Adobeの戦略発表会、iPhone向けFlash開発の打ち切り決断


Adobe Systemsの経営陣
Adobe SystemsのCEO シャンタヌ・ナラヤン氏

 アドビ システムズ(Adobe Systems)は、22日、都内で事業戦略発表会を開催した。この中で、iPhoneを含むスマートフォン戦略について言及された。

 アドビシステムズは、5月28日、パソコン向けのクリエイティブ関連ソフトウェア群「Adobe Creative Suite 5」(CS5)を発売する。CS5のFlashオーサリングソフトには、「Packager for iPhone」と呼ばれるコンパイルツールが用意されており、1つの目玉となっている。このツールは、Flashのプログラミング言語であるActionScriptを使って、iPhone向けアプリを提供できるツールとなる。

 Webサイトなどで広く導入されているFlashは、携帯電話向けにはFlash Liteという形で提供され、国内の携帯電話でも広く採用されている状況だ。こうした中で、国内外で人気のiPhoneはFlashをサポートしていない。「Packager for iPhone」は、Flashコンテンツの開発者がこれまでの資産を活かしてiPhone向けにコンテンツを提供でき、Windows環境でのコンパイルにも対応する。βテストながら「Packager for iPhone」を使ったiPhoneアプリなども公開されており注目を集めていた。

 ところが、アップルはiPhone OSの最新版となる、iPhone OS 4.0の開発ツール(SDK)のβ提供に伴い、従来の規約を変更。「Packager for iPhone」のようなツールが事実上使えないことになった。

 22日の事業戦略説明会に登壇した米Adobe Systemsのジョン・ロイアコノ氏(同社ククリエイティブソリューションズ ビジネスユニット担当上席副社長兼ゼネラルマネージャー)は、アップルが「Packager for iPhone」のような技術を認めていないとした上で、「サポートするかはアップル次第、CS5では機能を提供して出荷する」と話した。

 ともすれば、iPhoneのFlash対応について今後期待が持てるかのような発言ではあるが、ロイアコノ氏は「Packager技術は提供するが、今後Packagerへの投資はしない」と明言。開発の打ち切りを明らかにした。

 米Adobe SystemsのCEO シャンタヌ・ナラヤン氏は、アドビの「マルチスクリーン戦略」について説明する中で、スマートフォンやネットブック、ゲームコンソールなど、非PC端末でのFlash採用が同社の今後の成長戦略にとって重要であると語った。また、今年下期にはFlash対応端末が拡大する予定であるとした。

 またナラヤン氏は、アップルの規約変更について、「アップルはオープンな環境を採用しないことを選択した。我々はグーグルやノキア、RIMなどと協力して提供する」と語り、Androidやノキア、RIMなどのiPhone以外のプラットフォームとの協力体制をより強固なものにする方針を示した。

 22日の戦略説明会には、米本社の取締役が顔をそろえるものとなった。各人がアップルへの見解を語り、「プラットフォームをクローズさせるアップルの選択は、エンドユーザーの選択肢の幅が狭まる。一度コンテンツを作ると、それを幅広く展開できることをユーザーや業界が求めている。ビジネスが難しくなるのではないか」(同社コープレート デベロップメント担当上級副社長のポール ワイスコフ氏)、「アップルの選択は、ユーザーにとってもクリエイターにとっても良いことではない。逆に排除された我々には追い風になるだろう。パブリッシャーも含めて皆同じ船に乗れる」(同社オムニチュア ビジネスユニット担当上級副社長兼ゼネラルマネージャー ジャシュ・ジェイムズ氏)などと話した。

ポール ワイスコフ氏ジョン・ロイアコノ氏
ジャシュ・ジェイムズ氏2010年1Qの売上げ構成
Flashプラットフォーム普及率
今後登場するFlash10.1、AIR 2の特徴パートナー企業各社

 

(津田 啓夢)

2010/4/22 14:49