富士通、モーションセンサー利用のゴルフスイング診断アプリ


測定時、携帯電話は腰の背中側中央に市販のホルダー等を利用して装着すれば良い。対応機種発売時にはホルダーをプレゼントするキャンペーンも予定しているという

 富士通は28日、携帯電話のモーションセンサーを利用してゴルフのスイングを診断できるiアプリ「ETGAスウィングレッスン」を発表した。ドコモ向け携帯電話として登場する将来の対応機種向けに提供する。

 携帯電話を腰に着けてスイングすると、モーションセンサーが腰の動きを測定し、スイングフォームを診断する。評価基準はプロゴルファー・江連忠氏の理論に基づいており、アプリの中では診断結果に応じて江連プロのアドバイスコメントが表示される。自分のベストスイングを登録することで、都度のスイングとベストとの差を表示する機能や、測定したスイングデータの統計を表示する機能なども搭載する。

 アプリの使用料は無料だが、加えてゴルフダイジェスト・オンラインの携帯サイトと連携した有料サービスを展開する。アプリで取得した各種データをアップロードすることで、より長期間の練習データからの分析や、他の会員とのデータ共有、ランキング機能などが可能となる予定。

 提供時期は「できるだけ早い形で」(富士通 モバイルフォン事業本部長の大谷信雄氏)とだけコメントされており、現時点で具体的なスケジュールは未定だが、早ければ年末商戦向けの次期モデルに搭載される可能性もある。また、「ゴルフケータイ」のような特別モデルでの展開ではなく、一般的な機種にプリインストールアプリとして提供される見込み。モーションセンサー自体は従来機種と同等のデバイスのため製造コストへの影響はなく、対応機種が従来機種に比べ大きく値上がりすることはないという。

 10月6日から幕張メッセで開催される展示会「CEATEC JAPAN 2009」の富士通ブースでは、来場者が実際にスイング診断を体験できるコーナーを設ける。

クラブはドライバー、アイアン、ショートアイアンから選択可能。各クラブに最適なアドバイスを表示する腰に携帯電話を装着した後、15秒ほど気をつけの姿勢をとってセンサーの校正を行う。校正完了や、スイング後の測定成功などは振動とビープ音で知らせる
スイング後に特典が表示され、フェーズごとにアドバイスを見ることができるスイング測定結果
アドバイス表示スイングの履歴を確認できるほか、有料サービスを利用すればサーバーにアップロードしてバックアップやさらに長期間のデータからの分析などが可能になる

 

携帯電話のセンサーで「人の動きそのもの」が計測可能に

動きの特徴点から運動パターンを分析する技術を富士通と共同開発した

 富士通は、2003年のmova端末「らくらくホンIII」に加速度センサーを利用した歩数計を搭載して以来、携帯電話における各種センシングデバイスの応用拡大に取り組んできた。最近では、3軸の加速度センサーに加え3軸ジャイロセンサーを組み合わせた「6軸センサー」を採用しており、携帯電話の向きを含め、動きをより正確に知ることができるようになっている。

 今回のアプリは、この6軸センサーにセンシング・コントロール・ラボと共同開発したアルゴリズムの「3Dモーションセンシングエンジン」を組み合わせることで、携帯電話を身につけた人の動きを測定する。腰の回転量や向きが運動のパターンごとに違うことに着目し、バックスイング、ダウンスイング、フォロースルーといったスイングのフェーズごとにフォームを診断することを実現した。

 フォーム検出技術を共同開発したセンシング・コントロール・ラボ代表取締役社長で法政大学工学部教授の渡邊嘉二郎氏は、全身が動くゴルフスイングの中で腰の動きに着目した理由について「ゴルフのバイブルとも言われるベン・ホーガンの著書『モダン・ゴルフ』によれば体軸回転が重要ということで、腰の回転運動から本質的なゴルフのフォームを計ることができると考えた」と説明。自身も趣味でゴルフを楽しむことがあるといい、「私自身何回か実験台になった。腰を意識するためか、コースに行くとこれを着けただけで5打くらいは少なくなる。私のように『100打を切ったら嬉しい』くらいのレベルの人なら、測定データを分析して練習すれば、あっという間に15打くらいは減るのではないか」とコメントし、アプリの完成に期待を寄せた。

センシング・コントロール・ラボ代表取締役社長の渡邊嘉二郎氏トッププロを指導するレッスンプロとして知られる江連忠氏。「2年前、富士通レディースでは上田桃子がプレーオフで(横峯)さくらちゃんに負けました。桃子にこれを着けさせます。それで勝ったら、みなさんぜひ1台ご購入ください」

富士通モバイルフォン事業本部長の大谷信雄氏

 また、センシング技術をスポーツ支援に応用するというアイデア自体は以前から考えられていたが、「そのためだけにプロセッサ、表示器、筐体などを用意して単体の装置を作るとすると、売れる台数にもよるが30万円くらいになってもおかしくないし、もし作ったとしてもマーケットに流通しない。それが、携帯電話の中に入ったことで格安に実現できるようになった」(同氏)といい、このようなサービスが可能になった背景には携帯電話の普及と高性能化があると指摘した。

 アプリ開発に全面協力した江連プロは「最初に『携帯電話を腰につける』というアイデアを聞いただけで、これでゴルフがうまくなると確信した。ゴルフを教えるときに『ちょっと腰が浮いている』などと言うことが多く、“腰”はすごく重要なキーワード。どういう腰が良いかを理解し、『腰が入っている』状態とか『腰のキレがいい』状態とかになると、スイングは劇的に改善する」とコメント。

 続けて「アマチュアの人は特に手先やボールに意識がが、腰に意識が行き『腰をこうやって動かそう』と考え始めるとスイングが良くなる。この携帯電話を着けて、いろんなデータを取って、腰をどうやって動かせばいいかを考えると、上半身の力が抜けて素晴らしいスイングが身につく」と話し、ゴルフの上達に有効なアプリであることをアピールした。

 携帯電話にはGPS、モーションセンサー、生体認証などさまざまなセンシングデバイスが搭載されてきたが、富士通では今回の技術によって「人間そのものの動きが分かるようになった」(大谷氏)ことが大きな進化だとしており、将来的にはゴルフ以外のスポーツ支援や、健康支援、生活行動支援などにも応用分野を広げていく考え。なお、今回のゴルフ支援機能は、他社製携帯電話に対する富士通独自の差別化要素という位置づけで、現時点では他社に提供する予定はないという。

 

(日高 彰)

2009/9/28 19:52