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KDDIが語る「SIMロック解除」のメリットとデメリット


KDDI古賀氏

 KDDIは31日、携帯電話のSIMロックに関する説明会を開催した。KDDIとして「解除の是非」を主張するものではなく、総務省で開催される公開ヒアリングに向けたもの。説明を行ったKDDI渉外・広報本部 渉外部部長の古賀靖広氏が国内外の携帯電話市場におけるSIMロックの現状を事業者からの視点で紹介した。

SIMロックとは

 国内の携帯電話サービスでは、データ通信よりも音声通話を主軸とする端末を多く展開するNTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのいずれも、携帯電話端末に「SIMロック」が施されている。こうすることで、他社から発行された“SIMカード(UIMカード)”をA社向けに開発された携帯電話へ装着しても利用できないようになっている。A社のユーザーは、A社向けの携帯電話を使うことになる。こうした仕組みは、法制度として定められているわけではなく、事業者がそれぞれ判断して行っている。

 また日本だけの制度というわけでもなく、欧米の携帯電話事業者でも導入されている。欧米では、第2世代の通信規格であるGSM方式の導入時には、国境をまたがった移動に対応すべく、SIMロックが施されていない携帯電話となっていたが、2.5G以降、Webブラウジングなどのニーズが高まり、1年契約、2年契約といった期間拘束型契約が多く導入された。この形式では、回線契約時に端末価格が安くなる一方、途中で解約すれば残月数分の基本料相当が違約金として発生する。ただし一定期間が過ぎると無料でSIMロックは解除されることがある。米国でもSIMロック解除を義務化する規制はなく、英国では義務化していたガイドラインが2002年に廃止され、両国ともに通信事業者がSIMロックを解除するかどうか、自主的に判断する形だという。

欧米でのSIMカード導入の背景 欧米でのSIMロックの状況

 

SIMロックの理由、解除して得られるもの

 KDDIでは、日本国内でSIMロックを行っている理由として「販売奨励金で端末を安価に販売したことを背景に、短期解約による奨励金未回収を防ぐ」「日本国内で安価に調達した端末、あるいは盗難した端末を海外で利用することを防ぐ」といった点を挙げる。ただし、2008年頃から導入された“分離プラン”(端末価格と携帯利用料を分けたプラン、ドコモのバリュープランやauのシンプルコースのこと)により、1点目の意義は薄れてきている。また3G端末の開発においては、キャリアが相当の開発費を負担してきたことも背景にあるという。

 KDDIによれば、SIMロックと一口に言っても、ドコモやソフトバンクは“事業者ロック”と呼ばれる仕組みとなる。これは、ドコモ向けの携帯電話はどのドコモユーザーのSIMカードでも使えるというもの。逆にauは“ユーザーロック”と呼ばれる仕組みで、au向け携帯電話に最初に装着したSIMカードだけが、その端末で使える(解除は店舗で行う)という仕組みとなる。また、現状の通信方式は、NTTドコモとソフトバンクがW-CDMA方式、auがCDMA2000方式であり、周波数帯も異なる。仮に“3G端末でSIMロック解除”が実現したとしても、auだけは蚊帳の外になる。その上で、もしSIMロックを解除した場合は、auユーザーにとって中古ケータイを安く手に入れられるといったメリットが考えられるという。

日本のSIMロックの現状 日本におけるSIMカードの状況

 またメールサービスやiモード/EZweb/Yahoo!ケータイといったWebサービス、アプリサービスは各社仕様が異なるため共用できない。同じ通信規格のドコモ/ソフトバンク間であっても、共用できるサービスは音声通話/TV電話やSMSだけとなる。また2010年以降、各社では、「LTE」と呼ばれる通信方式を順次導入する見込みだが、LTEは当初データ通信のみサポートすると見られ、音声通話は現在の3G網を利用すると見られることから、SIMロックの解除は難しい。LTE導入後に、VoIPを実現しようと規格を検討する向きはあるが、まだ実現の目処は立っておらず、LTEのデータ通信部分だけキャリアの垣根を超えようとしても、今後課題を洗い出す必要があるため、現時点ではできるともできないとも言えないとのこと。またLTEによるサービスが、現状の3Gサービスのようにエリア面などでも不自由なく利用できる時期がいつ訪れるか、見通しは立っていない。

各社のLTE展開計画 英国とイタリアにおけるSIMロックの状況

 

メーカーブランドを拒む理由はない

端末開発モデルの違いでSIMロックの意義が異なると説明

 KDDIは、今回の記者向け説明会を、文字通り「現状の説明のため」に開催したとのことだが、いわゆる一般的な携帯電話では、auだけ通信方式が違うことなどから、メリットが薄いことを紹介する格好となった。ただし、アップルの「iPhone」や、Amazonの「Kindle」のように一企業が1つの仕様にまとめた端末が全周波数、全通信規格に対応し、国内の技術適合基準を満たしていれば、キャリアとしては受け入れることになる。キャリアが「SIMロックを解除する/しない」ということではなく、メーカーが自社ブランドの携帯電話を供給するか、そういった仕様の端末/サービスを供給するかどうかにかかっているためで、古賀氏はこうしたビジネスモデルであれば、ユーザーがどのキャリアでも自由に使えるようになる可能性があると指摘した。

 Androidのようなオープンなソフトウェアプラットフォームの端末のうち、キャリア独自のカスタマイズを行うような端末については、他キャリアとの競争上、独自カスタマイズが行われている部分もあることから、現状の一般的な携帯電話と同じように互換性を持つことなく、競争が進められる分野とした。

 質疑応答で、古賀氏はアプリケーションや課金などを分離するというアイデアについて「大胆というか、大きな変革になる。現状の枠組みからすると難しいのではないか。今動いているモデルを大きく変えていくことに、どれだけのメリットがあるのか、ということになるだろう」とした。会見後、「ユーザーの自由度を高めることが利便性の向上に繋がるのかどうか」という点について、古賀氏は「日本の今の垂直統合モデルのなかでSIMロックを解除しようとするのは無理がある。それとは違うビジネスモデル、スマートフォンのような端末を使ったり、LTEを導入したりして、どの仕様もうまく入るのであれば、そういった端末が出てきて、自然とユーザーが乗り換える環境になるだろう」と説明した。また、SIMロックが施されていない端末向けの定額プランの不備を指摘する問いに対しては、担当外のためか、「答えを持ち合わせていない」という回答に留まった。

 端末メーカーの国際競争力については、「iPhoneやKindleのようなビジネスモデルであれば、(SIMロックの解除は)日本メーカーの国際競争力が増すかもしれない」としたほか、SIMロック解除により、1つの端末に複数の仕様を取り入れれば、その分開発コストが増すと予測した。メーカーブランドの販売についても「公正な競争環境であれば問題はないと思う。今はMVNOしかないかもしれない。(メーカーブランドの端末は)将来的に全社の仕様を取り入れた端末にするか、MVNOになるのか、競争環境次第ではないか」とした。また日本の携帯電話市場が海外とは隔絶した状況、いわゆる“ガラパゴス化”にあるとして、SIMロックがその要因ではないかという考え方については「SIMロックだけの問題とは認識していない。日本ではこういう競争を行ってきた結果」と語った。

 また2008年のモバイルビジネス研究会の結果、分離プランが導入され、通信事業者にとっては一定の影響があったとして、総務省で何らかの規制が定められることについて、「十分な検討・議論をした上で考えて欲しい」と述べた。

 



(関口 聖)

2010/3/31 14:38