au、不感対策として「auフェムトセル」無償提供


 KDDIは、7月1日からauのサービスエリア対策の一環として、電波が届かない個人宅に対して小型基地局「auフェムトセル」を無償で提供する。

 

“指名買い”は受け付けず

ルーター風の形状となるauフェムトセルと携帯電話
auフェムトセルに繋ぐGPSアンテナ

 フェムトセルとは、きわめて限られたエリアをカバーする小型基地局を意味する言葉。「1000兆分の1」を示す接頭語“フェムト(femto)”と、1つの基地局がカバーするエリアを示す言葉“セル”を組み合わせたもので、これまでにNTTドコモが付加サービスとして提供しているほか、ソフトバンクがエリア対策の一環として5月から提供を開始した。

 auでも今回、サービスエリア対策の一環として「auフェムトセル」を提供することになった。ただし、「auフェムトセルをください」と指名する申込は受け付けず、高層マンションなどに住むユーザーから「我が家には電波が届かない」といった相談を受けた際、解決策の1つとして提供する。まずは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県から提供する。利用料や設置料はかからないが、電気代やフェムトセルを接続するブロードバンド回線の利用料はユーザーが負担する。引っ越しをすると新たに申し込むことになる。

 2010年夏モデルの発表にあわせて発表されたエリア対策の一環として、auでは、自宅内の電波状況改善要望を受け付ける施策「みんなでつくろう!auエリア」を実施する。同施策では、ユーザーからの要望があれば48時間以内に訪問調査の連絡を行い、実際に現地を調査した上で、レピーター(中継局)などの設置を検討し、それでも改善が見込めない場合「auフェムトセル」を提供する。ユーザー側は、訪問スタッフからレピーターやフェムトセルなどの解決策を提示されることになるが、レピーターであれば即日設置できる一方、フェムトセルは総務省での手続きに1カ月ほどかかるため、申込~設置まで6週間ほどかかるという。また店舗やオフィスなどの電波状況改善は、基本的にレピーターで対応するとのことで、auフェムトセルは個人向けサービスと想定されている。

Rev.A対応、同時接続は最大6回線

 auフェムトセルは、CDMA2000 1xEV-DO Rev.A方式に対応する。最大6回線の接続(同時待機は最大50台)となる。発せられる電波は無指向性で、半径10m程度をカバーする。そのため宅外にいる付近のauユーザーも接続することがある。電気代は1カ月間(1日24時間利用)で300円程度になると見られているが、この料金はユーザー側が負担する。CDMA方式で必要なGPSアンテナも用意されている。

 auフェムトセルを設置できるのは、KDDIのFTTHサービス「auひかり」のみ。ADSLや他社回線などについては、現在検証中とのことで、今後拡大する見込み。フェムトセルからau網には、インターネットを介さず、ゲートウェイ経由で直接接続され、通信品質の低下を防いでいる。音声通話(QoS対応)時で100kbps程度の帯域を利用するとのことで、固定網の通信には影響を与えない。

 またauフェムトセルでは、2GHz帯のうち、これまでauの携帯電話で利用されていなかった周波数帯を利用する。17日に発表されたモデルでは、フェムトセル用周波数に対応するが、既存モデルではケータイアップデートを行うことでフェムトセル用周波数へアクセスするようにする。フェムトセル用周波数に対応するためのケータイアップデートは、6月以降に提供される見通しだが、端末の不具合が発生した際の更新だけではなく、ユーザー宅へフェムトセルを設置する際にスタッフからユーザーへアップデートするよう案内される。

背面当初の対応ブロードバンド回線はauひかりのみ
旧機種向けに提供される専用アプリ周辺のフェムトセルを探して接続する

 auの携帯電話では、30分に1度、周辺の基地局へ接続を行うようになっており、フェムトセルの近くに置いた携帯電話も一定時間が経過すれば屋外の基地局ではなく、宅内のフェムトセルへ接続することになる。ただ、身近にあるフェムトセルのほうが通信環境が良好になると期待できることから、「帰宅したらすぐフェムトセルへアクセスしたい」というニーズに応える形で、基地局への接続をOFF/ONする専用BREWアプリが用意される。なお、CA005とBeskeyの2機種は、同アプリと同じ機能がネイティブに組み込まれている。

 auフェムトセルに接続している際は、EZニュースフラッシュ、EZニュースEX、EZチャンネプラスの自動配信、テレビ電話、緊急地震速報が利用できない。ただし、これらのサービスは、2011年春から利用できるようになる予定。

 このほかauでは、商業施設対策として、全国約2350コースのゴルフ場に設置されているクラブハウスや、高速道路のサービスエリア/パーキングエリア(約900カ所)、道の駅(約940カ所)、2000平方m以上の商業施設約1万5000カ所の全フロアでエリア拡充を実施する。2011年7月までに対応が完了する見込みという。

 



(関口 聖)

2010/5/17 15:52