KDDIと日立、RFIDリーダーライター搭載端末を開発


RFID通信モジュールと、RFID対応のE05SH

 日立製作所とKDDIは、UHF帯を利用するRFIDリーダーライター機能を搭載した端末を共同開発したと発表した。SDIOを利用したRFID通信モジュールを「E05SH」に搭載するもので、今後はユーザー参加型の実証実験を行いながら、流通や商業施設、観光、ライフサポート、子供・高齢者向けサービスなどでの商用化を目指す。

 今回の発表は、総務省の委託研究「ユビキタス端末技術の研究開発」プロジェクトの成果として発表された。2008年度から取り組んでいる内容で、日立では、RFIDリーダーライターの要素技術の開発および小型化に取り組み、E05SHに内蔵可能な、SDIOスロットを利用できる小型モジュールとして試作機が開発された。KDDIでは、RFIDリーダーライターの搭載に必要なドライバや、APIを規定してミドルウェアを開発し、加えて情報通信サービスを連携させるフレームワークを開発している。

 RFID通信モジュールは、ワールドワイドでの展開を視野に、幅広い周波数帯をサポートでき、電波方式から国を識別できる機能を搭載している。一般的なRFIDタグのようなパッシブ型だけでなく、アクティブ型の機能も搭載することで、十数mの通信距離で情報をやりとりすることも可能。

日立の松本氏

 12日には都内で記者向けに発表会が開催され、デモンストレーションも披露された。日立製作所 情報・通信システム社 セキュリティ・トレサビリティ事業部 開発本部 開発部長の松本健司氏は、これまで3年間に渡って開発してきたことを紹介し、「秋から冬にかけて実証実験を行い、2011年度以降に実用化を検討したい」と今後の見通しを明らかにした。まずは法人向け端末として展開される予定で、「屋外や、ネットワークを敷設できないところで活用できる」と携帯電話と組み合わせたことによる特徴を紹介した。

 KDDI 技術統括本部 ネットワーク技術本部 技術戦略部 担当部長の猪澤伸悟氏は、これまでのRFID対応端末では、携帯電話側のハードウェアを改造する必要があったり、ドライバの搭載のためにOSレベルで改修が必要だったりした点を挙げ、「共通ライブラリが存在せず、アプリを作ろうとすると大変だった」と述べる。今回開発された端末では、SDIOスロットを利用し、ドライバを共通化する方法でこれらの課題を解決、「アプリを簡単に開発できるようになった」という。また、RFIDで得られた情報を元に、ネットワーク経由で情報を入手する仕組みが構築されており、携帯電話から情報の更新も行えるとした。

KDDIの猪澤氏 
デモの様子

 観光地などでの活用については、おサイフケータイやGPSを使ったサービスが登場しているが、それらとの違いについて松本氏は、アクティブ型であれば近づくだけで情報を入手でき、「クーポンや店へのナビ情報が、降ってくるようなイメージ」と長距離の通信が可能な点を特徴に挙げた。また、ショッピングモールといった大型の商業施設内など、GPSが正確に利用できない場所でも、RFIDとアクティブ型の機能を組み合わせれば端末の場所を特定でき、ナビゲーションについても「GPSよりもきめこまやかなナビが可能になる」という。

 なお、グループ・アライアンスなどの結成などについて問われた松本氏は、「委託プロジェクト自体は、NTTドコモとパナソニックを加えた4社で行っているので、4社で、どうするか検討していく」と説明。一方で、「ドコモとパナソニックはアクティブ型の機能を中心に進めているようで、別の端末を開発している」と今回の発表とは別の開発体制になっていることを明らかにした。

RFIDの読み取りの様子。パッケージに貼られたラベルにRFIDが内蔵されている。ラベル表面のバーコードはRFIDとは無関係アクティブ型では離れた距離にある複数のRFIDタグを同時に認識できる

 



(太田 亮三)

2010/7/12 14:26