NECカシオが夏モデルを披露、グループ資産を使った「総力戦」へ


 NECカシオモバイルコミュニケーションズは、携帯電話の夏モデルを紹介する発表会を開催した。NTTドコモ、KDDIから発表された新端末が紹介されたほか、NECカシオとしての事業戦略が語られた。

NECカシオモバイルコミュニケーションズ 取締役執行役員専務の大石健樹氏(左)、代表取締役 執行役員社長の田村義晴氏(右)今夏のラインナップ

代表取締役 執行役員社長の田村義晴氏

 最初に登壇したのは、5月9日に社長に就任したばかりの、NECカシオ 代表取締役 執行役員社長の田村義晴氏。田村氏は、「スマートフォン市場は急速に拡大しており、我々の成長の鍵と認識している。当面はAndroidに集中し、LTEなども(速度が求められる)スマートフォンと相性が良く、力を入れていきたい。Androidはオープン性が高く、いかに早く開発していくか、自らの競争力を伸ばしていくかが重要」と、スマートフォン時代における同社の基本的な姿勢を語った。

 また、「NECの持っているアセット(資産)は重要だ」と語り、小型化、薄型化、それらを基にしたデザイン性などで地位を確立してきたとした上で、「それだけではいけない。総力戦だ。カシオ計算機、日立製作所もユニークな技術を持っている。兄弟事業体のタブレット型端末やパソコン、BIGLOBE、ネットワーク技術など、総力戦で商品に変えていきたい」と述べ、グループと連携して商品展開を行っていく姿勢を明らかにした。

 田村氏からはまた、「私の思い」と断った上で、「モノの価値×コトの価値」という方針が示された。これは、機能やスペックによる魅力を追求する一方で、「なにができるのか」をしっかりと作っていくことが重要というもの。この2つは「独立して提供するのではなく、共鳴するもので、結果的に最高のユーザー体験を提供する」という。

 小型化、軽量化、耐衝撃性能といった技術については、「こういった技術を使い、余裕を作った上で、新たな基軸を作る」と、新たな展開の基礎になるものと位置づける。また、「LTEを適用して、総力として魅力ある商品を提供していきたい」と新しい通信方式も商品の魅力のひとつとして取り込んでいく構えをみせた。

 NECカシオが設立された当初から、グローバル展開がひとつの柱として掲げられてきたが、田村氏は「(グローバルメーカーの端末が日本に)入ってきているということは、逆に出ていきやすくなっているということ。Verizonを皮切りに、そのほかの北米の事業者についても、今年中に形にしたい。欧州の事業者にも展開していきたい」と、北米ではVerizon以外のキャリアにも提供し、欧州のキャリアにも拡大していく方針を示した。海外展開ではさらに、2012年度にはアジア太平洋などのオープン市場にも展開する方針を明らかにした。

 グローバル展開を含めた開発力については、海外の特定の地域に特化して開発を行うのではなく、“グローバルモデル”を開発した上で派生させていく方針で、これらは、JDM(Joint Development Manufacturer)やオフショア(委託)開発により価格対応力を確保し「できるだけスタンダードで、軽く、早く開発していく」という。一方で、「コストは苦労している」とこれまではスケールメリットで不利だったとし、「JDMなどの副産物として、トータルの数を確保していきたい」とした。

 こうした、グローバル市場での展開を含めた上で、2010年度のNECカシオの端末出荷台数は「予想より少なかった」という440万台となった。2011年度は740万台の出荷を見込み、2012年度は1200万台を目標とする。1200万台のうち、国内は700万台、海外は500万台を見込む。田村氏は、「数年後には、グローバルベンダーの仲間入りを果たしたいと考えている」と語り、国内、海外ともに積極的に拡大を図っていく方針を示した。

海外展開や開発体制について2012年度に1200万台の販売を目指す

 

2つのスマートフォンは「自信作」

取締役執行役員専務の大石健樹氏

 NECカシオモバイルコミュニケーションズ 取締役執行役員専務の大石健樹氏からは、具体的なラインナップの紹介が行われた。大石氏は、機能やスペックにおいて「モビリティ」「機能美」「セーフティ」という3つの軸を紹介し、これにアプリやブランドといった前述の「コトの価値」を加えていくという、大枠の方針を示す。

 同社が夏モデルとしてラインナップするのは、スマートフォンではNTTドコモの「MEDIAS WP N-06C」、auの「G'zOne IS11CA」、米Verizonの「G'zOne COMMANDO」の3モデル。「MEDIAS WP N-06C」では、防水最薄の7.9mmのボディに加え、ゴリラガラスや金属とモールドのハイブリッド構造、サイドのアルミフレームといった、強度設計にも配慮されている様子が紹介された。また、MEDIA WELLNESS、Days・Topics、MEDIAS NAVIといったアプリやサービスが、スペック以外の魅力として解説された。

 「G'zOne IS11CA」については、「(G'zOne COMMANDOとして)北米からスタートしたが、非常に出足は好調。防水、防塵、耐衝撃性能は、歴代モデルと同等を実現した」と、シリーズとして共通のスペックを確保している様子を示し、「一般のスマートフォンに負けず劣らずの性能に加えて、G'zOneの性能」と、充実した仕様に自信を示す。アプリでは、「世界観として、地球を感じるセンサーアプリを搭載し、山の方向や距離が分かったり、潮位計などもある。これらをG'zGEARとして設定した」と、MEDIAS同様に中身についても注力しているとした。


「MEDIAS WP N-06C」「G'zOne IS11CA」

 

 フィーチャーフォンの夏モデルは、NTTドコモの「CA-01C」「N-05C」、auの「CA007」がラインナップされている。「CA-01C」はカシオとして初めてのドコモから発売される端末で、1630万画素のカメラを搭載した“EXILIMケータイ”。NEC製端末でおなじみの、起動0.5秒、撮影間隔0.6秒の「瞬撮」「クイックシャッター」といった機能も搭載されている。「N-05C」は防水・防塵性能を実現したスライド型の端末で、タッチパネルに対応した操作に注力されているのも特徴のひとつになっている。「CA007」はカシオの「ハートクラフト思想」を表したモデルで、ユーザーから評価の高い「アデリーペンギン」がアプリなどで搭載されるほか、テンキーの押しやすさなど「ちょうど使いやすい」をキーワードにしている。

 発表会ではこのほか、「MEDIAS WP N-06C」のイメージキャラクターにモデルの長谷川潤が起用されたことを受け、テレビCMが披露されたほか、長谷川潤からビデオメッセージも届けられた。長谷川潤は「スマートフォンなのに防水」と薄型で防水性能を実現しているところに注目している様子で、「MEDIAS女子部などのコンテンツや使いかたガイドもあるので、スマートフォンが初めての女性にも」とアピールしていた。

 

Androidのアップデートには「追随していく」

 質疑応答の時間には、グローバル市場で展開されるラインナップについて聞かれた。田村氏は、「当面はスリム、タフネス、あるいはこれらの進化系」とし、スマートフォンを基本として展開していくとした。

 Androidのバージョンアップ体制については、「追随していく」(大石氏)と明言する一方、先日北米で開催されたGoogleのイベントで明らかにされた、18カ月間のOSアップデートを保証する枠組みにメーカーとして参加するかどうかについては、「スタディ中で、コメントは控えたい」とするにとどまった。

 スマートフォンが拡大する中で、フィーチャーフォンの今後の位置付けも問われた。田村氏は、「国内については、100%スマートフォンになるかというと、ならないと思っている。2割なのか、3割なのか分からないが、ユーザーが求めるレンジのフィーチャーフォンを出していきたい。現在のフィーチャーフォンは機能的には必要十分か、それを超えてきている。時代に沿って、プラスアルファ、マイナスアルファを含めて、既存の資産を使いまわしながら提供していきたい」と、フィーチャーフォンに取り組む基本的な姿勢を示した。なお、今後投入される機種(数)については、「8割ぐらいがスマートフォン。軸足はそうしていきたい」と、少なくとも開発体制はスマートフォンが中心になるとの見方を示した。


 

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(太田 亮三)

2011/5/18 20:10