ドコモの2010年度接続料、前年度より大幅値下げ


改定後の接続料

 NTTドコモは、2010年度に適用する接続料を改定し、総務大臣へ届け出た。認可されれば2010年4月1日に遡って適用される。

 接続料(アクセスチャージ)は、A社の携帯電話からB社の携帯電話へ電話したときに、A社からB社へ支払われる料金。“B社の設備を利用してB社ユーザーへ電話した”ことで、ネットワーク使用にかかるコストとして各社間でやり取りされている。国内の通信事業者では、NTTドコモとKDDIが一定以上のシェアを持ち、二種通信事業者(第二種指定電気通信設備)となることから、接続料を公表する義務がある。

 改定を受けた接続料は、区域内(ドコモの各地域支社の営業区域内)の場合で1秒0.087円(前年度比35.6%減)、区域外で1秒0.105円(同32.7%減)となった。また2008年度から公開されているパケット通信の接続料(MVNO向け)については、レイヤー3接続が10Mbpsあたり月額888万9321円(同29.3%減)、レイヤー2接続で10Mbpsあたり月額745万8418円(同20.6%減)となった。

 過去の下げ幅(区域内)を見ると、2001年度~2009年度は2.6%~15.6%となっており、今回の下げ幅は過去最大と言える。

接続料(音声)の概要接続料(パケット)の概要

大幅値下げの背景

 今回発表された接続料は、総務省が昨年3月に示した「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」にのっとったものとなる。ドコモでは「ガイドライン適用元年」として、24日午前、報道関係者向け説明会を開催し、同社企画調整室長の古川 浩司氏から接続料の概要や値下げの背景などの説明が行われた。

 接続料を公表する二種通信事業者は現在、NTTドコモとKDDIの2社で、NTTドコモに対しては一部の行いを制限する“行為規制”が適用されている。一方、二種指定ではないドコモ・KDDI以外の事業者については、公開義務はないものの、他社との接続料設定や会計公表などについては、二種事業者と同じように振る舞うことが望ましい、とされている。

接続に関する規制2010年度から新ガイドラインが適用される
ドコモが公開している明細表接続会計も透明化が図られる

 総務省が示したガイドラインでは、これまで各社独自だった接続料の算定方法が定義づけられた。また、接続料の会計についても示す必要はなかった(ドコモは明細作成義務があった)が、ガイドラインでは会計制度が導入され、透明性向上がはかられている。

 音声通話の場合、ガイドラインで示された接続料算定方法は「ネットワークコスト+適正利潤」÷「総通話時間」となる。これまでのネットワークコストには営業費が含まれていたが、ガイドラインでは3種類の営業費(周波数再編周知にかかる営業費など)を除き、原則営業費は含めないことになった。この営業費除外が今回の値下げ幅のうち20%程度を占め、最も大きな削減要因となった。今回の説明会では、2010年度に適用される接続料の具体的な数値も示され、音声通話ではネットワークコスト1兆390億円のうち、接続料の算定対象となったのは6020億円であり、発着総通話時間の約8兆秒で割って(除算して)算出されたという。

 なお、2011年3月に公布・施行予定の「二種指定接続会計規則」により、接続料に関する会計はさらに透明化が図られる。

接続料算定式ドコモが示した今回の接続料算定にかかる費用

ユーザー料金の値下げには直結しないが一要因

接続料について語るドコモの古川氏

 今回ドコモでは、他社からの要望もあり、例年より1カ月ほど早く接続料の改定を発表した。ドコモの発表時点では、他社の動向は不明だが、少なくとも各社の決算に反映されることから、年度末までには各社の改定の方向も決まる見込み。ただし、公表義務があるのはドコモとKDDIのみ。接続料に関する議論が一時盛んに行われた2009年春頃には、ソフトバンクモバイルなども2006年度~2008年度までの接続料を公開したこともあるが、規制対象外の事業者が接続料を明示するかどうかは不明だ。

 ドコモでは、かねてより全ての携帯電話事業者が接続料を公開するよう求めてきた。今回の質疑応答で他社との収支状況を尋ねられた古川氏は、ドコモが他社との接続料のやり取りで全体的に支出超過(他社への支払いが多い状況)であり、その中でもソフトバンクモバイルについては100数十億円の支払超過になっていると語った。

 接続料は、エンドユーザーが直接支払うものではなく、ユーザー向け料金を設定する際の要因の1つに過ぎない。これまでの流れでは、家族間通話の無料化や期間拘束型割引の導入などで、通話料やパケット通信料を含めたユーザー料金は徐々に値下がりしているが、ドコモでは「接続料の値下げ=ユーザー料金の値下げとはならない。ユーザー料金の値下げは他社との競争環境なども影響する」と説明する。

 ただ、古川氏は「透明性のあるルールの下、コストとして算定する接続料で、各社の差が発生すれば合理的なものであり、ドコモとしてとかく言うものではない。ただ、コストを遙かに超える接続料が設定されていればコスト以上のものを支払うことになる。(コスト以上の接続料にしている)そうした事業者は料金の値下げがやりやすくなる一方、我々は値下げがやりにくくなる。コストが下がる一方、本来下げられた部分まで値下げできなくなる、というのが格差問題の本質。もし接続料の格差で利潤を得る事業者がいるとすれば、その事業者が値下げすることになり、公正競争の論点で適正かどうか、論点になる」と語り、公平な競争環境の確保に対して懸念を示した。こうした説明や示された資料から、ソフトバンクモバイルにも接続料の開示を迫る格好となっている。

料金水準の変化海外との接続料比較。米国はぶつ切り設定のため、比較対象に含まれていない
海外との携帯利用料(ユーザー料金)比較。総務省がまとめたもので、各国とも最安プランで比較各社の比較

 



(関口 聖)

2011/1/24 14:19