KDDI、2009年度第3四半期決算は減収減益に


KDDIの小野寺氏

 KDDIは、2009年度第3四半期(2009年4~12月)連結決算を発表した。営業収益は前年同期比1.7%減の2兆5853億円、営業利益は7.4%減の3768億円、経常利益は10.6%減の3628億円、当期純利益は16,3%減の2126億円の減収減益となった。営業利益の通期見通しに対する進捗率は80.2%。

 なお、2009年度の通期見通しを、純利益において期初見通しの2550億円を、2250億円に下方修正した。修正理由は、固定事業における低稼働設備の集約、撤去に伴うネットワークのスリム化により、事業構造改革費用および減損損失などとして特別損失に約550億円を計上することをあげた。

 また、第4四半期の営業利益は前年同期比2.5倍となる932億円を見込んでいるが、「前年度第4四半期には、現行800MHz帯設備の耐用年数見直しによる減価償却費の増加や、販売手数料平均単価の増加などの営業費用の増加があったことが影響しており、今期はそうしたものがないため。通期で前年比6%増の4700億円の営業利益は達成できる」(KDDI 代表取締役社長兼会長 小野寺正氏)とした。



携帯事業について。小野寺氏、新端末発表を示唆

 移動体通信事業に関しては、営業収益が前年同期比2.3%減の2兆14億円、営業利益は7.8%減の4079億円、経常利益は7.9%減の4137億円、当期純利益が7.6%減の2474億円となった。

 12月末時点でのauの契約数は3139万契約。累計シェアは28.4%。純増数は55万台となり、通期の76万台に対する進捗率は約7割となった。

 KDDIの小野寺氏は、「11月から新料金プランのガンガンメールの提供を開始した。また、秋冬モデルで、ミッドレンジのラインアップを強化し、これにより端末調達コストの低減に成功。第3四半期の販売手数料が3万円となり、第2四半期の4万4000円から大幅に下落した。年間の3万6000円に向けて推進していく」などと語った。

 通期見通しでは、年間1000万台の端末販売を見込んでおり、これを達成するには第4四半期には約300万台の出荷が必要。「かなり厳しい状況であると見ている。だが、3月は最大の商戦期であり、どれだけ顧客が反応してくれるかで決まる。そのため目標の数字は変えなかった」としたほか、「学生向けのキャンペーンに加えて、春モデルとして新たな端末を追加で発売する予定であり、その時点で新たな施策も発表する」などとし、近いうちに新端末の発表があることを匂わせた。

 auの解約率は0.67%と、前年の0.65%から0.02ポイント上昇。音声ARPUは440円減の3210円、データARPUは40円増の2260円。合計で400円減の5470円となった。期末見通しでは、音声ARPUで3170円、データARPUで2250円、合計で5420円としている。



スマートフォンに言及

 質疑応答ではスマートフォンの展開にも言及。「スマートフォンで出遅れているのは事実であり、認めざるを得ない。だが、春商戦に関していえば、それ以外の市場では戦えることができる」としたほか、UQコミュニケーションズのWiMAXの普及が遅れていることについては、「計画からビハインドしているのは確かだが、大きくビハインドしているわけではない。デュアル型のものが遅れているということもあり、これにより巻き返しもできる。UQコミュニケーションズにはもっとやって欲しいと思うのは当然だが、計画通りに努力してくれていると思う」と回答した。

 また、ウィルコムに対しては、「当社が支援するとか、買収するということは一切考えていない」と、これまでの回答を改めて強調した。

固定通信事業

 一方、固定通信事業は、営業収益は前年同期比1.8%減の6238億円、営業損失は348億円の赤字、経常損失は444億円の赤字、当期純損失は279億円の赤字となった。営業赤字にはFTTHの営業費用が影響している。12月末時点での固定系アクセス回線の契約数は581万契約。FTTHは、143万契約となった。

 中部地区でFTTH事業などを展開する中部テレコミュニケーション(CTC)は黒字化したという。

J:COM買収でNTTへの依存度低減を狙う

 また、今回の決算発表では、KDDIによるジュピターテレコム(J:COM)に対する資本参加についても言及した。

 小野寺氏は、「固定アクセス回線を持つことは、NTTへの競争対抗上、事業展開上、不可欠なものであるという強い認識のもと、これまでにもパワードコムやジャパンケーブルネット、CTCなど、アクセス回線を持つ企業の連結子会社化や協業に取り組んでいる。今回のJ:COMへの資本参加により、327万世帯の顧客基盤を持つJ:COMと戦略的パートナーシップを構築することで、さらに魅力的なサービスを提供でき、顧客満足度を高めることができるほか、NTTへの依存度を低減することができる」などとした。

 資本参加に関する話し合いが始まったのは、「ごく最近の話」(小野寺氏)であり、「J:COMの資本を持つリバティグループ側から譲り受けることで提案があった。3617億円という買収額は適正な水準」とした。

 同社では、中期経営計画としてチャレンジ2010に取り組んでおり、そのなかで固定回線事業の黒字化を掲げているが、「J:COMは、利益が出ている会社であり、その計画にはなんら影響を受けない。また、2009年度の連結業績にも影響しない」と述べた。

 なお、議決権ベースの株式保有比率が37.8%であることに対しては、「リバティグループの中間持株会社が保有する株式がその比率であったという以外に理由はない。今後、増資するとか、中間持株会社を一本化するなどの具体的な話は現時点では考えていない。白紙の状態」などと語った。

 



(大河原 克行)

2010/1/25 20:36