国内最大級のAndroid関連イベント、都内で開催


 日本Androidの会によるイベント「Android Bazaar and Conference 2011 Summer」が7月17日、早稲田大学で開催された。キャリアやメーカーなどの企業からコミュニティまで大小の展示が並ぶ「Bazaar」と、同時16トラックにもなる講演やワークショプの「Conference」からなる、コミュニティベースでありながらAndroidでは国内最大ともなるイベントだ。今回は「頑張れ日本、頑張れAndroid!!」というキャッチコピーを掲げ、4200人以上の参加登録を集めた。

 カンファレンスのうち、大隈講堂で開催された「基調講演・招待講演」のトラックをレポートする。

Android Bazaar and Conference 2011 Summerが早稲田大学で開催。基調講演は大隈講堂で行われた。公式サイトや案内板にも、青空を背に大隈講堂の上に立つAndroidマスコットキャラ(通称ドロイド君)のイラストが使われた

NTTドコモ山下氏「人間のすべての活動や情報が集約される」

NTTドコモの山下哲也氏。極限まで文字を省いたシンプルなスライドをバックに、すべてがつながる社会を論じた

 午後の基調講演トラックでは、NTTドコモとKDDIによる基調講演が行われた。

 NTTドコモ スマートコミュニケーションサービス部 コンテンツ推進室 コンテンツ支援担当部長の山下哲也氏は、極限まで文字を省いたシンプルなスライドをバックに、スマートフォンやクラウドがもたらす「すべてがつながる社会」について論じた。また、日経BP社主催の東北復興Androidコンテスト「A3 Together」についても紹介した。

 山下氏は、スマートフォンなどによって、人類史上初めて「すべてがつながる」社会が来ると語り、キーワードとして「共進化」「競創」「デザイン」の3つを提示した。

 「すべてがつながる」の1つ目は「“物”がつながる」。情報をデジタルで扱うことがあたりまえになってきたことによるものだ。山下氏は新聞のデジタル化やTVのインターネットをとりあげ、「インターネットに乗せただけで、いまひとつピリッとしない」という。また、双方向や複合メディアの取り組みもなされているが「やはり、うまくいかない」と語る。同氏によれば「それはネットではすでに通過した」機能だからだ。

 “物”がつながる例として、山下氏は、節電の必要性が認識されることにより「ようやく冷蔵庫をインターネットにつなぐことに意味がある時代になった」と述べ、冷蔵庫がインターネットにつながって自律的に判断して動作する可能性を示唆した。また、電気自動車の位置などをトラッキングして交通や給電を最適化する試みにも触れた。

 山下氏は、こうして人間のすべての活動や情報が集約されることを元にいかに便利にするかが、次のメディアに必要とされていると主張。その基盤として、応用性と拡張性を持ちインターネットにつながるAndroidと、ビッグデータを処理するクラウドの重要性を語った。

 「すべてがつながる」の2つ目は「“人”がつながる」、いわゆるソーシャルだ。山下氏はTwitterを例に、承諾なしにみんなが瞬時につながる性質を取り上げ、「コミュニケーションの方法、範囲、速度、速度が変わる」と論じた。

 3つ目は「競創」。山下氏は「A.I.(人工知能)という言葉はすたれた。個人的にはこれからU.I.(Universal Intelligence)だと思っている」と述べ、スマートフォンで検索してその場で問題を解決することを例に、「つながる」ことによる思考様式の変化を論じた。

 山下氏は、教育現場でのタブレット利用について、テキストをデジタル化するだけではなく、生徒ごとに教育内容を変えたり世界中の最先端の論文を瞬時に参照できたりするなど、「思考様式が変わることを前提に考えないと、使えないものになってしまう」と論じた。同様に、医療分野においても、カルテを電子化するだけではなく、「つながる」ことによってどこでもカルテを参照し必要な機材と治療がわかってどこでも治療が受けられるようになることで寿命延長につながると述べた。

 さらに、「もうひとつ着目すること」として山下氏は、社会のさまざまなプロセスが変わること、それにともなう社会の「再デザイン」を論じ、「いままでの歴史でも、競争し協力して作り上げる“協創”“競創”が進化を駆動してきた。これがより加速し力強くなっていく」と語った。

 そのほか、日経BP社主催のAndroidコンテスト「A3 Together」が紹介された。東北の被災者支援や産業復興などのためのAndroidアプリやWebサービスを募集するもので、アイデアの部門も設けられている。NTTドコモを含む13社が協賛している。

 最後に山下氏は、J.F.ケネディーの就任演説から「Together」「Let's begin」という言葉を引用して講演を終えた。

KDDI畑瀬氏「アプリ開発者をバックアップする」

KDDI株式会社の畑瀬泰博氏。

 KDDI株式会社 パーソナルプロダクト企画部 Android企画グループの畑瀬泰博氏は、「スマートフォン(Android)が開発環境にもたらす変化と展望」と題して、同社のAndroidへの取り組みを、アプリ開発者支援を中心に紹介した。

 畑瀬氏は冒頭でスマートフォンとフィーチャーフォンのそれぞれの特徴を説明。そのうえで、違いは「進化と多様性」、変わらないものは「コミュニケーション」だとして、「スマートフォンはPCの延長ではなく、コミュニケーションをサポートするもの。TwitterやFacebookなど、これからもコミュニケーションが中心であり続ける」と語った。そして、KDDIの取り組みとして、これまで発売したAndroid端末を紹介した。

 続いて、Androidでのアプリビジネス全般の概況について語った。問題点として、まず、OSの進化が早くて開発者側が対応していくのが大変であることを提示。それに対して、秋以降、キャリアメールや決済機構などをKDDIがOEMにまとめて提供すると説明した。また、Android Marketの発達と売り上げ拡大を紹介し、同社でもキャリア決済「auかんたん決済」によりさらに売り上げが伸びていることを示したあと、現状の課題として、アプリが豊富すぎて探せないこと、良くも悪くもアプリの事前チェックがなくて悪意のアプリの可能性があること、説明が英語のアプリも多いことを挙げた。

 こうしたアプリビジネスへのKDDIの取り組みとして、畑瀬氏は、独自マーケットの「au one Market」、インキュベーション「KDDI ∞ Labo」、広告配信ネットワーク「mediba adネットワーク」の3つを紹介した。

 au one MarketはKDDIによる日本向けの独自マーケットだ。au one Marketの特徴として、レコメンドシステムやアプリケーションのライセンス管理、独自基準のアプリ検証サービスなどが紹介された。また、開発者支援として、アプリ内課金やEZwebからの移行支援、プロモーションなどが挙げられた。

 KDDI ∞ Laboは、アプリを開発するスタートアップ企業を支援するプログラム。6か月単位で年2回募集をかけ、現在、第1回の募集中だ。コミュニケーションスペースの提供や、サービス開発と起業の支援、セミナーの定期的な実施などのサポートがなされる。畑瀬氏は、ほかのインクベーションプログラムとの違いとして、VCではなくプラットフォームであるKDDIが主催すること、経営支援サービスを提供すること、個人でも参加可能なことなどを挙げた。

 mediba adネットワークは、KDDIの子会社である株式会社medibaの広告配信ネットワークで、複数のアプリやサイトに配信に広告を配信する。アプリではSDKを組み込むことで広告枠を設置でき、8月からiOSにも対応する予定。au one marketとmedibaを組み合わせたサービスなども紹介された。

 Androidのこれからについての予想も語られた。まず、Androidが普及フェーズに入ることにより、新しいものに比較的慎重で、新しさよりひねりの効いたものに反応する層に受け入れられるかもしれないと予測。また、Androidが携帯電話からTVやカーナビなどほかのデバイスに拡大するだろうと説明。さらに、流行りそうなアプリとして、デバイスと親和性の高いアプリ(テレビ+SNSやカーナビ+位置情報など)や、TVなどデバイス固有のAPIを活用したアプリなどを挙げた。

 最後に畑瀬氏は「KDDIはアプリ開発者の活動を全力でバックアップする」と語って講演を終えた。

「Androidは日本の産業の活性化に大きな意味を持ち得る」

 午前中には、日本Androidの会の会長である丸山不二夫氏による基調講演や、総務省の谷脇康彦氏による招待講演が行なわれたほか、GoogleのTim Bray氏によるビデオレターも上映された。

日本Androidの会 会長の丸山不二夫氏

 丸山不二夫氏は「がんばれ日本。がんばれAndroid」と題し、東日本大震災におけるインターネット上の活動と情報の共有を皮切りに、情報のオープン化やクラウドにまつわるさまざまなトピックについて縦横に論じた。

 丸山氏はまず、東日本大震災の被害について触れたあと、「分かったことは、コミュニケーションと情報共有が重要であること」と述べ、「現場では難しいことかもしれないが、災害の周辺部分や支援活動ではインターネットが大きな力になった」と語った。具体的には、帰宅難民がパニックにならなかった理由のひとつとしてTwitterでの情報共有があったと説明。さらに、Googleの「パーソンファインダー」や、ボランティアによる情報集約活動「sinsai.info」、MicrosoftやAmazonによる災害地サイトの勝手ミラーサイト、NHKのニュースのネット配信、南相馬市長によるYouTubeでの救援呼びかけといった支援活動を紹介した。

 また、Android開発者コミュニティでの取り組みとして、sinsai.infoクライアントや、福島原発の放射能情報への取り組み、公衆網が利用できない場所でも端末どうしのすれちがい通信によるバケツリレーで個人間をP2P通信する「Monac」などを紹介した。

 こうした災害支援の情報活動で分かったこととして、氏は、「共有すべき情報がオープンになっていない」と指摘。地震や津波の緊急警戒情報はネットでは正式公開されていないこと、避難場所の情報は各市町村だけが持っていること、避難者がネットを通じてTVをみることも許されていないことなどを挙げた。また、気象情報について、情報の提供先が行政機関や報道機関であり国民がいないこと、Webで公開された気象情報も再利用が禁止されていることなどを指摘し、災害時に足かせになると批判した。

 ここで話はAndroidのシェアに移った。スマートフォンのプラットフォーム別のシェアでAndroidが首位に立ったことや、2012年には50%になるというGartner予測を紹介。中でも日本市場は世界の動きより早いというデータを引きながら「Androidは日本の産業の活性化に大きな意味を持ち得る」「Androidでグローバルに躍進する可能性がある」と論じた。

 さらに、Androidの拡大に働いている力として、オープンソースと新しいネットワークメディアがあるとして、自由なコミュニケーションと自由な情報共有への志向と、それを支えるIT技術を取り挙げた。そして、従来メディアの低落と、人々の相互の関係性のネットワークにもとづくメディアがオープンな社会の理念になっていくだろうと論じた。

 続いて、IT技術のコンシューマ化についても論じた。現在ではITのメインターゲットが企業から個人に移り、多くの企業より家庭のほうがいいIT環境が整っているようになっていることを指摘。その中で企業がオープンな姿勢でクラウドやソーシャルの技術を取り入れていくことが生産性にもつながると主張した。さらに、オープンつながりで、Android+Kinnect+iPadというオープンな組み合わせて作られた亀ロボット「Auto Chasing Turtle」も紹介した。

 そのほか、最近の動向として、クーポン共同購入サービスにGoogleやFacebookなども参入しようとしていることを紹介。その理由として、Androidが消費者の行動追跡に最強のデバイスであること、そのプライバシーに対する消費者の懸念との折り合いとしてクーポンが一つの解となり得るからだと論じた。

 最後に丸山氏は、「GoogleやFacebookの次の世代のビジネスモデルを創出するのに日本には有利な環境がある」として「日本からの新サービスの創出を」と語って講演を終えた。

総務省 大臣官房 企画課長の谷脇康彦氏

 総務省 大臣官房 企画課長の谷脇康彦氏は「震災復興とICT」と題して、東日本大震災でのICT(IT)面での対策や、これからのICT政策について解説した。

 谷脇氏はまず、震災時の通信の輻輳と、その中でもパケット通信が通じたというデータを紹介。また、東北地方で電力が回復するにしたがって固定電話や携帯電話も回復していったデータも紹介した。

 続いて、震災で分かったこととして、紙のカルテや教科書などが流されたことによる「デジタル化の重要性」、デジタル化していたシステムの水没したことなどによる「クラウドなどを利用したバックアップの重要性」、津波警報がスピーカーで伝えられていたため寒くて窓を厳重に締めていると伝わらないことによる「的確な情報流通」などについて語った。

 ICTによる被災地の復興としては、「情報通信インフラの再構築」「産業復興」「被災住民への的確な情報提供」の3つが挙げられた。情報通信インフラの再構築としては、まず自治体のネットワークを復旧させることが重要であることや、警報などの防災ネットワークを複数の手段を使って作ること、電源整備などが紹介された。

 また、ICTによる産業復興としては、遠隔医療や、農業の支援、電子行政、自治体システムのクラウド化、電子カルテ、スマートグリッド、テレワークなどが挙げられた。電子カルテの必要性の例としては、高齢者が日頃飲んでいる薬の情報を持たずに逃げたため、改めて診察が必要になっているという。テレワークとしては、BCPの面と、被災地の雇用の面の2つがあると説明された。

 スマートグリッドについては、今までは一枚岩ではなかったが、震災以来は重要性が大きくなっていると語った。スマートグリッドを推進する上で必要とされることとして、プロトコルの標準化や、イベント情報の集中に耐えるネットワーク、サイバー攻撃への対策などを説明した。

 被災住民への的確な情報提供としては、心のケアや、インターネットでTV番組を流すための規制緩和、国の持っているデータを再利用できる形式で提供していくことが挙げられた。

 こうしたことも踏まえて、これからの官民情報連携基盤のビジョンも語られた。現状、「機関ごとに持っている情報の組み合わせやマッシュアップがまだ不十分」として、API化や再利用できるデータ形式の整備を課題とした。

 最後に谷脇氏は、モバイルを中心とするブロードバンド事業モデルの変化について語った。従来のキャリア中心の「垂直統合モデル1.0」から、iPhoneやAndroidのようなクラウド中心の「垂直統合モデル2.0」に移ってきているという。また、従来は自動車のように買ったときが価値が最大で、以下減っていく、モノ中心の「goods dominant logic」だったのが、現在ではスマートフォンのようにモノの上にサービスによる付加価値が乗っていき、サプライヤーとユーザーがいっしょに価値を作り出していく「service dominant logic」のモデルに移ってきていると論じた。

Tim Bray氏のビデオメッセージ。右はメッセージの日本語訳を読み上げた日本Androidの会の安生真氏

 Googleで開発支援を担当し著名開発者でもあるTim Bray氏は、ビデオメッセージで登場した。Androidは現在1億3500万台の端末があり毎日55万台がアクティベートされていること、Androidアプリの10億ダウンロードまで約20カ月かかったが、その次の10億は約5カ月とだんだん加速しており、いまでは60億のアプリがダウンロードされていることなど、Androidにまつわるさまざまな数字を紹介。そして、「Androidコミュニティに参加してくれてありがとうございます」と日本の開発者に向けて語った。

Instagramに見る“10年に一度の変化”

 そのほか、基調講演トラックでは、それぞれ特色のある講演が行われた。

グリー株式会社の伊藤直也氏。Instagramを主な題材に、今スマートフォンのサービスで何が起こっているかを、これまでのWebの進化を踏まえて語った

 グリー株式会社 メディア開発本部 ソーシャルメディア統括部長の伊藤直也氏は、「スマートフォンとウェブの今:10年に一度の変革期」という題で講演。「Web2.0」と呼ばれたサービスに取り組んで来た同氏が、かつてのWeb2.0時代をもたらした技術やインフラの進化と、その時点からさらに現代で進化していることを分析し、いまスマートフォン周辺で何が起こっているかを解説した。

 伊藤氏はiPhone向け写真共有サービス「Instagram」を例に、700万ユニークユーザーを集めるサービスが、4人だけで開発から運用までなされていると紹介して、「過去にない変化がいま起こっている」と語った。

 そして一度1990年代に遡り、Windows 95の登場やYahoo!を経て、2000年代前半の「Google」「ブログ」の2つのムーブメントを紹介。これらWeb2.0と呼ばれたものの背景に、サーバーの価格が劇的に下がりソフトウェアもLAMPと呼ばれる一式がオープンソースで手に入るようになった「cheap revolution」があったと語り、「個人でもサービスを作れるようになって、これまで見たこともないものが登場するようになった」と論じた。

 こうしたWeb2.0の群雄割拠がGoogle一人勝ちに近い形で収束したが、TwitterやFacebookなど次の世代が現れた。伊藤氏が指摘する要素として、1つ目は、氏も取り組んできたように、Googleの得意なコンピュータが全部処理する分野ではない、人の力とコミュニケーションを使った「ソーシャル」。2つ目は、日本でも以前から盛んなモバイルの進化と、それに伴うJavaScriptやHTML5、NoSQL DBなど技術トレンドの変化。3つ目は「クラウド」、特にHerokuやDotCloudなど「第2世代PasS」と呼ばれるクラウドサービスにより、「たくさんの人に使ってもらうためのプラットフォームが用意されている」こと。この3点をふまえてInstagramに話を戻し、「Webのまた新しい潮流が来ている。10年に一度の変化がやってきた」と語った。

GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏。実はこの日が48歳の誕生日で、講演直後には壇上にバースデーケーキも登場した

 GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏は、「Androidで夢は必ずかなう」と題して、自著「一冊の手帳で夢は必ずかなう」のエッセンスから、成功するための心得を語った。20才のころに「時間もない、金もない、希望もない」と自身で言う状態から、メモ帳に「日本で1番の青年実業家になりたい」という夢を書いて奮起したことを紹介。具体的には「やりたいことリストの作成」「夢・人生ピラミッドの作成」「未来年表の作成」という3つのアクションを経て、インターネット事業で株式上場までに成長したと解説し、「ビッグウェーブに乗ることができた。同じわくわく感がスマートフォンにある」と語った。

 また、GMOインターネットの現在の事業や重点分野についても紹介した。スマートフォン分野では、Android向けのゲームアプリマーケット「Gゲー」を紹介。現在150タイトルを突破し、米国・韓国法人を設立しての海外展開や、VIVID Runtimeによって複数のスマートフォンOSに対応するマルチ戦略などが語られた。

前グーグル日本法人名誉会長の村上憲郎氏。スマートグリッドの動向や、スマートグリッドにより家庭の消費電力を“買い取る”ネガワット取引制度などを解説した

 前グーグル日本法人名誉会長で村上憲郎事務所代表の村上憲郎氏は、「スマートグリッドが切り拓く新生スマートニッポン」として、スマートグリッドや電力供給の問題について論じた。氏はスマートグリッドを「すべての物がインターネットにつながるIOT(Internet Of Things)」としてとらえ、高速なインターネット回線がつながりながら「いまだスマートでないハウス」、液晶TVのようにインターネット接続機能などを持ちながら「いまだスマートでないアプライアンス」について指摘。その論点として「消費電力を見える化できていない」「インターネットから制御できない」「インターネットが電力に寄与していない」を挙げた。

 また、世界や日本で電力会社や政府がどのようにスマートメーターに取り組んでいるかと同時に、「それでは待てない」という人がちが自主設置で消費電力をモニターできる簡易型スマートメーターや「スマートコンセント」を導入している動きを紹介した。

 さらに節電の動きについても触れ、「足りないのはKwであって、Kwhではない」と指摘。対策として、利用側の電力消費をある程度コントロールする「デマンドレスポンス」について論じた。スクリーンに写された簡単な試算では、スマートメーターを利用して緊急時に1戸で10アンペア下げさせることにより、100万戸で100万Kw、原発1基分の電力が削減できるという。これについて、協力家庭がその分を発電したとみなして電力の買い取り金を払う「ネガワット取引制度」を紹介。「節電意識に訴えるという近代的ではない方法ではなく」節電を実現できると語った。

 最後に、スマートフォンや、AppleTV・GoogleTVなどのスマートTVについて触れ、「人と人に加えて、人と物、物と物のコミュニケーションが始まる。その先にスマートグリッド端末がある」とビジョンを語った。




(高橋 正和)

2011/7/19 11:07