シマンテック、AndroidなどPC以外のセキュリティ構想を発表


 シマンテックは、29日に行われたラウンドテーブルにおいて、パソコン以外の機器へ同社のセキュリティ製品を展開する「Norton Everywhere」構想を明らかにした。この中でスマートフォンなどのモバイル機器向けの取り組みについても紹介された。

 シマンテックのプロダクト・マネジメント部門 ディレクターであるダン・ナディール氏は、「インターネットにつながる危機が爆発的に増えている。PCが重要でないというわけでなく、iPhoneやiPadなど、さまざまな機器でユーザーのオンラインの時間が増えている」と状況を説明した。

 シマンテックが掲げる「Norton Everywhere」構想は、こうしたネット市場の動向を踏まえた取り組みとなる。ナディール氏は「Norton Everywhereは製品でなく、戦略」と述べ、同社として重要なサービスであるとした。

 シマンテックは現在、Android向けに「Norton Smartphone Security」というベータ版のアプリを公開している。英語版のみの配信となるが、国内からもAndroid Marketを通じてダウンロードできる。利用料は無料だ。

 シマンテックのNorton製品といえば、パソコン向けのウィルス対策ソフトなどで知られているが、ナディール氏はモバイル機器における最大の脅威は「電話を紛失して、データを失うことだ」と語った。「Norton Smartphone Security」では、遠隔操作で紛失した端末のロックやデータ消去などが行える。あらかじめ端末側で設定しておくことで、万が一端末を紛失してしまった場合に、別の端末からSMS(指定の命令やパスワードを入力する)を送信すると、紛失した端末のロックまたはデータ消去が行える。

 もちろん、マルウェア(悪意のあるソフトウェアやコードの総称)対策機能も用意されている。ただし、ナディール氏はAndroidを狙ったマルウェアについて、「概念実証はされているため可能性はあるが、現実的にはまだない」と語っている。概念実証とは、新たな脆弱性をつく不正なコードのことで、これまでとは異なる脅威について警鐘を鳴らす実験的な意味合いもある。

 Android向けのアプリケーションは自由度が高いため、さまざまな端末内部のデータにアクセスできる。それは開発者からみればうれしいポイントだが、悪意を持って開発されれば、その分だけ脅威にさらされる危険性も高くなる。ナディール氏は「脅威が現実のものになる可能性がある」として、アプリを起動したことによって遠隔地から不正に端末を操作されてしまう危険性などについて触れた。なお、ユーザーの情報を不正に取得するスパイウェアについては存在するという。

 また、シマンテックのコンシューマ事業部門 日本/韓国担当リージョナルプロダクトマーケティング シニアマネージャの風間彩氏は、「Norton Smartphone Security」について、6月の英語版登場以来、携帯電話事業者やメーカーなどから高い注目を集めていることを明かした。「Norton Smartphone Security」はAndroid以外にも対応を拡大する方針だが、有料化や日本語化などについては未定としている。

 このほかナディール氏は、ノートン360およびノートン オンラインバックアップ向けのiPhoneアプリなども紹介した。


ナディール氏風間氏

 シマンテックでは、「Norton Everywhere」構想において、モバイル機器以外のネットワーク機器への取り組みも検討している。「Norton DNS」と呼ばれるもので、たとえば、基本的な保護機能をルーターなどに搭載させることで、家庭内のネットワーク機器の安全性を高めるほか、レストランやカフェなどの公衆無線LANサービスへの導入などが想定されている。マルウェア/スパイウェア対策だけでなく、子供に見せたくないコンテンツなどもブロックできるという。

 「Norton DNS」はユーザーがアプリケーションをインストールするのではなく、メーカーがネット対応機器に導入する形で広げていきたい考え。なお、無償のサービスとして展開したい考えだが、あくまで高度なクライアントを持たないネット対応機器を対象としたもの。パソコン向けにはやはり別途セキュリティソフトが必要になるという。


 

(津田 啓夢)

2010/7/29 16:23