VISA認証サービスが日本のモバイルサイトに対応


 ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、オンラインショッピングの決済向けに提供している「VISA認証サービス」(Verified by VISA)について、携帯電話向けサイトに対応したサービス「Visa認証サービス モバイル」を提供する。

 同サービスは、世界に先駆けて日本で展開されるもので、10月より試験運用が開始される。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯電話が対象で、スマートフォンも含まれる。Webブラウザで利用する認証サービスとなり、アプリは不要。携帯電話のブラウザ、フルブラウザ、スマートフォンのブラウザなど、SSLをサポートするブラウザであれば基本的に利用できる。

VISA認証サービスにモバイル版を追加3キャリアの携帯電話・スマートフォンから利用できる

 

 VISA認証サービスは、オンラインショッピングの決済手段としてクレジットカードを利用する際に、カード番号などとは別に、本人確認に相当する認証サービスを提供するもの。ショッピングサイトを運営する加盟店が決済システムに組み込んでいれば、利用できる。ユーザーは、VISA認証サービスをサポートしているカード発行会社のWebサイトで、同サービス用のパスワードを予め設定しておく必要がある。「3-Dセキュア」と呼ばれる本人確認技術を軸に構築されており、日本ではカード会社14社が対応している。

 モバイル版の利用は、基本的にはパソコン版と同様で、決済の最後に認証を行う。カード発行会社のサーバーにパスワードや予め設定できるオリジナルメッセージが保存されるため、携帯電話の機種変更などに関係なく利用できる。

 VISA認証サービスは、パソコン向けには日本国内で2002年より導入されており、対応するショッピングサイトで利用可能。一方、携帯電話などモバイルサイト向けにはこれまで提供されてこなかったため、同社は、今回の取り組みによりモバイルサイトについてもクレジットカードによる決済のセキュリティ向上を図っていく。

モバイルサイトのカード決済に本人認証システムを導入

ビザ・ワールドワイド・ジャパン 新技術推進部の鈴木章五氏

 26日には都内で記者向けに「VISA認証サービス モバイル」の説明会が開催された。ビザ・ワールドワイド・ジャパン 新技術推進部の鈴木章五氏は、インターネット上の多くの決済手段には、本人確認に相当する手段が無いとして、VISA認証サービスが本人確認に相当するものであることを解説。「100%IPベースの、ブラウザで利用するサービス。今後発売される機種にも対応していく」と、携帯電話やスマートフォンの設定を変更することなく、簡単に利用できるサービスだとアピールした。

 同氏は、同社が行ったアンケート調査の結果を示し、「オンラインショッピングにおける携帯電話の比率が高まっていることもあるが、不安なユーザーは増えている」と結果を分析。一方、国内の加盟店からは、パソコン向けに提供されているVISA認証サービスの携帯電話版が存在することを前提に問い合わせを受けることもあるとのことで、世界的にみてもモバイルのオンラインショッピングが発展している日本でVISA認証サービスを先行して提供するきっかけになっているとした。

eコマースで携帯電話の利用が増加携帯電話からのカード決済に不安があるという調査結果

 

拡大するeコマースの安全性、本人認証サービスが鍵に

米Visa eコマース兼本人認証担当 グローバルヘッドのジェリー・スウィーニー氏

 説明会ではまた、米Visa eコマース兼本人認証担当 グローバルヘッドのジェリー・スウィーニー氏からオンラインショッピング・eコマースのトレンドや同社の戦略が語られた。スウィーニー氏は、eコマースの全世界的な市場規模が1兆ドル弱、前年比で25%の伸びをみせる市場になっており、Visaにおいてもeコマースへの取り組みは重要性が高まっているとする。

 また、ユーザーは、手軽な利用と安全性という一見すると相反する要素を求めており、「Visaにとってeコマースは大きなチャンスだが、課題もある」との認識を示す。加えて、「不正利用は、非対面(=ネット)の世界に移行している」とのことで、eコマースにおけるセキュリティの向上が重要になるとした。将来的な戦略としては、静的なデータの保存を避け、取引中のデータにダイナミックな(動的に生成された)データを組み込むことでセキュリティの向上が図れるとし、既存のインフラを活用しながらセキュリティや利便性を確保していくとした。また、カードの利用時にリアルタイムにアラートを配信するなど、不正な利用に遭遇してもすぐに把握できるような手段も検討されている。

グローバルにおけるeコマースの状況日本のeコマースでは携帯電話が急成長し、優先事項とする
グローバルな不正の傾向、全体では減少しているものの非対面取引では増加VISA認証サービスは、非対面取引における鍵となる

 

 VISA認証サービスについては、「かつてない勢い」で伸びており、各国の規制当局が認証サービスの義務化や推奨を行っていることも伸びの一助になっているとした。同サービスの2010年の成長率は、前年比50%という。同サービスには1万のカード発行会社、44万の加盟店が対応し、登録したユーザーは8500万人。サービスを利用できる適格者は4億人で、100以上の国で展開されている。また、マスターカード、JCBなど主要なカードブランドにも採用されている。

eコマース向けのVisaのサービス

 同氏からは、米国やオーストラリアなど、一部に地域で提供されているサービスも紹介された。米国で2009年の秋から展開されている「Rightcliq by Visa」は、購入前の検討や候補リストの作成段階でSNSなどと連携するもので、決済までをサポートする新機軸のサービス。同氏からは、米国以外でもサービスを提供する方針が示された。

 オーストラリアでは、小額決済をターゲットに、「payclick by Visa」が提供されている。これは、Paypalと同種のサービスで、payclick用のプリペイド口座を開設して金額をチャージしておけば、対応する加盟店での決済が簡単になるというもの。親が口座を開設し、子供に使わせる用途にも対応しており、入出金の履歴などを親が確認できるようになっている。オーストラリアではiTunesでの利用などに対応するほか、オーストラリア以外で展開する方針も示されている。

 

(太田 亮三)

2010/8/26 19:09