夏のドコモは「選べる、使える、楽しめるスマートフォン」


ドコモの山田氏
CMキャラクターである俳優の渡辺謙や堀北真希らも登場した

 NTTドコモの2011年夏モデル発表会は、冒頭、東日本大震災を受けたドコモの災害対応と、今後の災害対策について説明する場所となった。NTTドコモの代表取締役社長である山田隆持氏は、「一日も早い復興を祈りたい」と被災地へのお見舞いの言葉を述べた。

 被災地のドコモの通信設備は、4月末までにほぼ復旧しており、東北三県の307基地局のうち290局が復旧し、震災以前とほぼ同じ状況になっているという。未だ復旧していない基地局も5月中にも復旧させる予定。福島原発の30km圏内については、68局のうち51局が復旧しているという。

 また、未曾有の大災害を教訓とし、ドコモは新たに10項目の災害対策を実施する。より広範囲をカバーする基地局の「大ゾーン化」や基地局の無停電化、バッテリーの24時間化含め、2011年度の対策費は235億円にのぼるという。さらに、音声メッセージをパケットで送信するサービスなども2011年中にも提供する予定。

 なお、震災の影響は、携帯電話の供給体制にも影響が出ている。山田氏によると影響は軽微だが、7月までは部品が枯渇している状況という。このため、夏モデルのうち4機種が当初の発売予定より2週間程度遅れて販売されることになる。7月以降は供給体制も回復する見通しだ。



スマートフォンが普及期に

 夏のドコモは、山田氏が「選べる、使える、楽しめるスマートフォン」と紹介するように、バラエティ豊かな9モデルのスマートフォンを中心に、フィーチャーフォン12モデル、Xi対応のモバイルWi-Fiルーター2モデル、FOMAデータ通信端末1モデルの合計24モデルがラインナップされる。

 ドコモは4月より、これまでスマートフォンとフィーチャーフォンで分断されていた企画開発チームを統合し、スマートフォンを軸に展開する体制へと布陣を変更した。夏のスマートフォンでは、Android 2.3が8モデル、下り最大14MbpsのFOMAハイスピード対応が6モデル、Wi-Fiテザリング対応モデルが7モデルと充実しており、さらに、おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信機能といったこれまでフィーチャーフォンで受け入れられてきたニーズのある機能もサポートされている。

 山田氏が「これまでスマートフォンは特別な存在だった」と語るように、ドコモの夏モデルは、スマートフォンをより普及層にアプローチする形をとった。端末の機能や仕様はもちろん、iモード端末を利用するユーザーの乗り換えを意識し、「iチャネル」や「メロディコール」「Gガイド番組表」などのスマートフォン対応もこの夏から本格化する。

 緊急地震速報にあたる「エリアメール」がスマートフォンでもサポートされ、2011年冬モデル以降の端末では標準対応となる見込み。このほか、冬モデルより、iモードコンテンツの認証課金をスマートフォンでも取り入れる。iモード端末でMyメニュー登録していたコンテンツが、スマートフォンでも継続利用できるようになる。

 また、ドコモの独自開発によるユーザーインターフェイス「docomo palette UI」も夏モデルで数機種に搭載し、冬モデル以降、標準搭載していく。

 フィーチャーフォンやiモード端末向けのサービスについては、ドコモのプロダクト部長である丸山誠治氏より説明があった。丸山氏は、動画サービスのiモーションが夏モデル以降、従来の最大10MBから最大50MBに拡張すると発表した。また、コンテンツをパッケージ化してダウンロードする機能などもサポートされた。

 このほか山田氏は、グローバルモデルのスマートフォンを求めるユーザーは、スマートフォンをパソコンのように使いたいユーザーであるとした。夏モデルはより一般層を意識し、iモード端末でできたことをスマートフォンにも求めるユーザーに、より強く響くものと言えそうだ。

囲み取材でのやり取り

囲み取材に応える山田社長

 会見後、発表会場で山田社長に対する囲み取材が行われ、震災後、初の製品発表会になったことについて問われた同氏は「震災後、最初にやらなければいけなかったのは復旧作業で、ほぼ復旧した。これからは新商品を展開することが、経済の活性化に繋がるのではないか、ということで開催した。このタイミングは良かったと思う」と述べた。また、部材調達に影響は出るものの、スマートフォンの販売台数への影響はないとの見通しが示された。

 テザリングについては「今後、テザリングはタブレット端末を含め、全ての機種に入れていきたい。そのあたりの通信量増加には対応していく予定で、その対策の1つがLTEとなる」とした。料金面については、山田氏は「税抜きでテザリングの料金は9900円。iモード通信が4200円、データ定額が5700円で、合算した金額。スマートフォンのパケット通信は5700円で、データ定額をあわせると1万円を超えるが、それより少し安いのが現状。今後はユーザーの要望を見て検討したい」とした。

 スマートフォンの普及にあわせ、ウイルスの増加も懸念されるところだが、山田氏は「スマートフォンもパソコンの一種ということで、しっかりやっていきたい」とした上で、エンドユーザー向けにソリューションを提供するか、と言う問いに、「ええ」と述べた。続けて紛失時の対策は法人導入における課題の1つであり、それに対する取り組みとして、遠隔操作でのサービス(スマートフォン遠隔制御サービス)が4月から投入されたことに触れた。

 グーグルが5月初旬、今後のAndroidのバージョンアップにういてメーカーや通信事業者と協力していく方針を示したことに対し、ドコモとして協力するかどうか問われると、同社担当者は「ドコモとして検討中」とコメント。また、GALAXY SとGALAXY TabにおいてAndroid 2.3へのバージョンアップ提供時期は、6月頃になるという。

 SIMロック解除関連では、対応機種が「らくらくホン ベーシック3」だけということで、利用者がまだ20名程度で、「SIMロック解除が動作するのか確認する方が多いようだ」と述べ、夏モデルでSIMロック解除機能が導入されていることから今後ある程度利用される可能性があるとしながらも、需要は予測していないとした。またmicroSIMカードの販売数は、4月下旬の決算発表時に約1000枚だったとしていたが、今回の会見では約2000枚に達したことが明らかにされた。

 スマートフォンの自動通信について問われた山田氏は「ドコモのスマートフォンも、アプリケーションが背後で動作して、同様の事象が発生する。そこでユーザーには定額制の契約を案内している。さまざまなアプリを使うユーザーには、一律型のパケ・ホーダイ フラットの契約を推奨している」と説明し、ユーザーへの案内を徹底する姿勢を見せた。

 ソニーの情報漏洩に関して、ドコモのセキュリティ体制を問われた同氏は、「当社には顧客データベースなどがある。外部とは矛と盾の関係で、完璧、100%大丈夫とは言えないが、かなり注力している。(夏モデルの製品情報が発表前にインターネット上へ出ていたことについて問われると)それも一種の情報漏洩。かなりの部分が正確だったが、正確ではないところもあった。そういうところも含め、しっかりやっていきたい」と語っていた。



 




(関口 聖/津田 啓夢)

2011/5/16 17:45