NEC埼玉の工場を大学生が見学、学生らしい鋭い質問も


NEC埼玉 代表取締役社長の九鬼隆訓氏

 NEC埼玉は、これまでに地域貢献などのテーマの下で小学生を対象にした工場見学を実施してきたが、今回、初めて大学生の工場見学の受け入れを行った。3月8日、千葉工業大学でデザインを学ぶ学生数十名がNEC埼玉を訪れた。

 学生を出迎えたNEC埼玉 代表取締役社長の九鬼隆訓氏らは、同社のプロフィールや同社で製造されている携帯電話の開発コンセプトなどを説明。その中で、九鬼氏は「当初は無人工場を目指していたが、携帯電話はライフサイクルが短く、同じものを何年も作るわけではなく、大型設備による生産には限界があった。機械に頼るところと人間が中心になってものづくりを行うところとを上手く機能分担を図った。人間中心によるものづくりは、助け合いと日々の改善により、品質面、生産面で大きな成果が生まれた」と語った。

 一通り説明を聞いた後、一行は工場内を見学。タイミング的には3月初旬ということで、工場内では、3月15日発売のNECカシオ初のAndroid端末「MEDIAS N-04C」の製造が急ピッチで進められていた。普段はなかなか目にする機会が無い携帯電話の製造現場を、学生たちは興味深そうに眺めて、担当者の解説に耳を傾けていた。

 引率した千葉工業大学 工学部 デザイン科学科 教授の佐藤弘喜氏は、工場見学後、「目まぐるしく変化する市場に対応するためには、機械による自動化よりも人間が対応する方が効率的だという発想は非常に新鮮だった」と感想を述べた。同氏は、「今はデザインというとコンピュータ上でバーチャルに行うことが多くなっているが、モノづくりの現場でどういう風に製品が作られているのかを見ておかないと本物のデザインは行えない」と、工場見学を実施した趣旨を語った。

 生産ラインを見学した学生たちは、その後、別室で実際に「N-06B」を組み立てる体験をし、関係者と意見交換を行った。「これだけ携帯電話が高性能化してくると、ネタ切れにならないか?」「スマートフォンはどれも同じに見えるが、iPhoneと違うビジョンはあるのか?」など、学生らしいストレートな質問に関係者がタジタジになる場面も見られた。

 意見交換会に出席したNECカシオ クリエイティブスタジオ チーフクリエイティブディレクターの佐藤敏明氏は、「学生に期待することは?」との問いかけに対し、「自宅で食べるカレーが一番おいしい、と思っていては、タイやインドのカレーのおいしさが理解できない。人の意見に耳を傾け、人の立場に立って解釈することが大事。他人に『いいよね』と言ってもらうのがデザイナーという仕事の醍醐味」と述べ、将来を担うデザイナーの卵たちにエールをおくっていた。

N-06Bの組み立てセット従業員のサポートの下、学生がN-06Bを組み立てる



(湯野 康隆)

2011/3/15 11:00