初夏のスマートフォン祭、Ustream中継で語られた各社の戦略


写真左から越川氏、重野氏、松井氏、田中氏、石川氏

 都内各地で今年最高気温を記録し、真夏日となった21日、ケータイジャーナリストの石川温氏による座談会「石川温 初夏のスマートフォン祭」が開催された。

 Ustreamを使ったネット生中継で配信された今回の企画は、石川氏をMCに携帯電話事業者やOSベンダー、メーカー各社らが参加し、それぞれの立場からスマートフォンについて語ろうというものだ。

 イベントに参加したのは、KDDIの重野 卓氏(コンシューマ事業本部 サービス・プロダクト企画本部 オープンプラットフォーム部長)、マイクロソフト日本法人の越川 慎司氏(コンシューマー&オンライン事業部 コンシューマー&オンライン統括本部 モバイルコミュニケーション本部 本部長)、リサーチ・イン・モーション・ジャパン(RIM)の松井 崇氏(セール・プランニング&マーケティング部 キャリア・マーケティング・マネージャー)。そして、HTC NIPPONの 田中 義昭氏(ビジネス・ストラテジ&マーケティング本部 ディレクター)も飛び入り参加となった。

重野氏、Android端末第2弾に言及

 KDDIの重野氏は、auのスマートフォン戦略として、“2台目”を狙ったセカンド端末、そしてメイン端末を狙う2本立てのプランで展開すると説明。「普通の人」がなるべく違和感なく使えるスマートフォンを目指すとした。既報の通り、IS seriesとして発表された「IS01」「IS02」は、まず新しい市場を作るための布石といった意味があるようだ。

 また、秋冬モデルとして大枠のみ発表されているAndroid端末第2弾についても言及し、ワンセグやメール機能に加えおサイフケータイに対応したモデルになる予定とした。同氏は「ここまでやれば普通の携帯電話と何が違うんだ? となると思う」と次期モデルについて語った。

 だが、こうしたauの戦略は発表後、Twitterや2ちゃんねるなど、ネットにおいて厳しい反響にさらされることになった。重野氏は「ある程度想定はしていたものの、ここまでひどいとは思わなかった」と率直に語り、その一方で発表会で端末に触れた記者の反応が良好なものであったとした。

 なお、今回は会場をマクロミルが提供したこともあり、視聴者に対してアンケート調査も実施された。この中でスマートフォンへの搭載を期待する機能として、「おサイフケータイ」がトップとなった。重野氏は再三に渡って「普通の人」にスマートフォンを提供していく姿勢を見せ、IS seriesについても「これはネットに繋がる道具」となどと表現した。



MS越川氏、郷ひろみでローカライズの必要性を訴える

 マイクロソフトの越川氏は、Windows Phoneの最新OS「Windows Mobile 6.5.3」などについて語った。その内容については本誌インタビューの内容と重複するため、インタビューを参照いただきたい。越川氏はスマートフォンのアプローチとして、ポータブルゲーム機としての需要にも言及。XboxやOfficeアプリケーション、クラウドサービス(My Phone)など、マイクロソフトの各サービスとの連携について語った。

 さらに越川氏は、ローカライズに注力することは開発効率の面から米マイクロソフトにあまり歓迎されない状況だと説明。ローカルの需要をくみ取る重要性を説くために、米本社のスタッフを前にカラオケで郷ひろみの「GOLDFINGER '99」を歌い、100万枚のヒットを記録したのは郷ひろみによってローカライズされたからで、原曲のリッキー・マーティンでは、日本でそこまでのヒットしなかったはずだと説いたという。

メーカーの立場



 メーカー側として登場したRIMとHTCは、自社の紹介、自社製品・サービスの紹介が中心となった。RIMの松井氏は、国内におけるBlackBerryの認知度が低いと話し、法人向け端末と理解されている面があるとした。松井氏はビジネスでの利用シーンを説明する一方、今後は一般コンシューマーにもアピールしていくとした。プライベート向けの機能としてmixiへの対応や、iTunesのプレイリストと同期できることなども紹介した。

 HTCの田中氏は自身を“脱ガラケー派”と語り、期待されながらも伸び悩んできたスマートフォンが「ようやく来たかな」と実感していると話した。また、Android 2.2が発表されたことを受けて、田中氏は「Google次第だがアプリが相当速く動くはず」と述べた。

SIMロック解除について

 このほか、会場からの質問でSIMロックについて問われ、グローバルで端末を投入するHTCとして田中氏は、「誰が喜ぶのか」とSIMロックの解除について懐疑的な見方を示した。同氏はSIMロックが解除されることで、携帯電話の料金が青天井になること、キャリアのワンストップサービスが受けられなくなる点などをその理由として挙げた。

 なお、HTCでは国内において、実験的に3モデルをメーカーブランドのSIMフリー端末として投入している。また「Touch Pro」をNTTドコモ、au、ソフトバンクに対して供給していることから、全てのキャリアで同じ端末が使える環境も用意したことになる。これらの状況を説明した上で田中氏は現在の状況で「十分ではないかと思う」とし、「もちろん、メーカーとしてユーザーが喜べばいつでもやる」と述べた。

 携帯事業者としての意見を求められたKDDIの重野氏は、SIMロックが解除され同じ周波数を使う海外端末が使える状況になっても、そのまま国内で利用することは難しく、カスタマイズが必要ととした。なお、今回のイベントで実施したアンケート調査では、割賦払いを終えた後のSIMロック解除を求める声が多かったようだ。


 

(津田 啓夢)

2010/5/24 12:20