ドコモ、WIRELESS JAPAN出展ブースの見どころを解説


 NTTドコモは、5月25日から東京ビッグサイトで開催される「WIRELESS JAPAN 2011」の出展内容のうち、研究開発分野の展示を事前に解説する説明会を開催した。

 同社の展示ブースでは、16日に発表された夏モデルのスマートフォン・携帯電話や関連サービスに加えて、さまざまな研究開発分野の成果も展示・紹介される。20日の事前説明会では、一部の研究開発分野の展示について解説が行われた。

 同社が研究開発分野の展示で中心に据えているのは、「LTE-Advanced伝送実験」「通訳電話とネットワーククラウドの進化」「マルチバンド電力増幅器」の3つ。「LTE-Advanced伝送実験」については装置の搬入の都合から事前説明会でのデモは省かれた。また、「マルチバンド電力増幅器」は20日にニュースリリースで概要が発表されている。このほか事前説明会では、「おくだけ充電」「スマートタップによる省エネサポートサービス」についても解説された。

「通訳電話」とネットワーククラウドの進化

「通訳電話」は通訳内容がテキストでも表示される

 テレコムサービスの将来像のひとつとして挙げる「通訳電話」は、通話をする2者の中間に音声認識と機械翻訳・発声システムを介在させることで、通話でありながら、通訳を介しているかのような翻訳のサービスを実現するというもの。2月にスペインで開催された「Mobile World Congress 2011」のドコモブースで展示されていたが、認識・翻訳精度を高め、国内では初めての披露となる。

 同サービスは、異なる言語を使う2者が、通訳のようなサービスを介して会話できるというもの。音声を認識すると、相手の言語に翻訳され、音声で両者に聞こえるように伝えられる。また、端末の画面には認識した日本語と、翻訳後の英語といったように、文字でも認識・翻訳結果を確認できる。

 基本的には現在の3Gネットワークでも動作するものとして開発されているが、LTEの通話サービス(VoLTE)が実現すると、より低遅延で、関連情報を付加したようなサービスも提供できるという。

 サービス提供時期は未定。同サービスでは音声の「認識」と言語の「翻訳」という2つの変換要素を抱えているが、特に音声の認識率は、会話の内容や分野によって認識率が変わり、重要度も大きく違うという。例えば、日常会話なら許容できるような音声認識のミスでも、ビジネス上の会話では致命的な誤解を生む可能性も考えられる。このため、サービスを提供できる基準の設定が難しい様子で、何らかの形で試験的なサービスを実施し、幅広いユーザーからのフィードバックを集めたいとのことだった。

通訳電話は通話サービスに“通訳”を組み込む

 

 「ネットワーククラウドの進化」は、前述の通訳会話とも一部で関連する技術で、通話をする2者が、クラウドを通じてスケジュールの調整を行ったり、出かけ先の情報を共有できるというもの。通話中に、音声認識を元にした指示を行うことで画面上にさまざまな情報を呼び出すことが可能。デモでは、「スケジュールを調整したい」と音声で指示を出すと、2者の端末に保存されたスケジュールをクラウド上で照合した上で、両者ともに空いている時間帯をピックアップして、両者の端末に表示するといったデモが行われていた。これらの操作は、通話しながら可能になっている。

 また、会話の内容は文字情報として記録することもでき、それを履歴として活用することで、コンシェルジュのようなリコメンドサービスも可能になるという。

「ネットワーククラウドの進化」では、通話中に音声による指示で操作が可能スケジュールのすりあわせがクラウド上で行われ、両者ともに空いている時間帯が、両者の端末に表示された。店舗の検索や通常のキーワード検索にも対応できる

 

小型マルチバンド電力増幅器

 20日にニュースリリースでも発表されている「小型のマルチバンド電力増幅器」は、携帯電話のグローバル化に貢献するという無線回路技術。従来であれば、対応する周波数の数だけ搭載していた増幅器(パワーアンプ)を、ひとつにまとめ、切り替えることで対応できるようにしたもの。これにより、対応する周波数が増えても実装面を大きくせずに済むという。ハードウェアとして開発されており、2.5GHz用の増幅器にスイッチを取り付けることで、各周波数に対応する性能を取り出せるようになっている。

 Xiで利用する1.5GHz帯や、欧州のLTEで利用される2.5GHz帯を含め、700MHz~2.5GHzの範囲で9種類の帯域を切り替え可能。GSM、W-CDMA、LTEの3つのモードがサポートされる。性能は現在のシングルバンド増幅器と同等で、ルネサス テクノロジが試作したチップは約6×8mmに収まっている。現在は、対応周波数ごとに3×3mmのチップを搭載していることから、複数の周波数帯に対応する場合は小型化が見込める。2013年の完成を目指しており、その後に端末メーカーに提供される。

マルチバンド電力増幅器の試作基板マルチバンド電力増幅器の概要
デモでは、スイッチで周波数帯を切り替えられるようになっている試作したチップ(製造はルネサスが担当)は約6×8mmというサイズを実現

 

おくだけ充電

 おくだけ充電は、16日に発表された夏モデルで対応端末も明らかにされた、無接点の充電装置。対応する携帯電話などの機器を、指定のエリアに載せるだけで充電できる。携帯電話(スマートフォン)のパッケージに同梱されるモデルのほか、別売りのオプションとして販売されるモデルが展示された。別売りモデルには三洋のエネループブランドのロゴが加えられている。

 充電する際の出力は、装置の仕様としては5V、1000mAまで出力できる。乗せる機器により出力が変わり、例えば対応するスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」ではUSBと同等の5V、500mA前後になる見込み。一方、おくだけ充電に対応する「ポケットチャージャー 02」は比較的大型の受電コイルを搭載することもあり、5V、1000mAで充電される。

 なお、おくだけ充電の装置は、タブレット型端末に対応したり、複数の端末を充電したりできるような、大きめのサイズも開発が検討されているという。おくだけ充電の仕組み自体は、今後ドコモの携帯電話・スマートフォンに広く搭載されていく見込み。

「おくだけ充電」に対応する「ワイヤレスチャージャー 01」。左は別売り版、右は端末同梱版おくだけで対応端末を充電できる。充電速度はUSBと同等
ポータブルバッテリーの「ポケットチャージャー 02」も充電できる

 

スマートタップによる省エネサポートサービス

ワイヤレス対応トランスレータとスマートタップ

 「スマートタップ」は、電源タップであるスマートタップと、無線で接続するユニット「ワイヤレス対応トランスレータ」を通じ、インターネット上で消費電力を確認したり、電源のオン・オフを制御できるというもの。スマートタップとトランスレータの間は無線規格で接続され、トランスレータにLANケーブルを接続することでインターネットからモニタリングが可能になる。

 スマートタップを利用することで、コンセント単位で電力を確認でき、料金の表示も可能。まずは、既存のマンションや一戸建てといった一般家庭向けに、電源タップ型の製品を検討しているという。

 デモでは、Webサイトを通じて電源タップの消費電力や電気料金を確認できる様子が確認できたほか、電源のオン・オフを制御できる仕組みも紹介された。

電源制御対応のスマートタップWebサイトから消費電力を確認できる
外出先でも確認可能実際に遠隔操作で電源オン・オフのデモも行われた

 




(太田 亮三)

2011/5/20 18:35