ソフトバンク孫社長、iPadの法人利用をアピール


 ソフトバンクは、iPadの法人利用を推進する講演イベント「Softbank Days 2010」を開催した。ソフトバンクモバイル 代表取締役社長兼CEOの孫正義氏が、来場した多数の法人関係者の前で基調講演を行ったほか、各社による導入事例のセッションが開催された。本記事では、孫氏の基調講演の模様をレポートする。

「iPadは日本の生産性を上げる重要な武器」

ソフトバンクモバイル 代表取締役社長兼CEOの孫正義氏。左脇にiPadを抱えて登壇した

 孫氏は登壇してまず最初に、数千人規模で集まった来場者に対し、iPhone・iPadを個人的に、日常的に使っているかを挙手で問いかけた。片方だけの人は「ビジネスマンとしての姿を振り返って欲しい」、両方とも使っていない人は「人間として大丈夫か?(笑)」と冗談を飛ばす孫氏は、「iPhone」「iPad」の組み合わせを武士が帯刀する「小刀」「大刀」に例え、「小刀だけで戦場に向かうことが、どれだけ悲惨な結果を招くか」と、ビジネスシーンにおけるiPadの重要性を強調する。

 また、「持っているだけでは勝てない。自在に使いこなすことで勝てる」と、日常的に慣れ親しむことが重要とし、さらに「Androidやほかのタブレット型端末、Windows Mobileなども出てくるだろうが、切れ味の良い刀を持つことが大切。(iPhone/iPadは)似て非なるものであることは、使っている人にはわかるのではないか」と述べ、切れ味の良いiPhone・iPadを両刀使いとして持ち、なおかつ使いこなすことが重要だと語った。

 続いて孫氏は、ボーダフォン日本法人の買収以降、ソフトバンクの業績が急速に回復した様子や、自社の利益が拡大した様子を紹介。一方、不況関連の暗いニュースが続いており、「一言でいうと、日本の企業は元気がない」と現在の状況に憂いを示す。

 孫氏はここで、敬愛する坂本龍馬の活躍を「最先端の技術」「情報」「ビジョン」「志」といったキーワードで引き合いに出し、「このような時代において、日本の競争力を取り戻すには、精神論、伝統的なものごとだけでは至難。新しい武器を手にし、日本の国際競争力、労働の生産性を取り戻す。iPadは、日本の生産性を上げる重要な武器になる。クラウドの仕組みと組み合わせれば、戦略的で、持続可能なものとなる」と語り、iPadが日本企業復活の鍵になるとした。

ソフトバンクの業績はモバイルとともに回復日本の労働生産性が低いと指摘iPadが企業経営の救世主とした

 

グループ2万人にiPad付与。残業の削減、移動時間の活用を推進

 孫氏はここから、iPadの法人への導入による効果を、ソフトバンクグループ各社の事例を用いて紹介する。ソフトバンクグループでは、グループの全社員2万人に対し、iPadを付与。法人部門であるソフトバンクテレコムでは、営業の約3000人がノートパソコンの使用を止めてiPadに移行し、社内ではシンクライアントシステムが大規模に導入されているという。

 孫氏はソフトバンクテレコム営業社員へのアンケート結果をもとにしたデータを示し、iPadの導入で一人当たり月3万3000円の残業削減が行えたとアピール。さらに、紙の資料作成が不要になったとし、紙と印刷の費用は一人当たり月1万円削減できたとした。紙の消費枚数は年間1000万枚(5億7000万円)から年間260万枚(1億2000万円)にまで削減し、金額にして年間4億5000万円の紙代が削減できたという。

 「パソコン」「携帯電話」で月9000円と算出されていた一人当たりの通信関連のコストは、「iPad」「iPhone」「シンクライアントシステム」の導入により、月1万5000円に上昇しているが、前述の残業削減および紙・印刷費用の削減は、合わせて月4万3000円になるとし、「6000円のコストアップにより、4万3000円のコストダウンになった」と説明。加えて、効率的な業務の結果による新たな「時間創出」は一人当たり月5万2000円分におよぶとした。

 同氏は、社員数が変わっていない状況で、iPad導入後は獲得回線数が2倍、訪問件数は3倍になっていると説明。移動時間のロスをなくせるiPhoneとiPadの組み合わせの有効性をアピールした。孫氏は「個人的な利用で慣れ親しんだら、仕事でも使いこなせる」と、付与したiPadを個人的に利用することを推奨しており、社員の総合的な満足度も向上しているとするデータも明らかにした。

 孫氏はまた、法人利用では遠隔ロックや遠隔消去といった機能によりセキュリティが確保できるとし、社内のシンクライアント端末として活用すれば、さらに安全性が高まることをアピールした。

2万台のiPadを社員に付与ソフトバンクテレコム営業社員の残業削減効果iPadやシンクライアントでトータルコストが下がったとした

 

 基調講演の中では、iPadを導入している法人の事例として、ビー・エム・ダブリュー、神戸大学大学院 医学研究科、凸版印刷、ガリバーインターナショナル、AIGエジソン生命保険、トステムの各担当者が登壇。iPadやiPhoneを活用して先進的なワークスタイルを実現している様子が語られた。

 孫氏はゲストの登壇者を見て、「みなさん、目が活き活きとしている。こういう方ばかりなら日本の企業はまだまだ頑張れる」と感想を述べたほか、iPadの法人導入にあたっては、単に上乗せで導入を勧めるのではなく、削減できる既存コストを査定した上で導入を提案するとし、コスト削減の診断は無料で行うとした。

 孫氏は、「風は確実に情報戦略に向いている。先進諸国としての解決策はここにある。失われた20年を取り戻す鍵はここにある」と締めくくり、iPadを活用した先進的で効率的なワークスタイルへの移行を訴えた。

 

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(太田 亮三)

2010/10/20 17:28