「Windows Phone」開発者イベント開催、最新UIも披露


 日本マイクロソフトは8日、都内で開発者向けイベント「Windows Phone Developer Day」を開催した。これまでのプラットフォームから刷新した「Windows Phone」では、ほぼ国内初と言える同イベントには、250名以上の開発者が参加した。

 

最新版「Mango」のUIを紹介

日本マイクロソフトの大場氏

 基調講演で登壇した同社執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場 章弘氏は、これまで社内事情もあって、日本市場について具体的な取り組みが紹介できなかったと述べ、今回のイベントで、日本語版「Windows Phone」についての今後の展開が紹介できるとして、プレゼンテーションを開始した。

 海外では発売済のWindows Phoneだが、その海外の状況に触れた大場氏は、これまでにマイクロソフトでは端末メーカーに対し、200万ライセンス以上を出荷したとコメント。また開発ツールは約150万ダウンロードを記録したとのことで、多くの開発者が参画している。また海外におけるユーザー側の反応を見ても、90%以上のユーザーがWindows Phoneを友人に勧める、として、満足度が高いとした。

 そのWindows Phoneの1つとして紹介されたのが、オリジナルユーザーインターフェイスの「Metro UI」だ。「地下鉄で行きたい場所へたどり着ける」、そうしたイメージをモチーフにした「Metro UI」は、タイル表示で他のユーザーの情報などが表示され、アプリケーションにもアクセスできる。このMetro UIで掲げられたコンセプトは、次のパソコン向けWindowsやXboxなどでも今後取り入れられるとのことで、Windows Phoneだけではなく、マイクロソフト全体にとって重要なインターフェイスと位置付けられる。

デザインコンセプト大場氏が端末を操作してデモ

 国内では、まだ多くのユーザーが触れていないWindows Phoneだが、これまで、そして今回のイベントで披露されたMetro UIは、追従性も良く、スムーズに操作できるような印象だ。機能面で見ると、ソーシャル機能を担う「People」、オフィス文書を扱える「Office」、画像を扱う「Picture」、ゲーム機能の「Games」、マルチメディアの「Music+Video」、そしてアプリ配信サービスである「Marketplace」と、6つの“ハブ(hub)”が中核に据えられる。

 基調講演では「People hub」のデモが披露された。従来のアドレス帳は、1人の知人に連絡する、といった使い方になるところだが、MangoのPeople hubで、新たに追加されたグループ機能では、よく連絡を取るユーザーの情報を参照して、そのユーザーがアップロードした写真などの情報もチェックしたり、HotmailやOutlookに登録した複数の友人へ一度に連絡を取ったりできる。写真関連では、人物が写っている写真に対し、顔認識機能を使って、写真に人物データをタグ付けして、ソーシャルで共有することもできる。こうした機能により、大場氏は「どこで誰と会っていたかわかってしまうかも」と冗談交じりに述べながら、新しい使い方ができると紹介した。

Internet Explorer 9を搭載Mangoで追加された点1500以上のAPIが利用できるとのこと滑らかな操作感ゲームアプリも
「パックマン」をプレイ。画面上で指を動かして操作。このアプリはSilverlightというPicture hubPicture hubタスク切り替えOffice

 Windows Phoneでは、インターネット体験も重視されており、WebブラウザとしてInternet Explorer 9を搭載し、HTML5をサポートする。また端末上でメモを作成するとクラウドサービスのSkyDriveへ保存でき、スマートフォンでありながら、パソコンと同じ体験ができることが追求されている。

 日本語化については、最新版の「Mango」では日本語がフルサポートされる。まだ全て完成したわけではないものの、鋭意開発が進められているとのこと。今回は開発者向けイベントとあって、準備が整い次第、今回来場した開発者に無償で実機が提供されることも明らかにされた。日本でWindows Phone搭載端末が発売される予定は、まだ正式に発表されていないが、Mangoで日本語がサポートされ、こうしたイベントが開催されたこと、実機が開発者に提供されることなどから、日本でもWindows Phoneが利用できる日はさほど遠くないと期待が高まるところだ。

コミュニケーション、アプリケーション、インターネットが重要と説くMangoではグループ機能が追加された

 

Windows向けアプリの開発者にとって親しみやすいWindows Phone

 今回のイベントでは、アプリ配信サービスのMarketplaceが紹介されたほか、テクニカルセッションでアプリ開発の秘訣などが案内された。

 Marketplaceでは、2万本以上のアプリケーションが既に用意されており、日本語版Mangoが出荷されるのと同時期に、Marketplaceも日本向けに展開される予定という。アプリのダウンロードはMarketplaceのみ、となっており、他のスマートフォンプラットフォームと比べると、アップルのApp Storeの仕組みに近い。開発者として登録してからアプリ配信に向けてMarketplaceへ登録すると審査が行われ、著作権侵害などについてチェックされてから配信できるようになるとのこと。

 開発者にとっては1500を越えるAPIが用意され、開発環境としてもVisual Studioが利用でき、言語としてはC#、Visual Basicを利用できる。アプリは、Silverlight(バージョン4相当)と、XNA(Xboxなどで利用されるグラフィック環境)に対応し、たとえばSilverlightのアプリは、パソコン/Windows Phoneのどちらも同じコードで動作する。

 今回は、開発ツールのデモも行われ、加速度センサーをエミュレートする様子が示された。エミュレーター上の端末を傾け、アプリの挙動が確認できるとのことで、実機なしでアプリ開発が進められる。位置情報を利用するアプリの開発も同様で、屋外にいるかのように、エミュレーター上で検証できる。こうした仕組みはMangoで取り入れられたものだ。実機を使う場合は、あらかじめ開発者登録すれば、最大3台まで、USB経由でパソコンからアプリをWindows Phoneへ転送し、検証できる。

Expression Blendでボタンを操作してデザイン同社のクラウドサービスを紹介するキャラ、クラウディアを用いたアプリを即興で開発。ちなみに担当者は「クラウドガール」第1巻のWindows Phone向けアプリを開発中とのことで、「Azure」という単語を使っていたため、マイクロソフトから認証を得たかどうか確認するため、既に一度、審査に落ちたとのこと

 開発には技術情報が最も重要とする大場氏は、技術情報の日本語化に注力する方針を示した。同氏は「日本の開発者がいかに簡単にMarketplaceにアプリを登録できるか」と述べ、今後さらに改善をはかるとしたほか、トレーニングやセミナーなども多く開催して、今後1年間で5000名以上の開発者と情報を共有したいとした。こうした取り組みの1つとして、8日から開発者向けコミュニティ「Windows Phone Arch」が6月8日より稼働した。本イベント終盤に行われたパネルディスカッションでは、Archに参加する開発者が登場し、Windows関連の開発環境や知識が活かせること、昨年と比べ開発者登録などの手続きがスムーズになってきたこと、Metro UIのメリットなどが語られた。

 



(関口 聖)

2011/6/8 20:58