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クアルコム25周年、山田氏が語った次のマイルストーン


クアルコムの山田氏

 クアルコムジャパンは、28日、設立25周年を記念したプライベートイベント「Qualcomm Partners Day」を開催した。この中で、「ワイヤレス・イノベーションをリードするクアルコム」と出して講演が行われた。米AT&Tから発売されるシャープ製MediaFLO端末なども紹介された。

 米クアルコムは、1985年7月、アーウィン・ジェイコブス博士を中心とした7名の技術者集団として、カリフォルニア州サンディエゴで産声を上げた。社名の「Qualcomm」は、「QUALity COMMunications」に由来するもので、当初より、無線通信事業を志していた。

 クアルコムジャパン代表取締役会長兼社長の山田純氏は冒頭、「皆様大変お忙しい中、また、お暑い中……、くそ暑い中お越しいただきありがとうございます」と語り、出席する関係者の笑いを誘った。乱暴な言葉ではあるが、出席するパートナー各社との良い連帯感を感じさせるものだった。同氏は、創業時の状況を「クアルコムは何も売るものがなかった。デジタル無線通信分野で革新を起こそうという『意欲』と『知識』しかなかった」と説明した。

 クアルコムの節目となった出来事を紹介し、1989年11月に実施されたCDMAの最初のフィールドデモでは、メディア関係者が訪れるぎりぎりまで開発がうまくいっていなかったとした。このほか、1998年に発売したスマートフォン「pdQ」などについても触れた。

 山田氏は、研究開発費と売上高比率のグラフを紹介し、毎年研究開発費への投資が増えているものの、売上高の比率も上がっていることを説明。クアルコムが技術の会社であるとアピールし、「研究開発を無線通信技術の進化に還元している。つまり、開発した技術を回していけるかどうかがクアルコムの命運を握っている」と語った。



半導体事業

須永氏

 講演では、半導体事業についてマーケティング部長の須永順子氏が、新規事業について事業戦略部長の前田修作氏が説明した。

 クアルコムの半導体事業は、携帯電話向け部門(CPG)とBluetoothやWi-Fiなどの無線通信機器部門(WCP)、そして、Snapdragonなど、高性能スマートフォンやスマートブック向け部門(CCP)の3部門体制で展開されている。須永氏は、とくにここ数年はCCPに注力しているとした。

 モバイル向け高性能CPUチップセットであるSnapdragonは、ARMからアーキテクチャライセンスを受けて独自開発したものだ。須永氏は開発当初、携帯電話以外の分野、スマートブックなどを狙うために開発されたことを明かし、現在では、スマートブックに留まらず、スマートフォンや一般的な携帯電話でも一部搭載されていることを紹介した。

 今後のロードマップについては、デュアルコア化や無線通信方式のサポートを拡大していく方針が示された。須永氏は「デュアルコアのシステム自体は珍しいものではないが、コアそれぞれに独立したクロック制御システムを持っている点が最大の特徴だ。これにより、処理に応じた最適なクロックを指定できるため、省電力化が実現される」と述べた。


Compaq AirLife 100
DELL Streak



新ディスプレイや独自のAR技術

前田氏

 事業戦略部長の前田氏は、電子ブックリーダーなどでの需要を見込む「Mirasolディスプレイ」の仕組みを紹介した。

 Mirasolは、フィルターを透過する光を制御することで色を再現している。フィルターを通過した光と、光を反射させるミラーの距離を調節することで、光の三原色である赤・緑・青の各色が再現できる。この原理を利用して、電圧変更しながらメカニカルに距離を調整しつつ、静止画や動画を表示する。前田氏は、液晶と異なりバックライトが不要であることや、常時電圧をかけてリフレッシュする必要がない点をアピールした。現在、商品化に向けで検討を重ねているという。



 さらに、拡張現実などとも呼ばれるAR技術についても紹介された。「セカイカメラ」に代表されるような現在主流のAR技術は、位置情報と方位を組み合わせたものだ。カーナビが現在地を地図上にマッピングし、進行方向を上に表示するのと同じようなことを、カメラをのぞいた3D空間上で展開、位置情報にリンクした周辺情報などを表示させている。

 クアルコムのAR技術は、紙など平面上の特定のイメージを認識し、その画像イメージに基づいた情報をカメラをのぞいた3D空間上に表示するもの。画像の認識は、携帯端末側で実行され、サーバー側で認識させる必要がない。前田氏は、雑誌やカタログなどを利用して、カメラをかまえると3D表示で商品が表示されることや、ゲームなどでの利用を紹介した。

 さらに、家電製品との連携についても言及し、たとえば、購入したばかりの家電の前でカメラを構えると、取扱説明書や使い方が表示されるといった利用シーンなども語られた。秋にもSDK(開発キット)が提供される予定で、開発者コンテストなどが実施される。





日本の独自展開

MedPAの西山正徳氏

 グローバル企業であるクアルコムは、当然ながらグローバル市場を見据えた技術開発や事業展開を行っている。しかし、クアルコムの山田氏が講演の後半に語ったのは、日本独自の取り組みだった。

 クアルコムではこれまで、日本をデータ通信の先進市場だと判断してきたという。山田氏は「これからの日本の特徴をどう認識してソリューションを提供していくか検討した」と話し、これからの日本の特徴を「少子高齢化」と「地方の経済的な衰退」とした。

 「少子高齢化は日本が世界の先駆けとなるため、先進的な分野になる」と語った山田氏は、遠隔医療など無線通信を活用した医療分野について言及。クアルコムでは、医療関連の社団法人であるメディカル・プラットフォーム・エイシア(MedPA)と提携し、通信を活用した遠隔健康管理プロジェクトに取り組んでいることなどを紹介した。

 この中で同氏は、「携帯がこれだけ普及し、電話からメール、メールからインターネットと進化し、我々は情報にアクセスしやすくなった。しかし、それが一人一人の距離を近づける方向に向かっているとは思えない。サーバーがデータを解析してアクションを起こすものはすでに存在する。データを使って患者と医者を繋ぐということには、ロジックに基づく情報だけでは提供できないものがあるのではないか」と述べた。


ミュージアの田尻哲也氏 島根県で活躍するアーティスト、六子(LOCO、ロコ)

 さらに、MediaFLOによる地域活性化プロジェクトについても紹介された。島根県のユビキタス特区で実施されている実証実験については、島根県のアーティストをプロデュースしているミュージアの田尻哲也氏が話した。同氏は、島根県には島根県に根付いた文化があるが、それが多くの人の目に触れることがないと語り、MediaFLOを利用して、地域の人に地域コンテンツを配信していることを紹介した。

 山田氏は、こうしたMediaFLOの取り組みについて、かつて力道山を見るために街角のテレビに集まったように、地域に根ざしたものだとした。同氏は「クアルコムは技術開発会社だが、人と人との繋がりを豊かにするような技術を発掘し、日本で実験、海外にアピールしていきたい」と話した。



MediaFLOへの意欲

シャープ製MediaFLO端末を紹介

 講演では、現在総務省において議論が深まりを見せているMediaFLOについても言及された。

 山田氏は、MediaFLOに向けられる指摘があるとして、「グローバルな技術というが、肝心の米国ではうまくいってないではないか、クアルコムは無責任とまで言われる」と語り、「それならISDB-Tmmは世界のどこにあるのか、実態がないじゃないかと言いたくなるがこらえている」と話した。

 山田氏は、米国でのMediaFLOについて「ユーザーが列をなしているような状況ではない」とした上で、4年間のインフラ整備によって人口カバー率が9割を超えたこと、実際に米国のアナログテレビ放送が停波したのが2009年で、これから本格展開するところであることなどを説明した。

 また、本社CEOがMediaFLO事業の身売りについて話したことについては、計画通りであるとした。山田氏は売却について「事業性がないからではなく、ようやくきちんとしたネットワークが整ったということ。本格展開は、我々のような技術開発会社ではんく、専門のプロがやるべきで、早く引き渡したいという意味だ」と説明した。

 こうした考えはクアルコムの事業方針であるとし、「つい先日、インドでTD-LTEの周波数を獲得したが、MediaFLOと同様に当初からインフラができたら現地のサービス事業者に売却すると発表している。我々は何年も多額の投資をし、その技術開発の成果を世の中に示せる。それが会社の遺伝子であり、100%のコミットメントをもって、発展させ成功させる意欲がある」と語った。

 このほか、講演後の懇親会の会場では、米AT&Tが提供するシャープ製のMediaFLo端末などが展示された。


 



(津田 啓夢)

2010/7/28 22:01