オープンソース化が完了、Symbianに聞く今後の展開と課題


 国内でも富士通やシャープの携帯電話で採用されているソフトウェアプラットフォームの「Symbian」は、2008年のノキアによる買収を経て、2010年2月にオープンソース化された。現在のSymbianプラットフォームは、過去10年間に開発されたSymbian OSに加え、ノキアが主導したS60、ソニー・エリクソンのUIQ、NTTドコモのMOAP(S)のコードを統合したもの。

Symbian Foundationのウィリアムズ氏

 非営利団体として設立されたSymbian Foundationのエグゼクティブディレクターであるリー・ウィリアムズ(Lee M. WIlliams)氏によれば、Symbian Foundationはソースコードの管理や配布を行い、エコシステムの中心的な存在となるという。参画企業同士の調整役というべき立場で、より多くのプレイヤーの参加を目指すのも活動の1つだ。

 これまでに3億6000万台の対応機種を出荷したとのことで、ある調査企業のデータでは「世界のスマートフォン市場におけるシェアは44%」とされている。これは、iPhoneの2倍、Androidの4倍に当たるとされており、2010年第1四半期だけで、Symbian端末は2400万台(1日あたり26万台)出荷された。定期的なバージョンアップが予定されており、NTTドコモの2010年夏モデルで、富士通製端末では「Symbian^2」が採用されている。

 また次バージョンの「Symbian^3」については、ノキアが対応機種を発表済みで2010年第3四半期にリリースする。「Symbian^3」ではHD動画再生やHDMIの対応、マルチタッチ操作などが利用できるようになる。さらに「Symbian^3」は全てがオープンソースになった最初のバージョン。オープンソース化以前と比べると、ウィリアムズ氏は、「開発速度の向上」が大きなポイントの1つと指摘する。また、「これまでアクセスできなかった部分へアクセスできるようになる。そして将来的な影響について透明性を確保できる」と述べる。

Symbian Foundationはエコシステムを管理過去の資産を統合
世界規模で見るとシェアは44%、1日あたり26万台出荷されている最近ではルネサスが参加。マルチコアへの対応に向けた活動も

 またSymbian Foundationの組織面も特徴の1つ。「オープンソースのAndroidでは追加される機能がどうなるか、(参加企業やエンドユーザーがアイデアを提供できるような)そこまでの仕組みはないように思える」(ウィリアムズ氏)とのことで、Symbianプラットフォームの機能追加、進化には参加企業やエンドユーザーの意見が反映される仕組みがあるという。ただし、そうした影響力を行使できる立場になるには、「Symbianは能力主義。コミュニティとして傍観者であってはならない」とウィリアムズ氏は述べ、それなりのリソースをSymbianへ注ぐ必要があるとする。だが、複数のソフトウェアプラットフォームが競合する現在、他のプラットフォームへ参画しながらSymbianプラットフォームにも、とオールラウンドで開発を進める事業者は限られる。

Symbian^3とSymbian^4では、466もの機能追加が行われるというSymbian^3で追加される機能群

 より多くのプレイヤーをSymbianへ呼び込むには何が必要か。ここでウィリアムズ氏はSymbianが他プラットフォームより秀でているというポイントを挙げる。1つはマルチタスク、あるいはメモリ管理などソフトウェアとしての部分(他プラットフォームでもいずれキャッチアップするかもしれない点だ)、そしてもう1つが「誰もが参加できる組織体制」だ。いわば“共和国”と“帝国”の闘いとも表現できそうな格好だが、その闘いに打ち勝つ決め手は、何らかのキラーアプリケーションやキラーサービス、高画素カメラといった個別の“兵器”ではなく、オープン性という“体制そのもの”にある、と見なしているようだ。

 ただし、ユーザーインターフェイスに関してウィリアムズ氏は「iPhoneは“優秀なiPod”、あるいは一部のネットワークで使える電話機能を備えた端末と言える。そのイノベーションはテクノロジーではなく、使い勝手だ」と分析。Symbianプラットフォームとしては、「Symbian^3」「Symbian^4」といった今後のバージョンで大幅にユーザーインターフェイスが改善されるとのことで、「操作するだけではなく、思わず舐めたくなるほどだよ(笑)」と、今後の展開を期待させるコメント。一方、Androidについては、多種多様なバージョンが出現する可能性を見越してか、「これからは“状況が分裂”する可能性があり、それはエンドユーザーやサービス開発者にとってデメリットになる」とし、Symbianは「急速に分裂から統一へ向かっている」とした。

 日本市場に関して、ウィリアムズ氏は今後さらにオープンシステムが広がるとして、Symbian Foundationとしても一定の役割を果たす意欲を見せた。サードパーティのアプリケーションに関しても、日本でより一層のサポートを進める必要があるとした。iPhoneにおけるApp Store、あるいはAndroidにおけるAndroid Marketのようにサードパーティのアプリを配信する仕組みについても「日本のパートナーと可能性を相談している」とのことで、今後の展開に含みを持たせた。

 



(関口 聖)

2010/6/4 19:03