ドコモ網利用の「ポータブルWi-Fi」、6月24日発売


ポータブルWi-Fi

 NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)とバッファローは、バッテリー内蔵で携帯できるルーター「ポータブルWi-Fi」(DWR-PG)を6月24日に発売する。価格は3万7000円。両社では25日、製品概要や、開発経緯を紹介する発表会を開催した。

駆動時間などで工夫、コグニティブ機能も

 「ポータブルWi-Fi」は、携帯サイズの無線LAN(Wi-Fi)ルーター。NTTドコモのネットワークに接続できる3G通信モジュールを内蔵し、いつでもどこでも無線LAN対応機器で通信できる。

 対応する通信方式は、W-CDMA(800MHz/1.7GHz/2GHz、HSPA、下り最大7.2Mbps/上り最大5.7Mbps)、無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)。同梱されるクレードルのEthernetポート(10BASE-T/100BASE-TX)経由で、有線でもインターネットに接続できる。クライアントとなるパソコンやiPad、携帯ゲーム機など機器とは、無線LANのほか、クレードルのEthernetポート経由で通信できる。同時に接続できる台数は6台。連続動作時間は、一般的な通信を行う場合で6時間、スタンバイ(待受)モードで30時間。

 大きさは約95×64.4×17.4mm、重さは約105g。

 これまでも携帯できるモバイルWi-Fiルーターは存在するが、「ポータブルWi-Fi」では特徴的な機能として、消費電力を低減して待受時間が最大30時間、連続駆動が最大6時間を達成したことや、FOMA網だけではなく有線ネットワーク(イーサネット)や無線LANと複数のアクセス回線(ポータブルWi-Fiからインターネットへアクセスするための回線)に対応すること、microSDHCカードスロットを内蔵することなどが挙げられる。

 特徴の1つとなる省電力性の実現については、2009年に行ったモニター実験が背景にある。同実験では、モバイルルーターとして利用できる試験端末を貸し出して、実際の利用シーンで試してもらうというものだったが、発熱が課題となった。そこで、新たに設計しなおして消費電力の低減を徹底し、バッテリーの持ちが延びたという。

 またアクセス回線として「ポータブルWi-Fi」では、FOMA網だけではなく、無線LANが利用できる。また同梱のクレードルにあるEthernetポート(10BASE-T/100BASE-TX)で有線経由でのインターネットアクセスもできる。無線LANでは、複数の公衆無線LANサービスのログイン用アカウントを保持でき、無線LANの通信環境の方が安定していれば無線LANに、3G網の方が安定していれば3G網に、と自動的に最適な回線を選択する。こういった、状況に応じて最適な回線を選択する機能は、コグニティブ無線機能と呼ばれるが、今回は電界強度の判定や、NTT側の研究、昨年の実験で積み重ねたノウハウにより、スムーズな回線切り替えになるよう工夫されている。「ポータブルWi-Fi」の設定画面で、3G網への接続を優先するか、無線LAN網を優先するか決められるようになっている。

 またmicroSDHCカードスロットを搭載し、最大16GBのmicroSDHCカードを装着して、あらかじめWebサイトをダウンロードしておいてオフラインで利用できるようにしたり、デジタルカメラなどで撮影し、microSDカードに記録された写真を写真共有サイトへアップロードしたりできる。

 

昨夏に実験、新設計で製品化

NTTBPの小林氏

 NTTBPとバッファローでは昨夏、モバイルルーター「Personal Wireless Router(PWR)」の実証実験を行った。当初は2009年末ごろの製品化を目指したが、発熱などの課題があり、実験に用いた端末を改良するのではなく、最初から設計をやり直して今回の「ポータブルWi-Fi」製品化にこぎつけた。

 実験やこれまでの経緯について説明を行ったNTTBP代表取締役社長の小林忠男氏は「これまでPHSに10年、無線LANに10年携わって、好きなように仕事をやらせてもらっているが、その20年間で学んだのは、無線通信速度とエリアはトレードオフの関係にあるということ。高速化するとエリアは狭くなる。どうすれば、快適かつ便利に使ってもらえるか、どうすればいいか考えてきた。ブロードバンド化が進むほど、1つのシステムで全てのお客さまを満足させることはできないというのが私の考え」と述べ、多様な形態でのサービス提供が求められている状況を指摘した。

 何年も前から、「ポータブルWi-Fi」と同じように、ネットワークへ手軽にアクセスできる方法を検討してきたという同氏は、昨年行ったフィールドトライアルを「ほとんどの人から高評価を受けたが、問題は発熱だった。当時、ネット掲示板で実験用端末の話題を取り上げるスレッドがあり、覗いてみたところ、『(実験用端末と)そっくりな商品がある』と紹介されていた。アクセスしてみると、電池式のポータブルカイロ。こちらも発熱が問題となっていたところで、(カイロが似た商品と紹介されたことが)悲しかった」と当時のエピソードを披露した。

 ユーザーからの評価や時代の流れもあって、事業性はあると見ていたものの、発熱の課題や、FOMA網と無線LANの切り替え(ハンドオーバー)もスムーズにいかないなど、そのまま商品化する品質ではないと判断。イチからやり直したため、2009年末の発売予定が2010年6月にずれ込んだ理由とした。

モーリー・ロバートソン氏

 また搭載される機能のうち、microSDカードスロットは、実験時には用意されていなかったものと紹介。あらかじめ指定したサイトを「ポータブルWi-Fi」が巡回/ダウンロードし、オフラインの状態でもサイトが閲覧できる機能であることを説明した。同氏は「データカードのちょっとかっこいいヤツ、という程度に見えるかもしれないが、どれほど便利か、ユーザーに興奮して使ってもらって、楽しいことができるのか、良いサービスやアプリができるか、これから考えたい。楽しいデバイスにすることが一番重要」と、ユーザーエクスペリエンスを重視する考えを述べていた。

 会見では、J-WAVEなどで活躍し、現在はポッドキャストなどネットを通じたコンテンツ配信を手がけるモーリー・ロバートソン氏が登場。昨年の実験用端末を用いて、日本中を旅しながらUstreamで映像配信を行ったことを紹介し、「放送の仕方が進化することを暗示した、と感じている」と述べ、いつでもどこでも通信できる環境がもたらす影響は多大であることを示した。

 

ドコモ、「販売方法は未定」

 「ポータブルWi-Fi」は3G通信モジュールを内蔵し、NTTドコモのSIMカードを装着することで、FOMA網で利用できる。2GHz帯だけではなく、FOMAプラスエリア(800MHz帯)もサポートしており、バッファローでは山間部などでも繋がりやすいとしている。

バッファローの斉木氏

 NTTドコモ回線のSIMロックが施され、ソフトバンクモバイルなど他のW-CDMA方式対応キャリアでは利用できない。バッファローとNTTBPでは今後、海外での利用を踏まえ、SIMロックフリー化も検討する方針。ただ、ドコモ回線とのセット販売について尋ねられると「同時で購入される人は多いはだろうが、単体でも購入できる。価格は販売店が決めることで、いくらとは申し上げられない」と明言を避けた。この点について、ドコモでは割賦での購入や割引キャンペーンの実施、取り扱い店舗などについて「現時点では、販売方法などは未定。準備ができ次第、案内したい」としており、どのような形での販売になるか、後日あらためて案内するとした。

 このほか、他のWi-Fi対応機器とのセット販売について、バッファロー代表取締役社長の斉木邦明氏は「家電量販店と話はしているが、金額的な話はできていない。いずれにせよ、販売開始まで1カ月あり、その間に決めていきたい」と語り、何らかの施策を検討する姿勢は示したものの、今日の時点での明言は避けた。


【お詫びと訂正 2010/05/26 13:38】
 記事初出時、価格を「3万4000円」としておりましたが、正しくは「3万7000円」です。お詫びして訂正いたします。

 



(関口 聖)

2010/5/25 19:23