電監審、携帯マルチメディア放送の免許を継続審査


電波監理審議会の原島会長

 17日、総務省で電波監理審議会の会合が開催された。会合後、原島 博会長(東京大学名誉教授)による会見が行われた。会見内容は、総務省から諮問された携帯向けマルチメディア放送の免許に関するものとなった。

 原島会長は、17日に臨時で会合が開催されたこと、総務省側から案が示されない形で諮問を受けたと説明。電監審が自ら判断する格好となるが、原島会長は「本日は両社の申請内容について総務省側から説明を受けた上で審議を行った。特に今後の審議の進め方として技術基準や開設指針の制定など、これまでの審議会における審議の経緯、答申を踏まえた上で審議することを確認した」と述べ、今後、両社のうちどちらへ免許を割り当てるべきか検討を進める方針を示し、審査内容についてはコメントを控えるとした。

 今後のスケジュールは未定で、原島会長は「今日諮問を受けたばかり」と述べ、できるだけ早く結論を出したいと説明。できるだけ慎重に審議するが、いたずらに時間をかけないとした。また1社に免許割当という方針は、原則変更がないとした。

「電監審が判断」、初の事例に

 電波監理審議会とは、通信や放送に関して調査・審議して総務大臣に勧告する機関。従来から多くの案件について、総務省から諮問を受けているが、多くは「A社に免許を割り当てるのは妥当か」など、総務省の判断を問う形の諮問ばかりだった。

 ところが今回は、総務省側は判断を行わず、電波監理審議会が免許をどこに割り当てるか判断することになった。こういった形の諮問は、2008年に行われた法改正によって可能になったとのこと。法改正は、2007年12月の2.5GHz帯の免許割当を受けて国会で課題が提起された結果として行われたもので、これまでに前例はないという。

 原島会長は「総務省が決めきれなかったことを電監審として判断できるのか」という指摘に対し、「国民の目から見てもおかしくない形で公明正大に結論を出したい。(総務省が)決めきれた云々ではなく、透明性(を確保し)、公明正大な手続きをとられた、と考えている。事実関係については総務省側がかなり精査、把握しているので、これからの審議でしっかり説明を受けて判断していきたい」とした。また今後、公開ヒアリングなどを行うかどうかという点については、必要とあればそういった機会を設けることも考えたいとした。

 総務省情報流通行政局総務課長の大橋秀行氏(前放送政策課長)は「総務省が判断しなかったのはなぜか」という質問に対し「できるだけ透明性、中立性を保ち、客観的なデータに基づいた判断を進める上で、審議会へ認定について諮る、という形のほうが(今回の免許割当に対する)要求、要請に応えられるだろうと考えた」と説明。また、会見後の囲み取材で大橋氏は「公開ヒアリングなどを行うことで、いろいろな意見が表明された以上、透明性を確保して最終的に『ちゃんとやったよね』と言われるような手続きにするため、A社とかB社とか総務省が決めない方が良い、ということであれば、法制的にも許される環境でもあり、電監審に判断を求める諮問という形式にした」と語り、総務省が電監審へ判断するよう押しつけたのではなく、透明性を確保した手続きを最も重要視した結果との見解を示した。こうした形にしようと判断したのは、比較的最近とのこと。8月3日に行われた民主党の情報通信議連での勉強会の影響はまったくないとした。

 大橋氏によれば、3時間におよんだ17日の会合のうち、半分程度は総務省側からの説明とそれに伴うやり取りに費やされ、残り半分の時間は総務省側は退出して電波監理審議会の委員のみで審議が行われたという。定期的に開催される電波監理審議会だが、携帯マルチメディア放送の審議については、9月に予定されている次回会合で進められるのか、その前後になるのか、現時点では未定とした。また今日の説明では全てではないとして、「審議会側から『これからいろいろとお願いすることがあるだろうからよろしく』と聞いた。今後、いろいろといただいた上で資料などを整理することになるだろう」と述べた。

 



(関口 聖)

2010/8/17 17:41