NTTドコモ、首都直下地震を想定した防災訓練


「平成21年度NTTドコモグループ総合防災訓練」の模様

 NTTドコモは5日、東京・有明の国営東京臨海広域防災公園(2010年4月一部開園予定)で「平成21年度NTTドコモグループ総合防災訓練」を実施した。首都直下地震を想定した本格的な訓練で、警視庁や陸上自衛隊も参加。無線基地局の復旧作業、ヘリコプターを使った物資輸送の模様を招待客や報道関係者向けに公開した。

民間企業で初となる「国営東京臨海広域防災公園」での訓練

 NTTドコモでは大規模災害に備えての防災訓練を例年実施。NTT東日本などグループ企業との共同開催訓練も含めると約半年に一度のペースで、災害からの早期復旧、現場応対の精度向上を目的とした実技訓練を公開している。

 今回の訓練の特徴は、初めて「首都直下地震」を想定したこと。NTTドコモ サービス運営部 災害対策室室長の福島弘典氏からは「(隣県での被害を想定した訓練とは異なり)東京・永田町の本社機能が直接影響を受ける可能性が高い。また被災規模が極めて大きくなることが予想されるため、対策本部と現地間の指揮命令系統が十分機能するか検証するのが大きな目的」と訓練の位置づけが説明された。

 また大規模災害時は関係する機関との連絡・調整も重要となるため、陸上自衛隊と警視庁も訓練に参加。加えて「NTTドコモとして取り組む災害対策をお客様に知ってもらうことも重要」(福島氏)とし、対外アピールも大きなテーマとなっている。

 訓練会場は東京・有明で現在造成・建設が進んでいる「国営東京臨海広域防災公園」。癌研有明病院に隣接する大規模施設で、ヘリポートや地上2階建てビルが併設されている。緊急時にはビル内に災害対策本部が設置されるほか、各種救援活動の拠点となる。また平常時は一般的な公園として開放される予定。この設備を利用した民間企業の訓練は今回が初という。なお公園としての一般開放は2010年4月以降、段階的に実施される。

 報道関係者向けに実施した事前説明では、災害発生時の対策指針である「災害対策3原則」を福島氏が説明。「システムとしての信頼性向上」「重要通信の確保」「通信サービスの早期復旧」を念頭に、設備収容ビルの耐震性能強化、発信・着信規制などを実際に行っているという。

 このほか、直近の災害対応状況についても説明。山口県防府市で7月21日、兵庫県佐用町8月9日に発生した豪雨被害では、発電機による基地局復旧、避難現場での携帯電話貸出などを実際に行った。また8月11日早朝の駿河湾地震の際には、音声発信の規制は行ったもののパケット通信規制は見送った。データを分割して送受信するパケット通信は輻輳の影響を受けづらいとされており、その効能が実際に発揮された例と言えそうだ。


NTTドコモ サービス運営部 災害対策室室長の福島弘典氏訓練会場となった国営東京臨海広域防災公園の一角にある施設棟

基地局そのもののの信頼性強化策も実施2009年に発生した災害への対策状況

台風18号で初運用された「衛星エントランス搭載移動基地局車」も登場

 東京臨海広域防災公園での訓練は5日13時30分から約1時15分に渡って行われた。訓練では、当日10時に東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3クラスの地震が発生したと仮定。訓練会場での実技公開に先駆けて、NTTドコモの東京本社では訓練がスタートしている。

 訓練会場には大型モニターが設営され、福島氏の解説と司会者による進行を交えたテレビ中継スタイルで実施した。周辺では一般客、招待客らが訓練の様子を見守った。

 訓練冒頭にはNTTドコモ丸の内支店、新宿支店、渋谷支店の各支店長が登壇。各支店の管内には首都高速道路、大型ターミナル駅、東海道新幹線の路線、各国大使館などの重要施設が点在している現状を改めて指摘。首都ならではの事情を踏まえた、綿密な防災対策の策定に尽力していると強調した。

 訓練では、無線基地局故障時に出動する移動基地局車が、災害対策本部からの要請に応じて現地へ移動する過程などを実際に検証した。移動基地局車は現在、全国に57台配備。首都直下地震発生時には隣接する新潟や群馬の各支店、東海支社から応援を呼び寄せる手はずという。

 被災地到着後には移動基地局車のアンテナを伸ばし、無線通信の復旧を行う。なお携帯電話ネットワークの末端である基地局は、ユーザーが私有する端末との通信を担う。しかし大規模災害時は、基地局と基幹ネットワークを結ぶケーブルが断絶する可能性もある。これに備えるのが「衛星エントランス搭載移動基地局車」だ。現在5台が配備されているが、10月18日の台風18号被害の際、初めて運用されたという。また敷設済み基地局の停電を復旧させるための電源車も訓練会場に登場した。

 このほか陸上自衛隊の協力の下、ヘリコプターによる物資輸送も行われた。基地局復旧に利用する発動発電機をNTTドコモ埼玉支所から陸上自衛隊の朝霞駐屯地に輸送、その後ヘリコプターで都内の被災地に届ける想定。訓練会場内にある模擬基地局の復旧までを実際に訓練した。

 またNTTドコモでは、早期に復旧させた携帯電話網を実際の救援・避難生活に役立てるための方策も準備している。避難施設を模した仮設テント内では、携帯電話充電器や端末そのものの貸出業務の準備を行った。現実の被害発生時には、当該地域の地方自治体と協議の上で実施するという。


NTTドコモ丸の内支店、新宿支店、渋谷支店の各支店長が挨拶訓練の模様

白バイによる先導で救援車両が移動移動基地局車

衛星エントランス搭載移動基地局車移動電源車

陸上自衛隊のヘリコプターが救援物資を輸送車両への物資引き渡しも実際に行った

ヘリコプターで輸送した発電機で基地局を復旧する訓練アンテナを伸ばした状態の移動基地局車

避難所で携帯電話機を貸し出すための準備も陸上自衛隊は無線指令所の設営を実際に行った

防災対策の強化に向けて

 全訓練の終了後にはNTTドコモ 取締役常務執行役員の二木治成氏が関係者および観覧客へ挨拶を行った。「訓練の一環でヘリコプター機内から東京を眼下に見たが、大変素晴らしい都市であることを実感する一方、首都圏災害発生時の被害を想像するだけで恐ろしいところもある」と率直な印象を語った。

 その上で「ケータイが生活インフラとしての重要度を増す中で、より実践に即した防災対策を年々強化している。今後もぜひご理解ご協力をお願いしたい」と呼びかけ、閉会の挨拶とした。

 また訓練終了後には、NTTドコモの防災関連サービスを展示するコーナーも公開された。災害用伝言板サービス、緊急地震速報を配信する「エリアメール」、その他映像伝送サービスなどの詳細が実際に確認できた。


NTTドコモ 取締役常務執行役員の二木治成氏防災関連サービスの展示コーナー



(森田 秀一)

2009/11/5 19:55