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観光業界が注目する位置情報ゲーム、「コロプラ」バスツアー


 リクルートのじゃらんリサーチセンターが、位置情報ゲーム「コロニーな生活☆PLUS」を提供するコロプラと協力し、九州北部を巡るバスツアーを実施した。

位置情報ゲームを活用した実証実験ツアー

 じゃらんリサーチセンター(以下、JRC)では国内旅行市場の活性化をテーマに調査・研究を行っており、今回のバスツアーもその一環に位置づけられている。同じ位置情報ゲームとしては、ジェイアール東日本企画がマピオンの「ケータイ国盗り合戦」をサポートしているほか、本田技研工業が自ら「ケートラ」を運営するなど、旅行と位置情報ゲームの関係が注目されている。そこで、JRCでも位置情報ゲームの老舗であるコロプラと組んで、実証実験を行うことにしたという。

 JRCで今回のバスツアー企画を担当した研究員、加藤史子氏によれば、近年、泊まりがけでの旅行を行う人が微減傾向にあり、団体旅行のシェアも低下する傾向にあるという。その原因としては、東京などの大都市に娯楽施設が次々に登場し、レジャーが多様化、旅行の魅力が相対的に低下したのではないか見られている。とりわけ、20〜30代でその傾向が顕著で、JRCでは、この世代にターゲットを絞り、旅行の魅力を改めて体感できるようにできないかと考えた。バスツアーを企画する上で、約40万人のユーザーを抱え、20〜30代の社会人が多いコロプラはパートナーとしては最適だ。

じゃらんリサーチセンター 研究員の加藤史子氏

 コロプラが提供する「コロニーな生活☆PLUS」(通称:コロプラ)だが、その歴史は意外に古い。2003年5月、同社社長の馬場功淳氏が個人的に自宅サーバーで同サービスの前身となる「コロニーな生活」の運営を開始した。当初は、DDIポケット(現・ウィルコム)のAirH"PHONEの簡易位置情報機能を活用したサービスで、その後、各社から位置情報機能付きの端末が登場する度に対応キャリアが増えて行った。

 サービスの利用料は無料で、ユーザー登録するとコロニー(自分の街)を一つもらえる。コロニーに水や食料などの資源を設置すると、人が住みつき発展していく。資源の設置には「プラ」と呼ばれる仮想通貨が必要となり、ユーザーが移動した距離に応じてプラが与えられる。近くのコロニーとのコミュニケーションを楽しんだり、地域ごとに用意されたご当地土産をプラで購入したりして遊ぶ。

コロニーな生活☆PLUS(通称:コロプラ)

 馬場氏は「当時は、こんなのがあったら面白いんじゃないか、という程度の考えで始めたが、思いのほか周囲の評価が高く、運営を続けていくうちコスト的に維持できない規模になってしまった。そこで2008年10月に会社を設立して、本格的にこの事業に取り組むことにした」と明かす。

 現在、ユーザーからの寄付「投げ銭」とプラスチックカード「コロカ」の2つが事業の主な収益源となっている。コロカは、コロプラが提携した指定店舗に赴き、所定の金額の買い物をすることで入手できるコレクターズアイテム。2009年9月10日時点で全国17店舗で導入されている。

コロプラ社長の馬場功淳氏

 馬場氏によれば、「店舗側にはコロカ自体は無償で提供しており、売上げに応じて一定額をキックバックしてもらう仕組み。地方のお店にとっては少人数でも若者が訪れること自体が珍しい。店舗側からの評判もいい」とのこと。

 また、同氏は「ゲームというのは、ある程度苦労しないと達成感がなく、つまらない。バーチャルな世界で、お金をかければ解決できるというのでは面白くない。根室のお店などは行くだけでも大変。お金だけでなく、時間も費やして行くからこそ楽しい」と語る。

 同社でも「投げ銭」「コロカ」に次ぐ収益源を模索していたところに声をかけてきたのがJRCだった。

純粋に旅を楽しむツアー参加者

 今回JRCが企画したツアーは、長崎県・西海パールシーリゾートで遊覧船クルーズを楽しみながら佐世保バーガーでランチ、佐賀県・有田の「しん窯青花」で有田焼の工房見学、長崎県・波佐見の体験施設で石玉盆栽づくり体験、同町内の「清旬の郷」で地元食材・地元産の器によるバイキングディナー、佐賀県の呼子朝市、福岡・天神地区の散策……といった内容。これらの地域を1泊2日で回る。ツアーの参加料金は、羽田空港発で4万4800円、福岡空港集合で2万2800円(いずれも1部屋2名使用での1名分料金)。8月29日発と9月12日発の2回にわけて実施された。

 ツアー参加者のプロフィールは、参加人数は計114名で、男女比は半々。年代別では30代が約半数で、20代が約3割。1名参加が全体の約3割を占め、友達同士、カップル、夫婦、家族連れと続く。団体旅行はシニア世代、というイメージとは対照的だ。

バス車内の様子。アイテム出現エリアに近づくと、皆一同にケータイの画面とにらめっこ

 2回目のツアー初日に同行する機会を得たが、当初はグループをまたいだ参加者同士の会話はさほどなく、各自真剣にコロプラ内のお土産やスタンプ獲得作業を進めるといった感じ。ただ、バス内では、スタッフから新しいアイテムを獲得できるエリアに近づいたことがアナウンスされると、参加者から「au(で○○の土産が)取れました」などの声が上がるという、コロプラ中心の独特の雰囲気が漂う。それが、夕方のバイキングディナーの頃になると完全に打ち解けて、コロプラ以外の話でも盛り上がっていた。

 また、コロプラ内でアナウンスされ、参加募集したツアーであるため、どこを訪れるかは同ゲームのユーザーであれば知っている。夕方には地元のコロプラユーザーが“リアルな”お土産を持ってツアーに飛び入り参加するなど、位置情報ゲームならではのサプライズも。

移動中、コロプラ内の掲示板への書き込みで会話する参加者も 地元のコロプラユーザーが飛び入り参加予告

 ちなみに、位置情報ゲームを軸にしたバスツアーだけに、参加者としては携帯電話のバッテリーの残量が気になるらしい。外付けのバッテリーを用意してきたという参加者も多いが、ランチやディナーの時間には、充電サービスが提供され、これが大好評だった。

食事中の充電サービスは大好評。色とりどりのケータイが並ぶ

 なお、ツアーには「コロカ」が入手できる有田焼の窯元「しん窯青花」の工房見学も組み入れられている。そこでは、コロカをきっかけに、本来手を出さなかったであろう湯飲みや茶わんを次々購入する姿が見られた。コロカ自体、現地を訪れなくては入手できないため、ツアーに参加していない知人のためにコロカを購入するという“バイヤー”的役割を担う参加者もいたようだ。

 しん窯青花は、コロカ配布に協力した加盟店第1弾のうちの1店舗。興味深いのは、同じく第1弾店舗となった神奈川県のお茶販売の老舗「茶加藤」とのコラボ急須が制作されるなど、加盟店同士の交流も始まっているところ。しん窯青花 代表取締役社長の梶原茂弘氏は「最初は半信半疑だったが、始めてみたら大きな成果を上げている。今までのお客さんはお年寄り中心だったが、若いお客さんが増えた。まわりにも声をかけて、地域全体で盛り上げていきたい」と語る。

 同氏の言葉通り、今回のツアーでの売上げは、各回50万円程度と高い実績を上げている。参加者一人につき8000円前後の買い物をした計算だ。

長崎県・西海パールシーリゾートで遊覧船クルーズ 佐賀県・有田の「しん窯青花」
工房見学 有田焼の販売コーナー
茶わんなどを購入すると、コロカが入手できる しん窯青花で入手できるコロカ
休憩所では他のコロカ取扱店のお茶なども振る舞われた コラボ急須
長崎県・波佐見の体験施設「四季舎」 中では石玉盆栽づくりが体験できる
参加者が作った石玉盆栽。作った作品は持ち帰れる よく見ると、受け皿もコロプラ特別版
波佐見町内の「清旬の郷」でバイキングディナー この頃には参加者同士の会話もはずんでいた

いかにゲームのツボを押さえるかが課題

 JRCでは、ツアー終了後の参加者アンケートで見えてきたことがいくつかあるという。きっかけはコロプラという位置情報ゲームだが、ツアー参加者の多くは他の参加者や地域の人々との交流が一番印象に残ったと回答、旅本来の魅力を実感できたようだ。

 一方、コロプラでは測位することでご当地土産を入手できるようになっているため、東京からの移動手段として飛行機を使うというツアー内容に対し、「途中でお土産やスタンプを入手できるように、東京からの移動は新幹線にして欲しかった」という、通常のツアーではあまり無いような要望もあったのだとか。参加者にとっては、それほどゲーム上のお土産やスタンプの存在が重要で、いかにゲームのツボを押さえてツアーを企画するかが一つの課題のようだ。

 また、ツアーのためにチャーターされた2台のバスの乗務員の一人は、「普段のツアーでは絶対に通らないような一般道を走って、わざわざ時間をかけて遠回りする理由がわからない」(笑)と少々困惑気味。

 それに対し、もう1台のバスの乗務員はコロプラのヘビーユーザーであるらしく、運転中は携帯電話を操作できないため、同乗している添乗員に自分の携帯電話を渡し、貴重なアイテム収集の機会を楽しんでいた。この乗務員によれば、あちこち出かける仕事だけに、同僚にもコロプラユーザーがたくさんいるのだとか。

 主催者、参加者、乗務員、受入側施設の全員が初体験だった今回のバスツアー。参加者側からは第2弾の実施を要望する声も多い。JRCによれば、実証実験という形で開催した今回の結果を詳しく分析した上で、今後のツアー企画につなげていきたいと考えているという。

 今後、ケータイ世代向けに、位置情報ゲームをテーマにした旅行ツアーが多数企画されるようになるのかもしれない。




(湯野 康隆)

2009/9/15 12:20


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