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ドコモ、ソフトバンクの接続料に対し紛争処理委にあっせん申請


ドコモの古川氏

 NTTドコモは、ソフトバンクモバイルが提案した2010年度適用相互接続料水準について、電気通信事業紛争処理委員会へあっせん申請した。

相互接続料とガイドライン

 相互接続料とは、携帯電話事業者間でやりとりされる通話関連の費用のことで、アクセスチャージなどとも呼ばれる。たとえば、A社のユーザーがB社のユーザーの携帯電話へ電話をかけた場合、A社の通信網からB社の通信網に接続した形になるため、A社はB社に対し接続料を支払う。逆に、B社のユーザーがA社のユーザーに電話すれば、A社がB社に対して接続料を支払う。接続料はAB両社の間で取り決められるが、接続料設定の根拠となる算定基準は各社独自のもので、ドコモは透明性を確保するよう求めていた。

 総務省は2010年3月、通信各社からヒアリングなどを実施した上で、接続料の算定方法を定義するガイドラインを公表した。音声通話の接続料は、「ネットワークコスト+適正な利潤」÷「総通話時間」であると明文化され、これまでネットワークコストに含まれていた営業費用が原則、コストに含まれないことになった。

 なお、このガイドラインは「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」という名前の通り、二種指定の通信事業者にあたるドコモとKDDIに適用される。一定のシェアを確保する両社には接続料の公開が義務付けられており、他社との競争力確保の観点から最大手のドコモについては行為規制措置もとられている。ガイドラインでは、公開義務のないソフトバンクやイー・モバイル(イー・アクセス)、ウィルコムらについても、接続料設定や会計などを公表することが「望ましい」とされている。公開は義務化されておらず、「望ましい」には拘束力は伴わない。

ソフトバンクに情報開示を要求



 ドコモでは、ガイドライン元年となった2010年度の接続料について、2011年1月、ガイドラインに則した形として接続料を公表した。また、公開義務はないもののソフトバンクモバイルも3月4日、総務省のガイドラインに則した形として相互接続料を公表した。

 今回、ドコモが電気通信事業紛争処理委員会にあっせん申請したのは、ソフトバンクがガイドラインに則したとする接続料について、本当にガイドラインに則した形であるのか検証するために情報開示を求めるため。最大手であるドコモが紛争処理委員会に自ら申請するのは初となる。

 なお、紛争処理委員会への「あっせん」は、紛争処理としては比較的に穏便な手法と言える。両社の合意形成を目的とし、委員会の立ち会いの下で協議を行う。委員会側が判断を下すものではなく、ソフトバンク側が協議を拒否できる。ただしドコモでは、ソフトバンク側が協議自体を拒否することはないと見ており、仮に拒否した場合「合意形成を図る意志がないということになる」としている。

 なお、2007年以降、NTTドコモとソフトバンクの間では、両社の主張に乖離があり、接続料に関して合意に達してはいないという。合意には至っていないが、接続料の精算は毎年度実施されている。

ドコモの主張

 ドコモでは、ソフトバンクとへの接続料支払いに格差があるとし、その格差は1.46倍の支出超過となっていると主張。ドコモの調査では、約290億円の支出超過となっており、ソフトバンクが公表したガイドラインに則した接続料を受け入れた場合でも150億円の支出超過になるという。

 ドコモでは、事業者間の協議では水掛け論となり、解決が図りがたいとしてあっせん申請し、接続料格差を検証するための情報開示を求めていく。また、このタイミングでのあっせん申請には、ガイドライン適用の初年度に情報公開を求め、しっかりと対応していくことでガイドラインの形骸化を防ぐ意図もあるようだ。

 ドコモでは、ソフトバンクモバイルが提案した相互接続料は対前年度25.3%の低減となる一方で、ドコモとの格差は対前年度の1.26倍から1.46倍に拡大すると主張している。また、前述の通り収支への影響は290億円もしくは150億円の支出超過としており、ソフトバンクの提示した接続料の妥当性を検証する上で、情報開示が必要と主張している。経緯を説明したドコモの企画調整室長の古川浩司氏は、「情報が開示されて検証した結果、妥当であるなら1.46倍でもいい」と話している。

 なお、ドコモの試算では、2010年度の相互接続料の水準を高めに算定しても、ソフトバンクが提示した1分当たりの接続料7.62円は高すぎるとし、5.1〜5.6円程度と推計している。ちなみにこの推計方法をKDDIに適用した場合、6.0〜6.3円となり、KDDIの提示値である1分間6.24円と乖離がないとしている。

ソフトバンク主張に反論

 さらに古川氏は、ソフトバンクの主張に対する反論も行った。

 ガイドラインでは、音声通話の接続料は「ネットワークコスト+適正な利潤」÷「総通話時間」とされた。ソフトバンクはかねてより、2GHzでエリア構築すると800MHzよりも1.7倍のコストがかかるとしているが、古川氏は2GHzか800MHz以前に、ソフトバンクの設備投資コストはドコモの約1/4で、1ユーザーあたりの設備投資額についても、ドコモを1とした場合にソフトバンクの投資額は0.65〜0.81倍と低いと主張する。投資額が少ないにも関わらず接続料の格差が1.46倍となるのは不自然というわけだ。

 また、2GHz対と800MHz対では周波数特性に違いがあるのは事実としても、都市部は高密度なエリア設計が必要になるため違いはほぼなく、地方において800MHzが若干有利であるとする。ドコモでは、それを踏まえた設備コスト差を約8%程度と試算している。

 加えて、海外では日本以上の相互接続料格差があるとソフトバンクが主張しているとし、EU加盟27カ国とノルウェーにおいてはほぼ格差が0%であると反論した。

 このほか、ソフトバンクの通話料についても触れ、通話料は各社が自由に設定できると前置きした上で、ドコモとKDDIは自網内および他網内で同一の1分間28円であるのに対し、ソフトバンクは相互接続料の安い他社宛通話料を1分40円と高く設定し、自網内は0円としている点を紹介した。

 古川氏は、ドコモがユーザーに対して料金低減施策を実施しており、2010年度は3000億円程度をユーザーに還元していると話す。また、接続料が低減されればコスト削減効果をユーザーに還元する方針も示した。

 なお、ソフトバンクの接続料が下がれば、特定事業者だけ接続料を下げることが不当差別にあたるため、必然的にKDDI側など他社がソフトバンクに支払う接続料も下がるという。


 




(津田 啓夢)

2011/5/18 13:27