イー・アクセス決算会見、2011年度の新機種投入計画も


イー・アクセスのガン氏

 イー・アクセスは、2010年度の決算を発表した。12日には同社において会見が開催され、代表取締役社長のエリック・ガン氏から説明が行われた。

 ガン氏は冒頭、東日本大震災の被災者に向けて「お見舞い申し上げます」としたほか、同社への影響についても説明した。被災した設備は、携帯電話基地局が878局、DSL収容局が164局で、どちらも全体の8%程度とのこと。震災当日の通信量は、通常の10倍に上昇したが、通信規制はかけられず、通話接続率は新最高、99.5%を維持した。

 4月14日には全ての被災設備が復旧(携帯基地局は11日に全復旧)し、業績への影響額は約1億2000万円となる。ガン氏は「我々は、通信規制を一切実施せず、震災から約1カ月で、全て復旧できた」と語った。また、同社内での人的被害はなかったとのこと。

東日本大震災による影響BCP関連でモバイルデータ通信の需要が高まっているという

 今後については、2011年度と2012年度の2年間で、震災対策費用が約20億円かかるという。停電時の対策として、ガン氏は「最低3時間稼働するよう予備電源が求められているが、今後の対策で予備電源は6時間以上、最長で24時間以上のサービスを提供できるようにする」とした。震災対策費用は、こうしたバッテリー設備などに用いられる。ただ、その詳細については、今回の会見では明らかにされていない。

 震災を受けた今後の市場動向として、法人におけるBCP(事業継続計画)の需要が拡大するとの見通しも示され、モバイルデータ通信サービスの引き合いが高まるとの予測も示された。

 

業績と2011年度の計画

 今回の決算の特徴として、ガン氏からは「当期純利益が過去最高」「モバイル事業の契約者数が300万人突破」「DC-HSDPA方式によるEMOBILE G4の開始」が挙げられた。

 2010年度には、イー・モバイルとイー・アクセスの経営統合が行われたことから、その実績はイー・アクセスの業績9カ月分、イー・モバイルの業績12カ月分を連結したものとなる。連結ベースでの売上高は1815.4億円、営業利益が149.7億円となった。

 イー・モバイルの事業だけで見ると、売上高が1426.4億円(前年度は1136.1億円)、営業利益が26.3億円(前年度は60.9億円の赤字)となった。

連結ベースの業績前々年度、前年度との比較

 

2011年度の計画

オペレーションデータ

 2011年度のトピックとしては、EBITDAが前年比20%増の670億円、当期純利益が170億円以上で過去最高の更新が挙げられた。そしてLTE導入に向けた準備が開始される。売上高は2000億円、営業利益が300億円を目指す。設備投資は、昨年実績の408億円から、4.5%下がって390億円になる見込み。

 契約者数は、2011年3月時点で約312万件だが、今年度末には385万件を目指す。昨年スタートしたDC-HSDPA方式によるサービス「EMOBILE G4」については、エリア拡大をはかる。人口カバー率は、今年3月時点で約40%だが、1年後には60%に達する見込みで、ガン氏は70%の達成も視野に入っているとする。その一方で、LTEの導入に向けた準備も進めるとのことだが、詳細は明らかにされていない。

 このほか、通話定額サービスの拡大、FMCサービスの拡大、データ通信サービスプランの簡素化を図る。FMCについては、加入者10万件を目指す。
 2年前にはネットブックブームで沸いた同社だが、2009年度で1.05%、2010年度で1.38%と、解約が増加傾向にある。ガン氏は、2011年度に解約のピークを迎えるとして、約1.45%に達する見込みとした。顧客獲得費用については2010年度の約2万5000円から、約2万2000円になるとされている。

 データ通信市場におけるイー・モバイルの競争力について尋ねられると、ガン氏はEMOBILE G4では、地下鉄などもカバーしており、エリアおよびスピードで他社より優位とアピールした。代表取締役会長の千本 倖生氏は、「エリックの言葉に言うことはない。この領域において自信を持って他社と競争していける」と述べた。

2011年度の予定今年度は73万件の増加を目指す
今後の計画。LTEの導入準備を進めるFMCの拡大も

 

新製品の投入計画

 人気商品の1つである「Pocket WiFi」については、高速化したバージョンについても紹介された。発売時期は未定ながら、EMOBILE G4対応版を開発中とのことで、下り最大42Mbpsで通信できるモバイルWi-Fiルーターとして投入される。

 Android端末では、2010年度に2機種発売されたところだが、2011年度には5機種以上のスマートフォンとタブレット型パソコンを発表する予定とのこと。こちらも発売時期は明らかにされていない。音声端末のARPUは、これまで1600円程度だったが、昨年度投入したAndroid端末のARPUは5300円とのことで、収益増に繋がるスマートフォンを強化する方針だ。なお、モバイル事業全体のARPUは、2010年度時点では3160円(前年度から180円減)で、2011年度は約2900円へ減少すると予測されている。

Pocket WiFiのG4対応版もスマートフォンも拡充

 



(関口 聖)

2011/5/12 18:42