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Linux Foundation、携帯機器向けOS「MeeGo」のセミナーを開催


The Linux FoundationのJim Zemlin氏

 The Linux Foundationは21日、携帯機器向けソフトウェアプラットフォーム「MeeGo(ミーゴ)」の技術セミナー「MeeGo Seminar Spring 2010」を都内で開催した。

 「MeeGo」は2月に発表された新ソフトウェアプラットフォーム。米Intelがこれまで開発してきた「Moblin(モブリン)」と、フィンランドのノキアによる「Maemo(マエモ)」を1つに統合したもの。これまでそれぞれが独自に開発してきたが、Linuxの普及活動を行う非営利団体「The Linux Foundation」にその業務を移管し、よりオープン性の高い開発プラットフォームにすることを目指している。

 MeeGoは、Linuxをベースにしており、スマートフォンへの搭載を想定。さらにネットブックやデジタルフォトフレーム、タブレット、車載機器などへの応用も期待される。直接的な競合製品としてはiPhone OSやSymbian、米グーグル主導で開発が進むAndroidなどが挙げられる。

モバイル機器でもロイヤリティー不要〜MeeGo最大の魅力とは

 セミナーではまず、The Linux FoundationのExecutive DirectorであるJim Zemlin氏による基調講演が行われた。一個人のアイデアによって開発がスタートしたオープンソースのLinuxが、企業向けや組込機器の分野で大きな存在感を示すまでに至った背景として、Zemlin氏は「10年前にIBMがLinuxに対して10億ドルの投資を決定したことが発端だ」と振り返る。これを機にLinuxは順調にシェアを拡大。GoogleやFacebookをはじめとした大手IT企業、さらには証券取引所など高い信頼性を要するシステムでも採用されている。

 この10年前の“IBMモーメント”は企業、エンタープライズ分野に対してのものだったが、2010年の今日は、モバイルの普及をきっかけに、一般ユーザー向けクライアント分野で再び巻き起こっていると表現。Linuxと同じく、完全なオープンソースを標榜するMeeGoには大きな強みがあると強調する。

 ある特定の1社が開発するクローズドなOSに対し、MeeGoによってもたらされる最大のメリットはコストだ。誰もが無料で利用できることを前提にオープンソースで開発されているため、開発の実態もわかりやすい。「より素早く、より安い最新製品をユーザーは常に求めている。1つの製品で収益を上げられる期間は短くなっており、開発コストを削減する重要性はますます高まっている」とZemlin氏は補足する。


オープンソースのMeeGoによって、収益モデルが大きく変化すると指摘 セミナー会場では、MeeGoのデモ機も展示された

 時間の経過とともに、コンピューティング環境そのものも変化した。デスクトップパソコンだけでなく、ネットブックや電子書籍リーダー、デジタルフォトフレームなどさまざまな機器がインターネット接続を必要している現状があるからだ。PC本体を顧客に無償提供し、バンドルした通信機器の利用料として本体相当代金を収受する販売モデルも一般化した。

 さらにZemlin氏は「例えば、アドビがマイクロソフトに対して、Windowsプラットフォームの利用料として売上30%を支払うなんてことになったら大ごと。クレイジーだ。しかしモバイルの分野ではこれが当たり前だ」と発言。iPhoneで動作するアプリケーションのオンラインストア「App Store」では、売上の70%を開発者が、30%をアップルがシェアしている現状を指摘し、OSをめぐるビジネスも変化していると語った。

 その上でZemlin氏は、クローズドなiPhone OSに対し、オープンソースのMeeGoであれば、そもそもロイヤリティーを支払う必要がないため、収益をさらに最大化できるのも魅力と解説した。

 またIT業界全般の傾向として、サーバーやクライアントといった各種機器の導入コストを低価格あるいは無料化し、その機器上で利用できるネットワークサービスに対して課金する考え方が広まっている。この実現には低価格OSが必須の存在と言え、Zemlin氏は「仮にGoogleの各種サービスがMicrosoft.NETで構築されていたら、ここまでの成功はなかっただろう」と付け加え、コストの重要性を改めて強調した。

 MeeGoは開発途上であり、本格的なスマートフォン製品などは現段階でリリースされていない。より充実したOSを構築するために、Zemlin氏はより多くの技術者が開発に参加してもらい、その成果をコミュニティに対してどんどんアップストリームしてほしいと呼びかけた。

 このほかにもWind RiverのDamian Artt氏(SVP Worldwide Sales & Service)、NovellのGuy Lunardi(Director of Product Mgmt, Linux client preloads)氏も登壇。スマートフォン向けアプリケーションや、ネットブック向けMeeGoの将来性の高さを解説した。


Wind RiverのDamian Artt氏。市場にはさまざまなプラットフォームのスマートフォンがリリースされているが、アプリ市場全体で主導権を握る企業はいまだなく、チャンスは残っていると解説する NovellのGuy Lunardi氏は、グローバル市場ですでに1/3のPCがWindows以外のOSを導入していると説明。市場の変化を強調した

モバイル・非PC機器でもインテルCPU向けアプリを

 セミナー後半では、インテルの池井満氏(ソフトウェア統括技術部・部長)が登壇。なぜインテルがMeeGoを推進するのかについて、「Continuum(コンティニュアム=連続性)」をキーワードに語った。

 ここで言うContinuumとは、ソフトウェアの機器間互換性をより押しすすめた概念。インテル製CPU用に開発されたアプリケーションを、同じくインテル製CPUを内蔵する機器であればPCや携帯電話、高機能テレビといった形態に関係なく実行できるようにしたいという理念だ。

 池井氏は「インテルでは従来、(機器をアップデートしてもそのまま動作できるように)ソフトウェアの互換性を非常に重要視してきた。しかしWebブラウザやJavaなど、OSへの依存性が低い技術が台頭し、互換性の概念自体が変わっている」と現状を分析。インテル製CPUに書かれたプログラムコードを、さまざまなプラットフォームで実行できることが重要だと説明する。

 インテルでは現在、高機能テレビなど非PC系機器にAtomプロセッサーを採用してもらうための動きを強めている。MeeGoのベースとなっているソフトウェアは、この分野の組込用OSとしての実績も高い。AtomとMeeGoを組み合わせることでさらなる市場拡大を見込む、というのがインテルのスタンスだ。MeeGo自体は通常のLinuxと同様、複数のCPUをサポートしているので、製品メーカーが選択できる余地は大きい。

 またAtomは、ネットブック向けCPUとしてすでに圧倒的なシェアを誇る。米国と欧州ではこのAtomプロセッサーを搭載PCを対象としたオンラインのアプリケーションストア「AppUp Center」も開設。ノキアも携帯機器向けに「Ovi Store」を展開しており、MeeGo用アプリケーションをオンライン販売する体制がすでに整っているとした。

 池井氏は「MeeGoのv1.0は4月末から5月上旬にかけて登場する予定。その後も6カ月に1回のペースでバージョンアップさせる計画だ」と解説。今後の発展のためにも、より多くの技術者が開発に参加することを求め、講演を締めくくった。

 このほかにも、具体的なソフトウェア開発の観点からも講演が行われた。ノキア・ジャパンの鈴木佑氏はMeeGoの開発環境である「Qt(キュート)を紹介。ミドルウェア開発企業「エイチアイ」の鈴木啓高氏(専務取締役兼CTO)からは、MeeGo実機上で動作する3Dアプリケーションの動作デモが披露された。


さまざまな機器に対応できるのがMeeGoの特徴 MeeGoのロードマップ。2010年第4四半期には「v1.1」がリリース予定

ノキア・ジャパンの鈴木佑氏 エイチアイの鈴木啓高氏


(森田 秀一)

2010/4/21 21:50