総務省の携帯エリア整備、1年間の検討を終了


 総務省は、「携帯電話エリア整備推進検討会」の第6回会合を開催した。過疎地域やトンネル、都市部の地下エリアのエリア整備に関して1年間に議論が進められ、今後報告書がまとめられる。

 国内の携帯電話契約数は1億1200万件を突破し、社会生活の中で重要なインフラとなっている。各携帯電話事業者の携帯網は、人口カバー率において主要3キャリアとウィルコムが99~100%、後発参入組のイー・モバイルも90%を超えている状況だ。

 ただし、人口カバー率は「国内総人口に対する、市町村役場において携帯電話サービスの利用が可能である市町村の人口の総和の割合」となるため、全てのユーザーがこの通信環境を享受できるわけではない。「携帯電話エリア整備推進検討会」では、過疎地域や山間部、離島・半島、トンネルや地下といった遮蔽エリアの携帯電話のエリア整備について検討が行われた。2010年3月に報告書案が提出され、今回の会合では意見募集結果および、事務局(総務省)側の回答などが行われた。

 総務省では、通信エリア外の人口約10万2000人のうち、整備要望のある約7万4000人について順次対応していく考え。また非居住地域についてもニーズやコストに配慮した上でエリア化を図っていく方針。なお、現在の予算規模で推移すると、2010年~2013年の間に3~5万人程度のエリア化が可能という。

 道路トンネルについては、2010年末までにまず高速道路のトンネル整備率を100%とする方針。直轄する国道トンネルは20トンネルが未整備となるが、これも2012年度までに整備される予定となっている。鉄道のトンネルについては、現在整備中のものを進めるとともに、そのほかの区間は、携帯電話事業者や鉄道事業者が参画可能な部分について旅客数などに配慮して整備するとしている。

エリア整備に地方から強い要望、ユニバーサル化は今後

 エリア整備に対する意見について総務省では、携帯電話事業者が簡易型基地局の開発・導入するなど相当努力しているとした上で、採算的に成り立たない地域が存在し、そういった地域から「緊急時の連絡手段が必要」「携帯電話がないと嫁が来ない、孫も帰ってこない」といった要望があると回答。事業者の自主的な整備が困難な地域については、国として整備費用の一部を支援している状況とした。

 なお、エリア整備は基本的に民間企業である携帯電話事業者が行うが、条件不利地域(過疎地、辺地、離島、半島、山村、特定農山村、豪雪地帯の総称)では、市町村が事業主体となって基地局を設置し、伝送路は携帯事業者が確保している。

 地方自治体では北海道が意見を表明しており、さらなるエリア整備には地方公共団体の負担なく、国庫から財政支援するよう求めた。総務省では、地方の財政状況が厳しい状態にあることに理解を示した上で、エリア整備化の事業は国直轄事業ではなく、地方の国庫補助事業であると立場を明確にし、国のさらなる財政支援が難しいと回答した。

 また、検討会に出席している島根県の代表は、「島根県は過疎化が進み、不感地域(電波の届かない場所)には3000世帯が暮らしている状況。国の財源確保をお願いしたい」と語った。和歌山県の代表も不感地域に1800世帯が暮らしており、「エリアが整備されていないのは採算のとれない地域、全ての解消は難しい。全額は難しいとは思うが、国で財源補助の配慮が欲しい」とした。

 このほか上智大学理工学部教授の服部武氏より、「人口カバーエリアは99%と高いが、一方面積カバーは日本全体で6割程度。災害活用を含むのならば、日本全国を大きくカバーしていくような検討が必要」との意見があった。

 また、北海道も意見募集において、携帯電話網のユニバーサルサービス化を具体的に検討すべきとした。総務省では「携帯電話は料金水準か加入電話に比べ高く、利用実態も世代間・地域間でばらつきがみられるため、現時点では携帯電話をユニバーサル化する検討をすべきとまでは言えない」と回答している。

 報告書には未整備のエリア対策として、衛星などを使った無線伝送路などの確保も含めて盛り込まれる見込み。総務省の総合通信基盤局長である桜井俊氏からは、「この1年間に政権交代もあり事業仕分けの対象となったが、携帯電話は国民生活に不可欠だと理解いただいた。また、次期電波利用料について検討する調査会が19日から始まり、引き続き事業者に協力いただきながらできるだけ低廉なものを展開していきたい。

 



(津田 啓夢)

2010/4/27 14:22