埼玉県も条例化、フィルタリング解除するには親が「理由書」提出


 埼玉県は、青少年健全育成条例の一部を改正し、18歳未満の青少年が使う携帯電話でフィルタリングサービスを利用しない場合、保護者に対して「理由書」の提出を義務付ける。現在開かれている埼玉県議会に改正案を提出しており、すでに総務県民生活委員会の採決は済んでいる。3月26日に本議会で可決・成立の見通し。

 改正案では、青少年が携帯電話などによりインターネット上の有害情報を閲覧することを防止するため、保護者や事業者の義務を定めた。

 まず保護者の義務としては、フィルタリングサービスを利用しない旨の申し出をする時は、正当な理由を記載した書面を携帯電話事業者に提出しなければならないとした。

 一方、事業者は、保護者からこの書面の提出があった時に限り、フィルタリングサービスを適用しないで携帯電話インターネット接続サービスを提供できるとしている。事業者はまた、青少年に携帯電話インターネット接続サービスを提供する契約を行う場合には、青少年および保護者に対して、有害情報を閲覧する機会が生じることなどを説明するとともに、その内容を記載した説明書を交付しなければならない。

 なお、これらの規定には、違反した際の罰則はない。ただし、事業者がこれらの義務に違反していると認められた場合は県が勧告できるほか、勧告を行うために必要な限度において、フィルタリングをかけずに携帯電話インターネット接続サービスを利用している青少年の保護者に対して、報告や資料の提示を求めることができるとしている。

 さらに勧告に従わなかった事業者は県が公表できるほか、立ち入り調査を拒否した事業者には10万円以下の罰金を科す。

 埼玉県では、条例改正に先立ち、2009年10月末に改正骨子案を公表し、1カ月間にわたりパブリックコメントを募集していた。その時の告知では、募集結果を2010年4月ごろに発表する予定としていたが、それを待たずに改正案が審議され、成立する見通しとなった。ただし、埼玉県県民生活部青少年課によると、事業者から反対意見が寄せられたものの、保護者や携帯電話販売店などに大きな影響を与える条例案のわりには、想定していたよりも県民からの関心は低かったとしている。

 改正骨子案では、フィルタリングを解除する「正当な理由」として、「青少年が就労し、業務上必要な場合」「青少年に障害や疾病のある場合」「保護者がインターネットの利用履歴提供サービスを活用し、青少年のインターネットの利用状況を常に確認する場合」の3つを例示していたが、条例案にはこうした具体的な規定は含まれていない。条例案の可決後、条例の施行規則として規定する。

 埼玉県教育委員会が2009年11月に行った調査によると、小学6年生における携帯電話の所持率は29.5%、中学2年生で59.9%。このうち、インターネット接続可能な携帯電話の割合は小学6年生で56.4%、中学2年生で52.2%だったが、フィルタリングサービスの利用率は小学6年生で21.7%、中学2年生で35.8%にとどまったという。

 フィルタイング解除の理由書の提出を義務付ける同様の規定は、すでに兵庫県が「少年愛護条例」において導入済み。また、東京都も現在開かれている東京都議会において審議しており、可決・成立後、10月1日からの施行を目指している。

 埼玉県では当初7月1日の施行を予定していたが、東京都と足並みを合わせるかたちで施行予定日を10月1日に変更した。埼玉県が先行して施行しても、都内で携帯電話の契約手続きをされてしまっては効果がないと判断した。1都3県で連携する動きはあるようだが、千葉県、神奈川県では今のところ具体的な条例案はまだ出ていない模様だ。

 なお、東京都の青少年健全育成条例の改正案では、フィルタリング解除の理由書のほか、青少年の利用に適した携帯電話を都知事が推奨する制度の創設、フィルタリングの水準についての規定、さらには「非実在青少年」の性交などを描写したマンガやアニメ(青少年性的視覚描写物)のまん延防止に向けた取り組みなどを盛り込んでいる。一方、埼玉県が今回の条例改正で予定しているのは、フィルタリング解除時に関する規定のみだという。

 



(永沢 茂)

2010/3/16 17:09