、20%と成長した瞬間があったわけではないのです。

――なるほど。

金平氏
 男性ユーザーのほうが利用率が高いという形になっていますが、女性ユーザーに「なぜおサイフケータイを使わないのか」と尋ねると、「オトク感がなかったり、現金との差がなければ、おサイフケータイを利用する意義がない」と捉えていることがわかりました。ただ、一度でもおサイフケータイの機能を使ったことがある人は、サービス1つだけではなく、複数のサービスを利用するようになるという傾向があります。最初のハードルは高いのですが、それを乗り越えれば、積極的に利用されるようです。

――利用されるシーンとして、コンビニが非常に多いですね。

鈴木氏
 1つは、どのコンビニでもリーダーライターがある、という状況になってきたことですね。またおサイフケータイをよく使う層は、コンビニもよく訪れるということもあります。

金平氏
 2007年度と比べ、2008年度では女性の利用率が伸びましたが、2008年度の大きなトピックは、マクドナルドさんの「かざすクーポン」の登場です。これは、家族でマクドナルドの店舗に行ってクーポンをかざす、といった使われ方なのかもしれません。

――おサイフケータイに関するトラブルとして、ユーザーからはどのような声があがっているのでしょうか。

これまでの経緯と今後の課題、展望について語った両氏

金平氏
 トラブルというか、問い合わせの中で大きなものは登録方法ですね。それから、おサイフケータイユーザーであっても、いつの間にかICカードロックがかかってしまい、解除方法がわからないという声もあります。今回のアンケートを見ると、スタート時点でつまずいている方は多いと受け止めています。ICカードロックの解除法を知らなくてもおサイフケータイに手を出す方もいて、リテラシーにかかわらず、関心は高いと見ています。「おサイフケータイ」という言葉自体の認知度は100%近くになってきました。使いたいと思っていても、気恥ずかしく思って店員に使い方を尋ねられない方もいるでしょうから、ドコモとして、どういう形でお手伝いできるか考えていきます。

――開始当初は、おサイフケータイに対してセキュリティを案ずる声が非常に大きかったと記憶しています。

鈴木氏
 ドコモの携帯電話では、指紋認証や顔認証などを搭載してきましたが、ハードウェアの進化によって成功率が向上し、利便性が高まっています。私自身も最初のころはおサイフケータイを使うことが多少なりとも怖く感じましたが、バイオメトリクスによる認証は、実は普通の財布にはない機能だと気づいたことで、抵抗なく利用できるようになりました。

――たしかに普通の財布と比べ、おサイフケータイは紛失時の対応策がありますね。

鈴木氏
 このあたりは、まだまだアピール不足のところで、セキュリティ面については今後も継続して訴求していく必要があります。

――おサイフケータイでは、トルカやiC通信、iアプリタッチといった機能が利用できるようになりました。決済以外の使い方が広がってきています。

鈴木氏
 今、考えているのは「かざす文化」を作り上げることです。最初に一回でも使っていただければ、次に繋がります。私たちはこれを「ファーストタッチ」と呼んでいるのですが、まずはファーストタッチを利用してもらえるようにすべきだと。プラスチックカードをかざす、という行為はある程度定着したと思いますが、携帯電話をかざすというのはまだまだです。

 プロ野球球団がトルカを活用して選手情報を配信する、といった事例も出てきており、エンターテイメント的な部分をこれから仕掛けていきたいですね。楽しめるものであれば、ITリテラシーに関係なく、広がっていきますから。そういう意味で、“おサイフ”という言葉に囚われず、可能性を追求したいところです。

――次世代の非接触ICとしてNFCという規格がありますが、ドコモで導入の予定は?

鈴木氏
 現時点では、あらゆる可能性を検討している、としか言えません。ただ、FeliCaであれ、NFCであれ、目指すべきゴール地点は同じですね。もちろんNFCになることで、海外での利用シーンが拡大したり、海外メーカーによるおサイフケータイが登場したりするといった可能性はありますが、現時点で何らかの計画が決定しているわけではありません。

――最後に、ユーザーへ一言お願いします。

鈴木氏
 「おサイフケータイは便利ですから、ぜひ一度使ってほしい」、これに尽きますね。

――ありがとうございました。

 



(関口 聖)

2009/7/1 15:05