ルネサス、携帯/車/家電共通SoC基盤構築でSH-Mobileなど統合へ


ルネサス エレクトロニクス SoC第二事業本部 事業本部長の茶木氏(右)と、副事業本部長の松井俊也氏

 ルネサス エレクトロニクスは、携帯電話向けのSoC(System on a chip)を含めたマルチメディア向けSoC事業の戦略説明会を開催した。

 ルネサスは、NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの事業統合によって2010年4月に設立された半導体メーカー。マイコン事業、システムLSI(SoC)、アナログ&パワー半導体の3事業を柱に、さまざまな機器に半導体を供給している。

 同社は、今年7月、ノキアの無線モデム事業を約2億ドルで買収すると発表、11月末には買収が完了する予定となっている。GSM、HSPA、LTEといった無線通信のハードウェア/ソフトウェア技術を得たことで、既存チップソリューションに通信機能を盛り込めるようになるため、今後加速すると見られるメーカー各社の要望に柔軟に応えていくともに、海外事業への布石としたい考え。

 SoCとは、デバイスに必要なマイクロプロセッサやメモリ、制御回路などを1つの半導体チップとして実装する集積回路のこと。ある機能を提供するために基板上に個別に実装する必要があったLSIをまとめられるため、実装スペースの削減、コスト低減、低消費電力化といったメリットがある。

 ルネサスでは、SoC第2事業本部がモバイル機器、車載情報システム、ホームマルチメディア向けのSoCソリューションを手かげている。今回の説明会で同社は、この3分野のプラットフォームを統合して「新統合SoCプラットフォーム」を構築し、開発効率を上げていくことが明らかにされた。

3分野共通の新統合SoCプラットフォーム



 新統合SoCプラットフォームでは、大きく分けて、モバイル向けの「R-Mobile」、カーナビなど車載機器向けの「R-Car」、STBやDTB向けの「R-Home」と、3シリーズの製品が提供される。3分野共通のプラットフォームを構築するため、まずNECエレクトロニクスとルネサステクノロジーがそれぞれ提供してきた技術を融合し、ここにコンテンツの相互利用、高速通信技術、低消費電力、オープンOSへの対応およびAPIの標準化という4つの技術を集約させていくとしている。

 新統合SoCシステムアプリケーションでは、システムアプリケーションとリアルタイム処理が分離した構造を採用する。システム部はARM、リアルタイム処理はSHシリーズなどが採用される。

 また従来、各分野で提供されてきた半導体ソリューションは、「R-Mobile」「R-Car」「R-Home」のいずれかに統合され、たとえば、携帯向けのアプリケーションプロセッサとして提供されている「SH-Mobile」シリーズは、「R-Mobile」に統合されることになる。

 ルネサス エレクトロニクス SoC第二事業本部 事業本部長の茶木英明氏は「現在の製品については従来通り、開発/販売、サポートを継続する。新製品についても既存製品との互換性を確保、あるいは互換手段を用意する」と説明しており、既存顧客を継続してフォローしていく方針を示した。

R-Mobile、ノキア買収

 モバイル分野は、SoC第2事業本部の売上げのうち、約半数を占めている事業となる。茶木氏は、「R-Mobile」のターゲットとなる電子書籍端末、スマートフォン、UMPC、PND、ポータブルメディアプレーヤーといった市場はいずれも成長分野であるとし、引き続き注力していくことが説明された。

 ルネサスは、NTTドコモなどにSH Mobile Gシリーズといったアプリケーションプロセッサを供給しており、国内で高いシェアを得ている。「R-Mobile」では、2011年以降、携帯電話やPND向けのSH-Mobile、民生機器向けのEMMA Mobileなどを汎用アプリプロセッサ「R-Mobile A」として展開する。

 これに加えて、ノキアから獲得した通信モデム技術などを合わせた「R-Mobile U」も提供する。こちらは海外企業や海外展開するメーカー向けの、通信モデム付きスマートフォン用アプリプロセッサという位置付けになる。

 このほか茶木氏は、8日に答申された携帯向けマルチメディア放送についても言及し、対応チップを提供していくと語った。

 なお、ノキアから買収した通信モデム事業については、LTEとWiMAXモデムのロードマップを公開。LTE/HSPA+/GSMのトリプルモード対応チップと、HSPA+/GSMのデュアルモード対応チップを2010年~20011年にも提供する。2012年以降には、中国向けにTD-LTE/TD-SCDMA対応のモデム製品なども供給していく計画という。茶木氏は、ワールドワイドで提供するために唯一欠けていたモデム事業だが、実績のあるノキアのモデム技術を獲得した。買収は11月末までに完了する予定で、海外市場や顧客の海外進出に貢献していきたい」などと述べた。



R-Car、R-Home

 ルネサスは、国内向けのカーナビ用半導体において97%のシェアを得ており、海外でも57%程度のシェアがあるという。「R-Car」では、海外シェアを伸ばしていく方針で、この中にモバイルで培った技術を活かしていくという。具体的には、LTE技術を活用したテレマティクス分野に手を広げ、車における常時接続環境を用意していく。

 「R-Home」は、グローバルで進みつつある、アナログ放送からデジタルへの切替を狙って、STBやDTV市場にプロセッサを提供していくもの。ルネサスでは、世界20億人のSTBユーザーに対して、通信対応をキーワードにシェアを拡大していく方針だ。


 



(津田 啓夢)

2010/9/9 17:45