Yahoo!JAPANとローソン、スマートフォンと店舗を連携へ


ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏(左)とローソン代表取締役社長 CEOの新浪剛史氏(右)

 ヤフーとローソンは、インターネット上のプラットフォームとローソンの実店舗などを連携させ、共同で新たなサービスを提供する。6月9日には都内で記者向けに発表会が開催され、両社の今後の取り組みが説明された。このほか、ローソンはPontaをおサイフケータイに対応させたサービスも発表している。

 ヤフーは、Yahoo!JAPANを通じてさまざまなインターネットサービスを展開しており、最近ではスマートフォン向けサービスを拡充し、スマートフォンからのアクセスも大幅に伸びている。一方、ローソンは約1万店舗を全国に展開しており、共通ポイントプラグラム「Ponta」に参画し、購買データの分析やユーザーの要望に合った商品展開なども拡充している。


 今回の連携により、地域の施設・店舗情報を検索できる「Yahoo!ロコ」では6月より順次、ローソンの店舗が地図上で確認できるようになり、店舗近くのユーザーにはお得な情報を配信するといったことも行われる。

 8月からは、「Yahoo!ショッピング」で人気の商品がローソンの実店舗でも取り扱われるといった施策が実施される。人気のお取り寄せ商品が実際に店舗で販売され、当初はナチュラルローソンから開始される。第1弾は東北物産展で、売上の一部は被災地支援のために寄付される。

 店頭端末の「Loppi」(ロッピー)は、インターネット上のオンラインショッピングモールに業務内容を拡大し、この中で「Yahoo!ショッピング」の商品も取り扱われる。LoppiはPontaの会員が利用でき、ポイントが貯まり、2012年前半にはPontaポイントが使えるようになる見込み。ここでは、ローソンが選んだ商品をおすすめし、返品可能とする「ローソンあんしん保証」も導入される。

 スマートフォンの分野では、12月に「Loppi」専用のスマートフォンアプリが無料で配信される予定。時間や場所を反映させた特典の配信なども行われる。2012年の春には、会員情報の履歴や購買履歴を活用したキャンペーンの案内など、おすすめ情報も提供される予定。店舗でPontaを利用して商品を購入したり、Loppi上で買い物をしたりすると、「からあげクン クーポン」などといった店舗で引き換えができる特典クーポンの配信なども検討されている。

 なおローソンは、ヤフーとの連携とは直接関係が無いものの、「ローソンモバイル Ponta」のサービスを7月15日より開始することも9日に発表している。Pontaカードの子カードとして、おサイフケータイ対応の端末に会員証をダウンロードでき、端末をレジにかざすことでポイントを貯めたり使ったりすることが可能。7月15日からはフィーチャーフォン(従来の携帯電話)向けに提供され、11月1日からはドコモのスマートフォン向けに提供される。KDDI、ソフトバンクのスマートフォン向けに提供される時期は未定。


 

今後はスマートフォンと「生活圏情報」がカギ

ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏(左)

 9日に開催された発表会で、ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏は、Eコマース市場が7兆円市場なのに対し、「リアル市場」は133.5兆円という数字を示し、「少しでも大きくしようと頑張っているが、まだまだ差がある」と、市場規模に大きな開きがあると指摘。一方で、インターネットユーザーは約9500万人と人口に対してかなりの割合になっているとし、さらにYahoo!JAPANの月間ユニークユーザーが5230万人と大規模になっていることで、今回の連携によりリアル市場に展開を拡大していく意向を示す。

 井上氏はまた、今回の連携においてスマートフォンをターゲットにしていると明言する。「スマートフォンは今後拡大していくだろう。現状の伸びを見ても、圧倒的に伸びている。今回の提携で使いたいのはスマートフォン・タブレット型端末で、位置情報などを活用しながら、店舗と新しいことができるのではないか」と連携に期待を寄せる。

 さらに井上氏は、「2つ目の注力点は生活圏」とし、「インターネットの使われ方は、これからは生活圏(の情報)に変わってくるというのが我々の見立て」とネットサービスの今後を予測。Yahoo!JAPANの会員や「Yahoo!ショッピング」のストア、ローソンの会員や店舗が合わさることで、「それぞれの会員規模が合わさり、より付加価値の高いサービスが提供できる」とした。

EC市場とリアル市場の比較スマートフォン版「Yahoo!トップ」は2009年12月から17倍に
今後は地域生活圏情報に注力していくという大きな構想で始めたという「Yahoo!ロコ」
スマートフォンと地域生活圏情報が重要になるとする両社があわさることで大規模な会員数と店舗数が実現

 

POS脱却、ユーザー個別のデータを分析し「欲しい商品を開発」

ローソン代表取締役社長 CEOの新浪剛史氏(右)

 ローソン代表取締役社長 CEOの新浪剛史氏は、「お客様起点ではリアルもバーチャルも無い。(ヤフーと)一緒にやれることがあるのではないかという意識から始めた」と連携の背景を語り、両社合計の会員数は約6000万人、店舗数は約3万店になるとして、「欲しい物が、欲しい時に、欲しい所にある生活を実現していきたい」と意気込みを述べる。

 同氏は、Pontaの会員数について現在の3200万人から2012年度に4000万人を目指すとしたほか、原料から店舗展開内容までローソンが責任を持って進めるという「ローソン型CRM」を解説。「POSからの脱却」を掲げ、ユーザーの個別データを分析して商品を作り、「プレミアムロールケーキ」といったヒット商品も生まれているとした。

 「店舗に提供する商品も、地域に合った商品を出すのか、データの分析を進めることで精度を高めていく。ここにYahoo!ショッピングを合わせて、満足度を上げていく。今までバーチャルと言われていた世界がリアルに近づき、壁が無くなる」と新浪氏は連携の効果を説明したほか、ユーザーに対しては、「データをフィードバックして商品のレベルアップに使える。欲しい商品が開発されて、Eコマースや店舗に並ぶことが価値を高める。世界に例の無いCRMだ」と語り、ポイント還元などにとどまらない、店と客の新たな関係づくりに自信を見せた。

 一方で新浪氏は、「コンビニはいろんなところにあるが、150兆円規模の小売・外食市場の5%の規模でしかない。これを、今後で10年で倍の15兆円規模、10%に成長できると考えている」と市場はまだまだ成長の余地があると指摘する。「その中で大きな役割を占めるのが今回の提携。スマートフォンやタブレット型端末も、新しい端末が出てくることでよりユーザーに近くなり、もっと成長できる」と新浪氏は今後の端末面での進化にも触れながら、「リアル店舗だけでなく、お客様のデータを分析し、ITをフル活用する最重要戦略パートナーとしてヤフーを考えている」と、今後の成長を賭けた大きな施策としてヤフーと連携していく姿勢を示した。

Yahoo!JAPANとローソンで日本最大級のサービスを目指すローソンのPOS脱却の要となる「Ponta」
ローソン型CRMは製造業にまでさかのぼる個人の購買データを集積して分析したデータは商品開発にフィードバック
「Loppi」はネット上のショッピングモールに。Yahoo!ショッピングのストアも品質や返品対応も
コンビニ市場はまだ伸びるというヤフーを最重要戦略パートナーとした

 

(太田 亮三)

2011/6/9 20:57