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ソフトバンク2009年度決算、過去最高益で設備投資を増額へ


ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏

 ソフトバンクは、2009年度決算を発表した。連結業績は、売上高が前年同期比3%増の2兆7634億円、EBITDAは16%増の7876億円、営業利益は30%増の4658億円、経常利益は51%増の3409億円、当期純利益は124%増の967億円、フリーキャッシュフローは115%増の3908億円となった。

 移動体通信事業が牽引する形で、増収増益。ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏は、営業利益の金額が国内3位、フリーキャッシュフローも国内4位とする数字を示し、好調な数字をアピールした。また、「ARPU増減額」とする数字が前期を越えたとし、固定通信においても営業利益の好調ぶりを示し、ヤフーなどのインターネット・カルチャー事業と合わせて収入面でも好調な推移となっている現状を示した。これらにより、純有利子負債の削減が順調に進んでいるとし、2006年6月末のボーダフォン日本法人買収当時から8800億円削減し、2010年3月末で1兆5010億円となっているとした。「来年度には1兆円を下回る純有利子負債にしたい」と孫氏は引き続き削減目標に変わりがないことを明らかにした。

 同氏は連結決算の注目ポイントとして、前述した4658億円の過去最高の営業利益に加えて、想定以上のフリーキャッシュフローが得られたことで、これを原資とし2010年度は設備投資を2009年度の2倍近い約4000億円前後に増額することを明らかにした。あわせて、フリーキャッシュフローが好調に推移していることから、設備投資を増額しつつ純有利子負債の削減目標に変更が無い点もアピールした。

 同氏は設備投資の増額について、会見の中で、「ツイッターを始めて、ライフスタイルが変わった。進化を前向きに捉え、経営に取り入れている。ツイッターの声を真摯に、真正面から受け止めたのが設備投資の増額」と触れ、携帯電話の電波が入りにくいといった声に対し、経営レベルで反映させたのが設備投資の増額決定であり、フェムトセルや無線LANルーターを絡めた「2010年度電波改善宣言」であるとした。

連結決算の概要 2010年度は設備投資額を大幅に増額へ

 

モバイルインターネットへの取り組み

 ソフトバンクモバイルを中心とした移動体通信事業では、直近の四半期でデータARPUが「音声+基本料ARPU」を逆転したとするグラフを紹介。2010年1〜3月期ではデータARPU比率が55%になったとし、「対前年比でARPUが増加し、データARPUが5割を超えた」といち早くデータ通信に収入のトレンドが移っていることを強調。「モバイルインターネット無しでは生きていけない、そういう時代が必ずくる」とし、「まっさきにやらないといけないのは、ネットワーク」と設備投資の重要性に話を移す。

 連結における設備投資額は2006年度に3898億円、2007年度は2937億円、2008年度は2590億円(移動体通信事業には1992億円)、2009年度は2229億円(移動体は1848億円)と減少を続けており、2009年10月の2009年度上期決算発表時には、連結で年2600億円前後で推移していくとの見通しが明らかにされていた。しかし前述したようにツイッターなどで電波状況に対する不満が寄せられたこと、フリーキャッシュフローの予想以上の増加で余剰分を設備投資に回せるようになったことなどから、2010年度計画を約4000億円と大幅に増額した。

 同氏は、米シスコが明らかにしたとする調査結果をもとに、「2009年から5年後には全世界のトラフィックが現在の40倍になる。10年後には1600倍だ。4倍と40倍ではスタンス、設計思想が全く変わってくる。私はこの数字になると思っている。これがビジョンによる経営」と、飛躍的な増大が見込まれるトラフィックと、それに対するネットワーク設計思想に触れ、「世界中はマクロセルだが、我々はマイクロセル化、フェムト化、Wi-Fi化する。世界で最も速く推進していく」と具体的な方針を示した。

ネットワーク

 同氏によれば、マイクロセルとフェムトセル・Wi-Fiを併用することで、根拠として示した1人あたり40倍のトラフィックを吸収できるとのことで、「4〜5年前から考えていたが、言えるタイミングを待っていた。特許も何件か申請した」と長年の構想による結果であることを明らかにした。同氏はマイクロセルの基地局が小型・軽量で、設備投資や維持の面でもコスト削減に貢献するとし、タイミングを見て更新していく方針を示すとともに、Yahoo!BBのIP化されたバックボーンのインフラを利用することでバックボーンにおいても多大なトラフィックを吸収できるとした。

 基地局数については、ボーダフォン買収時で3Gは2万2000局、1年後には4万6000局に倍増させ、2010年3月末で約6万局となっている現状を示し、2011年3月末には設備投資にともない、約12万局にさらに倍増させるとした。これらの基地局数のカウントには、ホームアンテナ、家庭用のホームフェムトは含まれていない。

 「天の雨が降ってきた」と孫氏はウィルコムの基地局ロケーションの活用についても触れ、全国約16万局のウィルコムの基地局について、「いいところを選りすぐって、基地局倍増計画の候補地として最大限活用していく」と利用方針を明らかにした。これには、現行の通信方式と、今後展開する通信方式の両方が含まれるという。

 また、新たに同社が展開する1.5GHz帯でのサービスでは、同周波数帯で利用していた2G設備を置き換える形で移行を進め、2010年度第4四半期に、理論値で下り最大42MbpsとなるDC-HSPA方式でサービスを開始するとした。

端末とサービス

 同氏はこのほか、端末の展開でiPhoneが引き続き好調な点や最新のAndroid端末を投入した点などに触れ、将来的には「一家に10回線以上が入る時代が、すぐにやってくる。したがって、データトラフィックはもっと伸び、回線数は人口の数で止まらない」と、デジタルフォトフレームなども紹介した。

 サービス面での方針では、パソコンを「効率の追求」、モバイルを「感動の共有」と定義した上で、Ustreamの拡大や「USTREAMスタジオ」の提供、ツイッターとの連携などに言及。ツイッターでのやりとりの中から孫氏自身が決断し実行した施策を紹介しながら、ネットワーク、端末、サービスをトータルで推進していく方針を示した。

質疑応答

 質疑応答の時間では、解約率が3Gだけを見ても比較的高い水準で推移していると質問があり、「2年の割賦を終えて解約率が上がっているが、1.1〜1.2%で落ち着くのではないか」との見方を示した。

 ウィルコムが提供予定だった次世代PHSの「XGP」については、一部報道でTD-LTE方式になると報じられたが、孫氏は、2社に分割されたウィルコムのうち、基地局ロケーションと次世代サービスを提供する会社に3分の1の出資を行ったことを説明した上で、「どの方式になるか、確定したわけではない。検討題材で、決定していない」との考えを明らかにした。

 設備投資額の増額が明らかにされたが、今後について問われると孫氏は、「4000億円はピークになるだろう。来年、再来年は落ち着いてくる。そういう設計の機材になっている」として、4000億円前後の設備投資は一時的なものになる見込みを示した。

 SIMロック解除の議論については、「ビジネスモデルの選択肢は事業者側にあるべきだ」と語り、「強制解除」という方向性は反対する姿勢を示した。一方で、「解除は推奨になると聞いている。(仮に推奨としてSIMロック解除が実現されると)全体で2割ぐらいのユーザーが選ぶのではないか」との予想を示し、また通信方式やサービスの仕様の違いから現状ではメリットが限定的として、「全部の事業者がLTEになり、周波数帯も共通化されれば、我々も積極的に受け入れていきたい」との考えを明らかにした。

 



(太田 亮三)

2010/4/27 22:26