グリー、スマートフォン向けサービスの米OpenFeintを買収


グリーの田中氏

 グリーは、米国子会社を通じて、約7500万ユーザーを抱えるスマートフォン向けソーシャルゲームプラットフォーム事業者の米OpenFeintを買収すると発表した。契約および買収の実行は4月22日付けで行われ、買収金額は1億400万ドル(約85.7億円)となる。

 OpenFeintは、スマートフォン向けゲームにソーシャル要素を追加できるプラットフォーム「OpenFeint」を展開している。利用することで、コミュニティ機能やランキング機能、アチーブメント機能(プレイ結果に応じてアイテムなどを付与する機能)などをゲームに追加でき、約1万9000社に利用され、対応ゲームは5000以上となる。現在、約7500万人に利用されているとのことで、これまでに北米の大手通信事業者であるAT&T、Verizon Wirelessとの協力関係を築いている。

 グリーでは、これまでに中国市場でサービスを展開する事業者のTencent(テンセント)、東南アジアなどで展開するモバイルSNSのmig33(ミグサーティスリー)と業務提携しており、今回のOpenFeint買収で北米市場と欧州市場にも足がかりを得た格好となる。OpenFeintとは、互いにノウハウを交換し、「プラットフォーム事業の国際展開促進」「国内ソーシャルゲームの海外進出/海外ソーシャルゲームの国内展開」を目指す。

OpenFeint買収の目的OpenFeint会社概要
OpenFeintが手がける事業北米キャリアとのパートナーシップ

 

ゲームとプラットフォームで成長図る

FacebookやZyngaといった大手事業者との差違

 同社では22日、都内で記者会見を開催し、代表取締役社長の田中良和氏から買収の概要や目的が、取締役 執行役員CFO 国際事業本部長で米国子会社CEOの青柳直樹氏から買収スキームなどの説明が行われた。

 田中氏は、北米市場中心にスマートフォンでの市場が成長しているとの現状を踏まえた上で、「国際展開する上で、FacebookやZyngaといった大手事業者が存在する中、当社の強みはSNS、ゲーム、プラットフォーム、モバイルという4つの要素全てを手がけていること。一気通貫でやっているプレーヤーはユニークな存在ではないか。日本で成功させてきたモデルを世界でも再現すべく展開する」と語る。

グリーの国際展開方針市場動向

 同氏は、「日本のゲームも持って行くし、海外ゲームの国内外の展開も行う。ソーシャルゲーム事業とプラットフォームの両方で進めたい」と買収を通じた今後の目標を掲げた。まずはプラットフォームの連携を進めるとのことで、日本のゲーム開発事業者にOpenFeintのプラットフォームを紹介し、世界規模での収益化を進める。この国内ゲームの海外進出について、会見後に囲み取材に応えた青柳氏は、ゲーム開発事業者をきめ細かく支援することが要諦になるとの認識を示し、OpenFeintとゲーム開発事業者のミーティングなどでは、OpenFeint側にも日本人担当者を用意するといった取り組みを行うとした。

 田中氏は、日本で「GREE」が抱える2500万ユーザーに加えて、今回の買収で約7500万ユーザーに利用されることから、同社だけで1億人のユーザーを抱えることになり「エポックメイキングなこと」(田中氏)としたほか、Tencentの6億5000万ユーザー、mig33の4700万ユーザーをあわせ、約8億人に利用されるプラットフォームと、その規模感をアピールした。田中氏は、最後に「日本発で中国、欧州、米国の市場を通じて世界のトッププレーヤーを目指す」と目標を掲げた。また、海外でGREEブランドを展開するかどうか、囲み取材において青柳氏は「重要なのはプラットフォームの成長。北米において現時点ではOpenFeintのほうが知られていることもあり、ブランドを変えること自体は目的ではない」と述べた。

買収と提携によりリーチできるユーザー規模国内ゲームの海外進出、海外ゲームの輸入などを展開

 OpenFeintは、これまでディー・エヌ・エー(DeNA)が出資し、提携してきた企業。ただしDeNAでは昨年10月、ソーシャルゲーム事業を展開する米ngmocoを買収していた。質疑応答で、DeNAが出資していたことについて問われると、青柳氏は「旧株主にDeNAさんもいたが、個別の企業についてコメントする立場にはない」と回答。会見後の囲み取材で、これまでのOpenFeintが行ってきた実績が影響したかどうか問うたところ、同氏は「これまでのことは一切聞いていない。OpenFeintは、CEOや開発陣は若いが、キャリアとの折衝に年配のスタッフを配するなど、質実剛健。その社風が当社とマッチするかどうか考え、今回の経緯に至った」と回答した。

青柳氏

 また買収交渉においては、グリーとOpenFeintでは、スピードを最重視したとのことで、長々と交渉を重ねて将来の機会を逸することを恐れたという。株式を全て買い取ることが今回の大きな特徴とした青柳氏は、単なるビジネス上の取引先ではなく100%買収だからこそ、OpenFeint側の全てを信頼して今後のビジネスに取り組めるとも語ったほか、米国では20人程度の規模の事業者が次々とソーシャルゲーム事業で収益かを実現させているとして、米国スマートフォン市場への期待感を示した。

 このほかグリーとKDDIでは、米国のベンチャーキャピタルであるDCMが設立するファンド「A-Fund,LP」へ2500万ドル(約20.5億円)を出資すると発表した。同ファンドは計1億ドルを運用する予定で、Android関連アプリやプラットフォーム、ハードウェア開発などのベンチャー企業など、Androidに特化したファンドとのこと。22日の会見では、ファンドへの出資については特に触れられなかった。

 

(関口 聖)

2011/4/22 14:57