サムスンの携帯事業、全セグメントで勝者を目指す


サムスン電子の日本法人、サムスンテレコムジャパンのオウ氏
左から、GALAXY、Jet、OMNIA II

 サムスン電子は、日本サムスン本社において説明会を開催。サムスン電子製の海外モデルや、サムスン電子の携帯電話事業が説明された。

 今回の説明会では、6月に海外で発表された、「Jet」、「GALAXY」(I7500)、「OMNIA II」のほか、歴代のブランドコラボモデルなどが紹介された。サムスン電子の日本法人であるサムスンテレコムジャパンの端末営業部 営業部長のオウ・チャンミン(CANGMIN OH)氏は、サムスン電子の携帯電話事業について説明した。

 サムスン電子は2008年にグループの組織体制を見直し、デジタル&コミュニケーション部門と部材関連のデバイスソリューション部門の2系統に再編した。グループ全体の売上げは、2008年には10兆円にのぼり、このうち約30%が携帯電話部門によるものとした。携帯電話関連事業は、88%が携帯電話によってもたらされたもので、残りの12%がネットワーク機器事業によるものとなっている。ネットワーク機器は、国内ではKDDIのCDMA関連やUQコミュニケーションズのWiMAX機器などで採用されている。

 2008年、サムスンは1億9800万台の携帯電話を販売、これまで着実にシェアを拡大しており、メーカー別シェアもノキアに継ぐ第2位につけた。オウ氏によれば、1億台突破のハードルは苦しいもので、サムスンでは現在、2億台の壁を越えるために努力しているという。

 シェア拡大につれて、メーカーとしてのブランド価値も高まっていると語り、世界の企業の中で現在20位、177億ドル規模との調査結果を示した。オウ氏はサムスンが成功を収めている背景として、ユーザーニーズの変化が激しいITの世界において、迅速に対応できている点をあげた。

 サムスン製携帯電話はこれまで、主にハイエンド市場に注力して製品ラインナップを展開してきたが、オウ氏は今後の展開として、あらゆるユーザーセグメントにおいてトップを獲得する意欲を示した。「世界のトップメーカーに成長するために、全てのセグメントで勝者にならないといけない。サムスンは2008年以降、各セグメントにおいてトップになれる端末を提供していこうと動いている」と述べた。

 そのために注力しているのはフルタッチタイプの携帯電話だという。オウ氏はタッチパネルを採用した携帯電話について「良い面も悪い面もあるが、慣れると戻れない。ユーザーにとってフルタッチは非常に楽なもので、開発側もバリエーションが出せる」などとした。

 一方で、あらゆるユーザーセグメントに対して端末を投入するためには、製造や流通面でのコントロールが必要になる。サムスンでは、世界中の販売拠点をシステムで結び、グローバルなサプライチェーンマネジメント(SCM)システムを構築しているという。サムスンのSCMシステムは、1990年代より改革と改善を繰り返し、現在では3日前に情報が入ればすぐに対応できるシステムが構築されているという。オウ氏は、2007年頃から端末供給体制の完成度が高まってきたと述べ、年間2億台の目標も目前とした。

 ただ、世界で2位のシェアといっても、首位のノキアには大きく水をあけられている状況だ。ノキアはサムスンとは異なり、ローエンド/エントリー市場で出荷台数を稼いでおり、世界の携帯電話の4割のシェアを得ている。オウ氏はノキアについて「安く製品を作る技術はすばらしいものがあり、製品を安く作ることに関してはかなわない」と話し、年間4億台の端末を出荷するノキアに対してサムスンは、ローエンドのカテゴリの中でもプレミアムなものを展開することで差別化を図っていく方針とした。デザインや機能面でプレミアム感を演出していくという。

新モデルを紹介

 説明会では、6月に発表された海外向けモデルが披露された。

 「Jet」は、3.1インチ、ワイドVGAサイズの有機ELディスプレイを搭載したタッチタイプ端末。800MHzのCPUを搭載した軽快な操作も特徴で、サムスンのユーザーインターフェイス「Touch Wiz 2.0」を採用している。

 独自ブラウザとなる「Dolfin」を採用し、最大5つのWebサイトの同時閲覧に対応。5メガカメラを搭載する。なお、サムスンの携帯電話用OSを採用しているが、マルチタスク機能や、ActiveSyncへの対応など、スマートフォンと同等の機能を搭載する。大きさは108.8×53.5×11.9mm。7月中に海外の70カ国で販売される予定。

 

Jet

 「GALAXY」は、サムスン初のAndroid採用端末。ハードウェアキーボードを搭載しないフルタッチタイプの端末で、3.2インチ有機ELディスプレイおよび8GBフラッシュメモリ、5メガカメラなどを搭載する。オウ氏は、Androidを採用するHTC製の「HT-03A」と似ている部分も多いが、端末の質感などは高く評価されていると語っていた。大きさは115×56×11.9mm。

GALAXY

 「OMNIA II」は、Windows Mobile 6.1を採用したOMNIAシリーズ最新モデル。3.7インチの有機ELディスプレイを採用したタッチパネル端末で、マルチメディア機能が充実したオールインワンモデルとなる。大きさは118×60×11.9mm。オウ氏は、「OMNIAは世界的にビッグヒットした。OMNIA IIはOMNIAを再定義した端末」などと語った。

OMNIA ii

ビッグブランドとのコラボレーション

NIGHT EFFECT

 今回の説明会では、サムスンが過去に手がけたブランドコラボレーション端末が一堂に会した。オウ氏によれば、コラボレーション端末を一度に紹介するのは初めてのことだという。

 ブランドとのコラボレーション展開としては、BANG & OLUFSENとのコラボレーション端末となる「Serene」(2005年)、「Serenata」(2007年)、adidasとのコラボ端末「miCoach」(2008年)、GIORGIO ARMANI端末「GIORGIO ARMANI SAMSUNG」(2007年)といった端末を披露した。国内向けのモデルとしては、2009年9月に発売予定のEMPORIO ARMANIとのコラボモデル「NIGHT EFFECT」が紹介された。こうしたビッグブランドとのコラボレーションは、相手のブランドにとっても、サムスン側にとっても革新的であることが重要という。

 オウ氏は説明会の冒頭、国内モデルの端末供給について言及した。同氏は、「世界で販売している端末と、日本で投入している端末のギャップを埋めるために死ぬほど頑張っている」と語っており、ユーザーのニーズにいかに速く対応できるかがポイントになるとした。「いかにフレキシブルに対応できるかで販売が変わると考えている。まだ工夫中だ」と述べており、国内市場はまだまだこれからとの認識を示した。

NIGHT EFFECTの個装箱は専用ボックスSerene
Serenata
miCoachGIORGIO ARMANI SAMSUNG

 



(津田 啓夢)

2009/7/16 20:08