ソニー、電子書籍端末「Reader」を12月10日発売


「Pocket Edition」(PRS-350)
「Touch Edition」(PRS-650)

 ソニーマーケティングは、電子ペーパー搭載の電子書籍端末「Reader」2モデルを12月10日に発売する。店頭価格は、5インチディスプレイ搭載の「Pocket Edition」(PRS-350)が2万円程度、6インチディスプレイ搭載で音楽再生に対応した「Touch Edition」(PRS-650)が2万5000円程度になる見込み。

 Readerは、XMDFのほか、ePub、PDF、テキスト形式のファイルを表示できる電子書籍端末。600×800ドット、16階調グレースケールのE-Ink社製電子ペーパー「Pearl」を搭載。光学式タッチスクリーンも装備しており、指やタッチペンによりタッチ操作でページ送りやメモの記入などが行える。

 文字は6段階でサイズ調整が可能で、読んでいるページにしおりを挟むブックマーク機能や、タッチペンを利用して本の上に手書きのメモを書き込んだり、気になる文章にマーカーを引いたりするメモ機能、気になる語句を調べられる英和辞書(ジーニアス英和辞書 第四版)、英英辞書(New Oxford American Dictionary)が搭載されている。メモ機能や検索機能を利用する際には、ソフトウェアキーボードが表示される。

 2モデルともに2GBのメモリを内蔵し、うち1.4GBがユーザーエリアとして割り当てられている。書籍1冊を約1MBとして計算すると、約1400冊が保存できる。Touch Editionには、メモリースティック PRO デュオとSDメモリーカードのスロットも用意されており、MP3やAACといった音楽ファイルを再生できる。

 Pocket Editionの大きさは104.6×145.4×9.2mm、重さは155g。ボディカラーは、ブルー、ピンク、シルバーの3色が用意される。一方のTouch Editionの大きさは119.1×169.6×10.3mm、重さは215g。ボディカラーはブラック、レッド、シルバーの3色が用意される。いずれのモデルも内蔵のリチウムイオン充電池で1万ページのページ送りが可能。

 なお、いずれのモデルも通信機能は用意されておらず、USBケーブルでパソコンと接続してReader側にデータを書き込む必要がある。Readerへのファイル転送については、専用ソフト「eBook Transfer for Reader」が用意される。ユーザーは、端末の発売にあわせてオープンするパソコン向けの電子書籍販売ストア「Reader Store」などからダウンロードしたデータを、同ソフトを使ってReaderに転送して利用することになる。Reader Storeでは、オープン時に2~3万冊の書籍が販売される予定。代金はクレジットカードおよびソニーポイントで支払う。

シルバーピンクブルー
シルバーレッドブラック
ライト付きブックカバー(Touch Edition用)

 このほか、Reader向けのオプションとして、ブックカバー(各3色、3675円)、ライト付きブックカバー(各2色、5985円)、ソフトキャリングケース(3色、2940円)が販売される。ソニーストアでは、吉田カバンオリジナルカバー(4980円)や、同カバーとACアダプター(3675円)をセットにしたオリジナルアクセサリーセット(6000円)が12月上旬より販売されるほか、メッセージ刻印サービスも提供される。

 また、11月25日15時~11月30日13時にかけて、ソニーストアではReaderのモニターキャンペーンが実施される。各モデル5台ずつ用意され、カラーはPocket Editionがシルバー、Touch Editionがブラックとなる。落選者にも同製品の長期保証(3年ワイド)無料クーポン(12月31日まで有効)がプレゼントされる。

Pocket Edition用ブックカバーTouch Edition用ブックカバー
Pocket Edition用ライト付きブックカバーTouch Edition用ライト付きブックカバー
ソフトキャリングケース

 ソニーは25日、同社本社ビルにおいて、「Reader」の発表会を開始した。ソニーの電子書籍事業を統括する、米国ソニー・エレクトロニクス シニア・バイス・プレジデントの野口不二夫氏が全体的な構想について語り、「Reader」の特徴や魅力については、ソニーマーケティング代表取締役社長の栗田伸樹氏が語った。

 最初に壇上へ立った野口氏は、「これまでソニーはさまざまなエンターテイメントを手がけてきたが、いよいよ第4のエンターテイメントとして、“ブック”を展開する」と述べ、プレゼンテーションをスタート。同社では、欧米など海外で既に電子書籍事業を展開しており、日本が14カ国目になる、と紹介しながら、よく寄せられるという質問3つを挙げて、電子書籍事業について説明する。

 その3つの質問とは「電子書籍の登場で紙の書籍のビジネスがなくなるのではないか」「汎用のタブレット端末があれば、電子書籍専用端末は不要ではないか」「デジタル化でビジネスモデルが変化するのではないか」というもの。1点目、2点目について、過去の実績と今後の予測の推移を示しながら、電子書籍と紙の書籍は共存すること、専用端末のほうがコンテンツが充実する傾向にあることなどが語られた。3点目については「ビジネスモデルは大きく変化する」と指摘し、デジタルカメラを例にして、出版業界でも変革があるとする。このほか同氏は、「本は、文化と密接に関わっている」として、出版社・読書家双方の期待に応えるビジネスを展開すると述べ、今回の「Reader」では、XMDFをサポートするほか、今後ドットブックやePub 3.0へ対応し、24日に設立発表がなされたブックリスタとともにサービス展開すると説明した。

ソニーの野口氏Readerを紹介下栗田氏

 続けて登場した栗田氏は、「1400冊を1台に保存できる」点など、「Reader」のハードウェア的な特徴を紹介。紙の本の使い心地を強く意識したとのことで、タッチパネルでは、感圧式や静電式ではなく、ディスプレイにフィルムを貼らない光学式(赤外線で触れた場所・動きを検出)を採用したことで、触れたときの感触も、一般的なタッチパネルディスプレイにありがちな、つるつるとしたものではなく、心地よい触り心地になっているとアピールした。ディスプレイ自体もE-Ink製の電子ペーパーで、目に優しさを追求したとする。

 ボディデザインは、アルミ素材を採用し、軽量化と剛性を両立させたほか、背面のラバー塗装で手に馴染むようにし、ボタンを極力少なく、シンプルな外観に仕上げた点が紹介され、紙の書籍に馴染んだ読書家が、すんなり電子書籍を利用できるよう配慮しているという。

 フォーマットとしては、先述のXMDFやドットブックなどのほかに、静止画(JPEG/GIF/PNG)、PDF、テキストファイル(Touch EditionではMP3/AACも対応)をサポート。フォント変更はできないが、最も読みやすいフォントを選んだという。

 質疑応答で粟田氏は、国内の販売目標について約1年で30万台程度と回答。2012年に電子ペーパー利用の電子書籍端末が100万台を超えるとの想定を示し、市場シェア50%を確保したいとした。

コンテンツの取り扱い、価格は別途案内

 続けて紹介されたのは、コンテンツ配信ストア「Reader Store」だ。12月10日にオープンする予定の同ストアでは2万点の電子書籍が用意され、パソコン(Mac OSは非対応)でアクセスして、コンテンツを購入し、「Reader」へ転送して読む、という使い方になる。

 DRMについては、PSPなどで利用されている「Marlin(マーリン)」を採用する。機器の故障時には、ユーザーIDとコンテンツの利用履歴を紐付けるデータベースを運用することで、書籍を再ダウンロードできるようにする。

 1つの書籍データを、パソコンやReaderなど、複数の端末で利用できるかどうかについては、「米国ではAndroid向けアプリを提供し、スマートフォンでも読めるサービスを開始する。ソニーとしては個人のIDとコンテンツの紐付けによりユーザーのメリットが明確にあれば、否定するものではない」としながらも、日本では出版社や作家との合意形成が必要として説明。ユーザーがどの程度自由にコンテンツを利用できるか、今後詰めていくとした。また書籍データの価格についても今回は明らかにされず、発売日に紹介する方針が示された。

 このほか、漫画コンテンツは「魅力的」(野口氏)として、雑誌を含め、コンテンツ拡充の方針を示したものの、時期については明言を避けた。

 今回の2機種は、Wi-Fi、3Gモジュールといった無線通信機能を備えていないが、米国では搭載したモデルが好評を得ているとのことで、野口氏は「今後ユーザーの反応を見て、ワイヤレスの商品を検討していきたい」と語っていた。



(湯野 康隆)

2010/11/25 15:04