メディアフロージャパン企画、MediaFLOの高速道路走行デモを公開


 メディアフロージャパン企画は、ユビキタス特区の沖縄県那覇市および豊見城(とみぐすく)市で行っている、MediaFLOの実証実験を報道陣に公開した。同社は2008年11月に、同地区での実験を開始。2009年6月までをフェーズ1とし、3つの送信局から実際に電波を送出し、VHF帯での試験環境構築や、品質評価を行っていた。実験は、昨年11月にフェーズ2へと移行。従来からのストリーミングに加え、ファイル自動蓄積配信やニュース、株価、交通情報などのリアルタイム配信を行い、ユーザーの需要などを調査していた。

フェーズ1の実証実験概要コンテンツプロバイダーも参加したフェーズ2MediaFLO受信のための試作機も開発した

MediaFLOの技術特性や今後の見通し

メディアフロージャパン企画、代表取締役社長、増田和彦氏

 デモンストレーションに先駆け、メディアフロージャパン企画の代表取締役社長、増田和彦氏がMediaFLOや実証実験の概要を解説した。沖縄で実験を行っているのは、「無線的に完全に隔離された環境」(同氏)であるため。「ユビキタス特区で審査の期間が短くなり、実験をやりやすく、季節的な変動要素が少ないため電波環境が安定している」(同氏)のも、同県が選ばれた理由だ。ただし、MediaFLO用の電波は、12chのNHKと10chの琉球放送の間にはさまれた11chを使用しており、万が一干渉が発生すると、地域住民にも影響がおよんでしまう。そのため、「放送局との干渉協議や、新聞の折込広告による地元住民への告知を行ってきた」(同氏)という。

 増田氏によると、MediaFLOの技術的優位性は大きく6つあり、中でも「省電力は一番大きい」という。「放送波を全部受信するわけではなく、時間軸、周波数軸にコンテンツがあり、それを間欠受信する」(同氏)ためだ。そのほかの特徴は「素早いチャンネル切り替え、統計多重による伝送効率のよさ、SFN干渉への強い耐性、番組ごとに変更可能な伝送品質、伝送劣化時のきれいな映像」(同氏)となる。

 免許の申請はゴールデンウィーク前後になる見込みだ。その上で、メディアフロージャパン企画では、「7月もしくは9月のタイミングで最終的な受託事業者が決まる」(同氏)と見ている。増田氏は、「技術の優位性をしっかりアピールし、試験結果をフィードバックすることで、新しいマルチメディアサービスを提供していきたい」と、事業化に向けた意気込みを語った。

MediaFLOの技術特性省電力が最大の特徴
チャンネルの切り替えも素早い受託事業者決定までの想定スケジュール

高速移動時でも映像は滑らか

 3月15日に公開された実証実験では、フェーズ2用に開発されたW64SAベースの端末を使用した。これは、VHF帯のMediaFLOを受信できるよう改修されたものとなり、ストリーミング映像のほか、クリップキャストで蓄積されたデータ(電子コミックや着うたフルなど)、IPデータキャストにも対応している。


送信局が設置された鉄塔鉄塔の途中にMediaFLOのアンテナが置かれる沖縄県民からの調査でも好評だったという道路交通情報にも対応

 バスで市内を移動しながらMediaFLO端末を使用できたが、受信状況はおおむね良好。フレームレートやビットレートが高いこともあり、滑らかな映像が確認できた。ビルの陰に入りやすい那覇市の中心部付近では、時おり映像が止まったものの、ワンセグのように画面が乱れることはなく、“静止画+音声”のような状態で視聴を続けられた。チャンネルの切り替えはスピーディで、アナログテレビに近い感覚でザッピングができる。

30fpsということもあり、映像はとても滑らか。移動中でもほとんど途切れなかったデジタルコンテンツも放送波経由で取得可能。通信を使って課金なども行える

 一方、高速移動にも強く、時速80km前後で走行している際にも、映像が途切れることなく流れる様子を確認できた。高速道路の途中で送信局が切り替わったが、ハンドオーバーもスムーズで、途中で映像が止まることはなかった。

高速移動時の映像の乱れも少なく、快適にストリーミングを視聴できたコンテンツの編成は送信局の下で行われており、原宿のKDDI Designing Studioで視聴できるものも、ここからネットを経由して送られている

 



(石野 純也)

2010/3/16 12:48