KDDI上期は減収減益、販売手数料など下期の施策も紹介


KDDI小野寺社長

 KDDIは、2009年度上期(2009年4月~9月)の決算を発表した。連結決算は、営業収益は1兆7231億円(前年同期比1.4%減)、営業利益は2510億円(前年同期比4.5%減)となった。

 移動体通信事業の実績を見ると、営業収益は1兆3379億円(前年同期比1.7%減)、営業利益は2720億円(前年同期比5.5%減)で、連結・移動体通信どちらも減収減益となった。通期では減収増益の見通しとなっているが、特に変更はないという。

 同社では23日、報道関係者向け決算説明会を開催した。同社代表取締役社長兼会長の小野寺正氏から概要が紹介されたほか、下期について、コスト構造の見直しを行うなど、具体的な施策が紹介された。

上期決算の概要下期への施策
連結決算概要移動体通信事業決算

auのオペレーションデータ

 auの実績を見ると。上期の純増数は39万件で、純増シェアは18.2%となった。この点について小野寺氏は「通信モジュールなどARPUが低い契約が含まれており、正味での比較が難しくなってきた」と述べ、IP接続(EZwebなど携帯向けインターネットサービスの契約数)実績を提示。2009年度上期でのIP接続契約数は、31万9000件で、シェアは38.8%と業界トップとなった。

 解約率は、第1四半期が0.64%、第2四半期が0.72%で、昨年度の第2四半期と比べると、解約率は0.3ポイント減少した。

 ARPU(1契約あたりの収入)は5600円で、そのうち音声ARPUが3330円、データARPUが2270円となった。通期予想は音声3170円、データ2250円、計5420円となる。

 このほか設備投資については、連結ベースで2525億円、移動体通信だけでは1863億円となった。全体としては前年よりも5.1%減少し、移動体通信向け設備投資は8.7%減となる一方、固定通信向け設備投資は前年同期よりも7.5%増加している。なお通期での設備投資額は5400億円で、そのうち移動体は3970億円とされている。

純増数では正味での比較が難しいとして、IP接続契約件数が示された設備投資

販売奨励金、au買い方セレクトの動向

「au買い方セレクト」の状況

 携帯電話端末の販売奨励金(平均単価)は、第1四半期が4万1000円だったのに対し、第2四半期では4万4000円と積み増しされた。今回、初めて月別の販売奨励金がグラフで明らかにされており、7月・8月に比べ、9月は奨励金が減少している。通期での平均単価は3万6000円になるとされており、下期は奨励金が大きく減少すると見られる。

 第2四半期で大きく奨励金が費やされたのは、「指定通話定額」「ダブル定額スーパーライト」の導入にあわせた拡販と、在庫調整という2点になる。小野寺氏は、「下期に向けて、薄さや防水など、基本ニーズに対応したミドルレンジの充実を図りながら、平均端末コストを下げていく。端末在庫については昨年度末分がオーバーしていたのは事実で、下期は適正な状態を維持する」とした。一方で、CDMA 1XからCDMA 1X WINへの移行を促進する施策も行っていく。

 19日には2009年秋~2010年春にかけてリリースする新機種が発表された。あわせて、「au買い方セレクト」のうち、フルサポートコースのサポート代金の値下げが発表されたが、この点については「今ではほとんどがシンプルコースになっており、フルサポート改定の影響はほとんどない」と説明。今回提示された資料によれば、90%が2年契約で端末を割賦で購入できるシンプルコースを選んでいる。

 ただし、シンプルコースの利用動向を見ると、一括払いが61%、分割払いのうち24回払いが28%、12回払いが7%、18回払いが4%となっており、半数以上が一括払いを選択している。質疑応答で指摘された小野寺氏は「上期は、指定通話定額・ダブル定額スーパーライトを導入し、在庫を抱えたという状況。在庫を整理するには端末価格を下げざるを得なかった。61%という状況がノーマルとは思っていない」と語った。

 なお、9月末時点の端末在庫は83万台。上期の端末販売数は前年同期比14%減の477万台となった。

販売手数料の推移下期は手数料低減を目指す

Androidは来年導入、MNP総括や公取委の対クアルコム勧告、UQ、Rev.Aについて

 質疑応答では、さまざまな点について小野寺氏が回答した。2006年10月にスタートした携帯電話番号ポータビリティ制度については「開始時にも動向は読みにくい、電話番号にこだわる人は少ないのではないかと申し上げた。(3年経って)その結果が出たのだろう。今後、利用率が上がるのは考えにくく、昨年とほぼ同じ水準でいくと感じているが、競争環境の状況によっては大きく変化する可能性がある。MNPでauへ移行する人を増やすため、満足度向上施策として料金やサービス、端末、インフラをきちっとやっていくしかない」と述べた。

 2009年度上期におけるau端末の販売数が前年同期比14%減となったことに関連し、小野寺氏は「auの通期予想は変更しておらず、2009年度の販売数は1000万台と想定しているが、上期の結果からすると、努力すればなんとか達成できると思う。業界全体については(KDDI社長という立場もあり)何とも言いかねる」とした。

 2012年頃に予定するLTEの導入にあわせ、端末プラットフォームをどうするか検討することも明らかにされた。小野寺氏は「現状はKCP+だが、LTE導入時点で端末側のプラットフォームをどうするか、検討している。ただし、現時点では検討している段階であり、何かに決定したことはない。8月にLIMO Foundationへ加盟しているが、LIMOを含めて検討する。Androidについても来年(2010年)導入する方向で進めている。携帯電話のプラットフォームが何か1つに統合される、ということはないだろうが、主流をどうするか、検討中ということ」と語った。

MNPや端末販売数、プラットホームなどについてコメント

 契約数が伸び悩むUQコミュニケーションズについて、「現状の契約数は満足できるものではない」と少し笑いながら答えた小野寺氏は、「エリア整備が最大の問題。無料トライアルを提供しており、使えるエリアの方であれば契約に繋がっている。現状ではエリアが不十分で、その状況でコミッションを積んで新規契約者の増加を図ったとしても、ユーザーに対しても失礼だし、将来的な解約を誘発することになる」と語り、まずはエリア整備が課題と指摘しつつ、KDDIとしても支援を継続するとした。

 携帯電話の通信方式に関しては、LTEの前に、「CDMA2000 1x EV-DO Rev.Aのマルチキャリア化」を行う予定だ。小野寺氏は「Rev.Aのマルチキャリアは、いわばRev.Bの縮退版。ハードウェア変更なしにソフトウェア変更だけで対応できる。“Rev.A+(リビジョンエープラス、リブエープラス)”いう名称に変えているが、現在のRev.Aエリアは人口密集地をカバーしており、Rev.A+もそういったエリアの高速化を図るということ。3つ以上の搬送波(キャリア)を使えるエリアであれば高速化できる」とした。

 公正取引委員会から米クアルコムに対し、ライセンス条項に関して排除措置命令が下されたことから、ライセンス料が今後の業績に与える影響を尋ねられると、「CDMA2000は、基本的にクアルコムが全ての特許を握っているので、クアルコムへの特許料は発生するが、それ以外は発生しない。一方、W-CDMA方式はライセンスの持ち主が大変多く、特許プールという計画もあったようだがうまくいっていない。CDMA2000とW-CDMAを比べると、クアルコムへの支払が高いとは必ずしも言い切れない。もちろんKDDIとしては、常に“安くしろ”とは要求している」と説明した。

 総務省が23日に「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」を発足させると発表したことに関連し、分科会の1つ「国際競争力強化検討部会」には小野寺氏や、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が参加する。小野寺氏は「従来から申し上げてきた点を主張したい。どのように運営されるかわからないが、事業者へのヒアリングも行われると聞いており、そういう場では考えを述べていきたい」とした。総務副大臣にNTT出身の参議院議員である内藤正光氏が就任したことや、原口一博総務大臣の発言がNTT寄りと報じられたことを踏まえた質問に対しては「どういった方であれ、そういったポジションに就けば、国家国民のために政策を決めていただけると思う。出身で問題視するつもりはない」とした。

固定通信ではコアネットワークを整理

ネットワークのスリム化を実施

 固定通信については、これまで赤字が続いてきたものの、来期(2010年度)には黒字化を達成する方針があらためて紹介された。

 その方策の1つとして紹介されたのが「ネットワークのスリム化」だ。これは、DDI/KDD/IDOの合併に始まり、パワードコムとの合併や東京電力の光ファイバー事業統合などにより、全国に張り巡らしたネットワークや都市部でのネットワークにおいて重複があったり、複雑になっていたりするため。収益構造の変化に対応できなくなっていることから、2016年3月期までというスケジュールで不必要な局舎・伝送路を整理し、局舎250局/伝送路約2万6000kmという現在の状況を、局舎140局、伝送路約2万2000kmにする。

 この影響により、今年度下期には約400億円の減損が発生する見込みとされたが、会計上の影響については、十分に固まっていないとして、業績見通しは変更なしとなっている。

 このほか、設立25周年を記念した配当も行われることが明らかにされた。

 



(関口 聖)

2009/10/23 19:06