ソフト開発環境「Qt」、ノキア担当者が基調講演


キールベルグ氏
アルムストロム氏

 ノキアは、12月10日、ソフトウェア開発環境「Qt」(キュート)の開発者イベント「Qt Conference - Tokyo 2010」を開催した。Nokia, Qt Development Frameworksのグローバルセールス・マーケティング・サービスディレクター ダニエル・キールベルグ氏、Head of Qt & MeeGo Eco System, Asia ダビッド・アルムストロム氏がキーノートスピーチを行った。

 「Qt」は、ノキアがプラットフォーム戦略の柱に位置付けるソフトウェア開発環境。同社は2008年にノルウェーのTrolltechを買収する形で「Qtソフトウェア」を傘下に収めた。「Qt」の最大の特徴は、クロスプラットフォームの開発環境であることだ。C++で記述したアプリケーションのソースコードを変更することなく、組込機器やパソコンなどへの横展開が可能になる。

 ノキアでは、Qtをモバイルでも展開し、Linux系プラットフォームの「MeeGo」や、携帯電話向けプラットフォームとして普及するSymbian OSなどにも対応させている。

 ノキアのダニエル・キールベルグ氏は、組込産業や自動車、医療、オートメーション分野などあらゆる場所で「Qt」が利用されているとし、「潜水艦、宇宙、電車、飛行機、ハリウッドのスタジオでも使われている」と説明した。今年4月には、ノキアとしても初のQt統合モデルとなる「Nokia N8」を発表しており、同氏は今後のノキアの端末ではQtが統合され、ノキアのアプリ配信市場「Ovi Store」においてアプリが配信されると述べた。

 この1年の大きなトピックとして、最新バージョンとなる「Qt 4.7」を紹介したキールベルグ氏。同バージョンではパフォーマンスが向上し、ユーザーインターフェイス(UI)もよりリッチなものが使えるようになったと話した。中でもJavaScriptに似た記述言語を追加した点は大きいという。C++の開発者だけでなく、HTML系のUIデザイナーも取り込めるためだ。

 キールベルグ氏はノキアのCTOの言葉を紹介し、開発者にアプリケーション開発に乗り出してもらうためには、「格好良くてセクシーなデバイスを提供するということに尽きる」と語った。同氏はさらに、「Qtであれば1つプラットフォームで開発すれば、次のプラットフォームでも開発しやすくなる。ノキアは今後Qtへの投資を拡大し、パフォーマンスや安定性を向上させていく」などと話した。

 このほか、2011年初期に提供予定の「Qt QUICK」についても言及された。「QUICK」は、「Qt User Interface Creation Kit」の略称で、キールベルグ氏は、「よりリッチでオシャレなものを開発できる」と説明し、デザイナーがアイデアを練り、プログラマーが実現可能なものかを思案し、最終的に開発を進めるかどうか判断する、そこまでにかかる時間が圧倒的に短縮され、「C++の開発者とデザイナーが肩を並べて仕事ができる」と語った。

 また、Symbian OSとMeeGoへの対応について言及し、「1億7000万台のSymbian端末のうち、アクティブなユーザーは4500万人になる。QtはMeeGoのベースとなるもので、完全にオープンなイノベーション。制限は全くなく、さまざまなコンポーネントを取り込めるリッチなエコシステムだ」と説明した。

 ダビッド・アルムストロム氏はQtについて、「大切なことは1つ、Qtはクロスプラットフォームであるということだ。開発者はQtのAPIにさえ注目していればいい」などと語った。

 Qtは、WindowsやMac OS、Linux OSのほか、Windows CEやWindows Mobile、MeeGo、Symbian OSなどをサポートしている。アルムストロム氏は、現状でサポートしていないプラットフォームについてもコミュニティでサポートしていると説明した。今後、テレビなどのホーム&エンターテイメント分野に注力する方向とした。また、現在、携帯電話向けの要望が強くあるとし、モバイル分野にも投資を増やしていくと語った。


 



(津田 啓夢)

2010/12/10 13:51