サムスン、「GALAXY S II」など最新モデルを日本で披露


 サムスンテレコムジャパンは、サムスン電子がグローバルモデルとして海外で発表しているモデルを、日本国内の記者向けに披露した。担当者からは、同社の戦略、今後の見通しなども語られた。

 サムスン電子は、Androidを搭載するGALAXYシリーズとして、2月に「GALAXY S II」「GALAXY Tab 10.1」を発表、3月23日には「GALAXY Tab 8.9」もラインナップに追加している。加えて、Android端末ではハイエンドモデルだけでなく、ミドルクラスの製品も拡充されている。Android端末についてはいずれも発売前の製品だが、日本国内に実機が持ち込まれ、記者向けに公開された。

2010年は2億8000万台を出荷

 登壇したサムスンテレコムジャパン 端末営業部 部長の呉昌珉(オウ チャンミン)氏はまず、グローバルのモバイル市場におけるサムスンの実績を紹介した。携帯電話の販売台数は2010年に2億8000万台を超えており、右肩上がりで販売台数が伸びている様子を示す。呉氏は「3億を突破したかった」と、目標よりも少なかったと明かす一方、「第1四半期の販売数が第2四半期より多い年は、何かがある年」と、「GALAXY S」など大ヒットモデルが登場した年の傾向を分析した。

 呉氏はマーケットシェアについても言及し、調査機関のデータをもとに、サムスンのシェアが2007年を基点に大きく伸びている様子をアピール。ライバルともいえるAppleについては「最初に端末を発売してから1年でシェアが1%を超えた。これは携帯ビジネスの歴史に残る数字」と評価し、iPhoneの爆発的なヒットを讃えた。

 スマートフォンに限定した場合の市場シェアについては、呉氏は「フィーチャーフォンも手がけている会社は、(上位5社では)ノキアとサムスンしかいない。フィーチャーフォンの市場をどう見ているかによって変わった。もちろん、まだ変化の最中だが、サムスンはスマートフォンの登場で“世界が変わった”と考え、GALAXY Sを投入した」と説明し、スマートフォンに注力したことで、シェア拡大を図れたとした。なお、「GALAXY S」は毎月100万台ペースで売れており、すでに1200万台が出荷されているという。呉氏は「日本では120万台ぐらい売れてもいい」と自信を見せた。

サムスンテレコムジャパン 端末営業部 部長の呉昌珉(オウ チャンミン)氏サムスンの携帯電話販売台数
市場シェアの推移スマートフォンだけで比較した市場シェア

 

技術、製品、マーケティング

 そうしたサムスンの実績を支える基本的な戦略については、呉氏は3つのポイントで説明する。1つ目は、サムスンとして基礎技術を持っていること、2つ目は、基礎技術を基に魅力的に映る製品を作ること、3つ目は、それを伝えるマーケティングを持っていること、と解説。基礎技術では有機ELのSuperAMOLEDや独自プラットフォームの「bada」、半導体技術などを挙げたほか、サムスンAppsのアプリダウンロード数も1億件を突破したことを明らかにした。

 同氏は、独自プラットフォームの「bada」を搭載した端末「Wave」を紹介したほか、Android端末のGALAXYシリーズについても、これまでのハイエンドモデルの路線を拡大し、ミドルクラスとして発売する端末も紹介。3000万台を販売したというフィーチャーフォンの「Star」や、日本市場のカラー展開にヒントを得たという、同じくフィーチャーフォンの「Corby」にも言及した。フィーチャーフォンではタフネスモデルもラインナップしているサムスンだが、同氏は「スマートフォンでもこの世界は来るだろう」と語り、今後さまざまな種類のハードウェアが登場するとの見方を示した。

 マーケティング戦略については、昨今の大規模な発表イベントを「Unpacked」と題して演出したり、オリンピックや世界陸上などの世界規模のイベントのパートナーとなっている様子を紹介し、ユーザー参加型のマーケティングは日本でも実施しているとした。

自社の技術でSuper AMOLEDを開発サムスン独自のプラットフォーム「bada」
半導体部門がCPUなども担当「サムスン Apps」や「Hub」シリーズはユーザーをサポートするコンテンツへの取り組み

 

「GALAXY S II」は1.2GHz駆動に仕様変更

 最新モデルの中でも注目集めるスマートフォン「GALAXY S II」については、「GALAXY Sの後継機というより、進化したプレミアムカテゴリーという位置付け」と、より高性能になっていることをアピール。コントラスト比が約15万:1という進化した「Super AMOLED Plus」を新たに搭載するほか、2月の発表時には1GHz駆動とされていたデュアルコアCPUが、1.2GHz駆動に改められたことも明らかにされた。

 また、通信方式は、グローバルモデルでは下り最大21MbpsのHSPA+までサポートされ、バッテリーは1650mAhと、GALAXY Sの1500mAhよりさらに大容量化されたバッテリーが搭載されるという。

 Android 3.0を搭載する「GALAXY Tab 10.1」についても触れられ、「数字以上に軽く感じる」と10.1型タブレットで問題になる重量にも言及。「CPUは1.2GHz駆動になるのではないかと期待している」と、さらに改良される可能性を示唆した。

「日本のユーザーに新しい体験をしてもらいたい」

 呉氏は日本市場での展開について「なぜ日本でビジネスを続けるのかよく聞かれるが、理由はひとつ、日本のユーザーに新しい体験をしてもらいたいから。例えばSuper AMOLED、デュアルコアCPUなど。それを体験してもらうのが我々(サムスンテレコムジャパン)のミッション」と語る。

 「GALAXY Sは日本で発売してからまだ半年も経っていない。販売方法が変わり、以前から販売しているスマートフォンは高くなったような印象を受ける。また、(他社の)いい端末も出てきている」と、GALAXY Sの勢いに直近では当初より陰りがあることを認める同氏だが、「グローバルではAndroidはiPhoneよりもメジャーなプラットフォームになっており、日本でもGALAXY Sは満足度の高い端末として認めてもらっている」と、集まった記者に「GALAXY S」をアピールしていた。

GALAXY SのOSアップグレードを準備

 質疑応答では今後のOSアップグレードについて聞かれると、「OSのアップグレードには応えないといけない。(キャリアに)確認してもらうプロセスも必要だが、4月には準備できる」とし、GALAXY SのOSのアップグレードの準備を行っているとした。

 コンテンツを提供する方針について聞かれた呉氏は、「原則として、本業に注力したい。ユーザーに満足してもらうモノを作る会社。コンテンツは本業ではない。コンテンツを本業としてやっていく会社を、サポートするような貢献が現在のスタンス」と説明し、あくまで製品開発に注力していく方針を示した。

 「GALAXY S II」の発売前のスペックアップや、「GALAXY Tab 10.1」が2月と3月で仕様が変わっている点などについても質問が及んだ。「GALAXY S II」については、ハードは同じとして、「いいものを選んだ」と、選別によるクロックアップを示唆している。一方、「GALAXY Tab 10.1」の仕様変更については、「何でも早くするフレキシビリティと端末開発期間の短さ」と同社の特徴を語った上で、「(マーケティングにおいて)ユーザー層は当初の6から18、24とセグメントがどんどん細分化されている。それぞれの規模も大きい。それぞれのニーズに合うものは何か? ユニバーサルなものは無い」と、ターゲット設定の難しさを滲ませ、「GALAXY Tab 10.1」の仕様が今後も変更される可能性があるとした。

 東日本大震災の後とあって、緊急地震速報などへの対応も聞かれた。同氏は、自身や家族が東京で地震を体験した様子を語った上で、「端末でそれ(不安や危険といったもの)を取り除けるのなら、断る会社はないと思う。(チップの搭載かアプリかなど)どういう方法かは分からないが、やるだろう」との見方を示し、何らかの対応を行う方針を明らかにした。

 

会場に展示された端末

GALAXY S II
GALAXY Tab 10.1
GALAXY AceGALAXY Gio
GALAXY FitGALAXY mini
Nexus Sbada搭載端末「Wave II」
 Windows Phone 7搭載端末「Omnia 7」
「GALAXY Tab 8.9」は端末イメージのみだった海外で販売されているサムスン製の外部バッテリーパック
GALAXY Tab用の周辺機器

 




(太田 亮三)

2011/4/7 20:24