人気作品に毎月100万円の報酬、投稿サイト「E★エブリスタ」


写真左から、ドコモの辻村氏、エブリスタの代表取締役社長の池田純氏、DeNAの南場氏

 ディー・エヌ・エー(DeNA)とNTTドコモの合弁会社であるエブリスタは、6月7日、ユーザー投稿型の無償コンテンツサイト「E★エブリスタ」と、有料版「E★エブリスタプレミアム」をオープンする。

E★エブリスタ

 「E★エブリスタ」(エブリスタ)は、ユーザーが作ったコンテンツの人気投票を行い、上位のコンテンツには換金可能なポイントを支払うというコンテンツ配信サイト。iモード・EZweb・Yahoo!ケータイやパソコンに対応する。

 募集するコンテンツは小説やエッセイ、HowToモノ、コミック、俳句/川柳/短歌、イラスト、レシピ、写真など。ユーザーは誰でも自ら作ったコンテンツを投稿できる。コンテンツに対して一般ユーザーは、「スターを投げる」といった形で1コンテンツあたり5つまで投票できる。

 サイトでは投票で人気を得た上位のクリエイターを「エッジスタ」と呼び、「E★エブリスタ」では、エッジスタとそれを目指す一般クリエイターにクラス分けする。エッジスタの首位には、毎月最大100万円相当のポイント(換金可能)が提供される。

 また首位だけでなく2位以下にもポイントが提供されるが、こちらは原資によって配当が変わる。当初の原資は300万円で、このうち100万円がエッジスタの首位に、残りは2位以下に振り分けられる。サービス開始当初のエッジスタは30人程度、エッジスタであれば最低でも毎月3万円相当のポイントが獲得できる。

 エブリスタでは、3カ月後には有料コンテンツの収入が入ると想定、原資は695万円相当になると見込んでいる。3カ月後の想定エッジスタは66人で、1位に100万円、2位に78万円、3位に61万円、4位に48万円、5位に38万円などと、66位の3万円まで原資を振り分けていく。

 さらに、毎月100名程度の一般クリエイターにも些少の報酬を提供する。報酬額は変動するが、サービス開始3カ月後の695万円の原資(予定)のうち、70万円が一般クリエイターに振り分けられる。

 エッジスタの作品は報酬だけでなく、書籍化や映画化などといったほかのメディアへ展開するチャンスも用意されるという。



 DeNAが展開する携帯向けSNS「モバゲータウン」では、2007年よりクリエイターコーナーを設け、小説やイラスト、レシピなどユーザー投稿作品を集めていた。現在までにコンテンツは約80万作品に拡大しており、これらのコンテンツはそのまま「E★エブリスタ」に移管される。「E★エブリスタ」は、モバゲータウンの既存コンテンツにコミックや写真などのコンテンツを追加し、5月17日にプレオープンしている。現在までに約108万コンテンツが集まっているという。

 なお、モバゲータウン側には「E★エブリスタ」のミラーサイトが用意され、ユーザーページは相互にリンクされる。このほか、iMenuの「趣味・投稿」でも積極的にアクセス誘導がかけられるという。

E★エブリスタプレミアム

 エブリスタでは、「E★エブリスタ」というサービス名称に、“みんながスターになれる”という思いが込めたという。その一方で、著名人などのコンテンツを提供する有料サイト「E★エブリスタプレミアム」も同時に展開する。利用料は月額210円。

 「E★エブリスタプレミアム」では、著名人の小説やコミック、エッセイ、スポーツコラムなどを配信するコンテンツサイト。6月7日のオープン時には、約50タイトルが用意され、こちらは雑誌のようなコンテンツが楽しめる。サービス開始時はiモード版のみ展開される。

 みうらじゅんや梁石日の小説、松本零士や江川達也、倉田麻由美らの電子コミック、VAMPSや成海璃子×平間至、サンボマスター、持田香織らのエッセイなどがラインナップされる。さらに目玉として、中田英寿によるワールドカップレポートなども提供される。

 エブリスタでは、サービス開始から1年半で約100万人の有料会員を獲得する考え。この有料コンテンツの収入を「E★エブリスタ」の原資とし、投稿者に還元していく。また、ユーザーが増えてくれば、広告モデルも提供される予定。



作ることは「普遍的な欲求」

 DeNAの代表取締役兼CEOの南場智子氏は、ユーザーがコンテンツを作るということを「普遍的な欲求」だと語り、「日本が生み出した世界に通用する大衆文化」と述べた。モバゲータウンでは、全体の4%のユーザーがケータイ小説などの形でコンテンツを作っているという。南場氏は、米国で同様の仕組みでサービスを提供したと話し、全体の8%が小説を書き始めたと説明。親指文化のケータイ小説は、日本のユーザーに限ったコンテンツではないとアピールした。

 さらに、これまでのコンテンツは、プロとアマチュアの2層化しており、生活の糧を得ているプロ以外のアマチュアは、読者の激励のみを糧としていたという。南場氏は、エブリスタのように報酬を支払いクリエイターを支援していくことで、プロとアマチュアの間にいる中間層を掘り起こし、クリエイターが報酬を得ながら段階的にステップアップできる環境を用意したい考えだ。

 また、NTTドコモの代表取締役副社長である辻村清行氏は、ユーザーがコンテンツを作るUGC(User Generated Contents)のページビューは2007年から7倍に伸びていると説明。さらに利用意向を示すユーザーの既に利用しているユーザーのデータから、潜在的な需要が高いことなどを示した。

 エブリスタでは、30代半ばをメインターゲットに据えてユーザー拡大を図り、有料版をフックに、幅広いコンテンツを拡充していく方針。投稿コンテンツはユーザー通報システムで展開し、法律違反のコンテンツについてはペナルティを課す。また、出版社との連動企画なども実施し、プロの編集の目で次代を担うクリエイターを輩出していく。



 



(津田 啓夢)

2010/5/31 20:00