「KDDI∞Labo」第1期終了、「ソーシャルランチ」が最優秀賞に


 KDDIは、開発者支援プログラムとして今夏より実施してきた「KDDI∞Labo(ムゲンラボ)」の第1期を終了し、最優秀賞として「ソーシャルランチ」を選出した。

 「KDDI∞Labo」は、新興企業や、個人レベルで活動する開発者を対象とした支援プログラム。参加チームに対し、KDDIがサービス開発時のアドバイスや収益化、経営ノウハウに関する支援を行う。今年5月に始動し、8月から第1期の参加チームが活動してきたが、今回、各チームの最終的なサービスが発表されるとともに、最優秀アプリが発表された。

第1期の最優秀アプリは「ソーシャルランチ」

 第1期の最優秀アプリには、シンクランチの「ソーシャルランチ」が選出された。「ソーシャルランチ」は、シンクランチが提供するランチセッティングサービス。Facebookでログインし、ランチしたい相手と事前にペアを組んでおき、ランチの提案をして日などを調整する、という流れで利用する。10月にWeb版、その後Androidアプリの提供を開始し、サービス開始から55日で会員数1万5000人に達し、500件のランチが実際に行われた。14日にはiPhone版の提供も開始された。

KDDI高橋氏(左)とシンクランチの福山誠社長(右)

 第1期終了に伴い、KDDIでは第2期参加チームの募集を開始する。応募できるのは設立から3年以内で従業員数10名以下の企業か個人・チームのエンジニア。応募期間は2011年12月15日~2012年2月10日。第1期からの大きな違いとして、Androidアプリだけではなく、iOSアプリ、Windows Phoneアプリでも応募可能となった。

 説明を行った「KDDI∞Labo」の“ラボ長”である塚田俊文氏は、KDDIには複数のプラットフォームを抱え、過去10年にわたってコンテンツプロバイダと協力して事業展開してきたノウハウがあるとアピール。選出されれば、KDDI社員が対面でアドバイスするほか、Android端末やiPhone、サーバー環境が提供されると説明した。第1期での取り組みでは、経営サポートの一環で、KDDIの女性社員を対象にしたヒアリングなども行われた。また第1期の全チームは資金調達に成功したほか、au one Marketでも参加チームが開発したサービスが利用できる案内されている。

 参加チームによるサービスの1つで、電子書籍とソーシャルサービスの連携機能を提供する「Qlippy」は、映画「ワイルド7」のプロモーションとして、原作マンガに「Qlippy」を組み込んだコンテンツが近日登場する予定であることも明らかにされた。

第1期参加チーム第1期での支援実績
映画のプロモに勝つようも第2期募集概要

KDDI高橋氏が語るスマホコンテンツビジネスの現状

 KDDI 代表取締役執行役員専務で新規事業統括本部長の高橋誠氏は、スマートフォンが拡大し続けている状況を踏まえ、これまではフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に伴い、有料コンテンツの売れ行きが鈍化する可能性を懸念していたものの、実際には市場が拡大してきたと指摘。その市場拡大の一因にはソーシャルゲームのアイテム課金が大きく占めているとして、ビジネスモデルはフィーチャーフォン(従来型の携帯電話)時代から変化してきたとする。

スマートフォンコンテンツの売上動向スマートフォンのトラフィックは増大中

 一方で、同社の携帯電話稼働数の約3300万台のうち、500万台程度のスマートフォンが全体のトラフィック(通信量)の約7割を占めていることが明らかにされた。キャリアとしてトラフィックをさばくのはなかなか大変、としてKDDIが掲げる3M戦略はコンテンツを支える面でも重要とした。ただし3M戦略を構成する具体的な施策、取り組みについては、今後、あらためて案内するという。光ファイバーやCATVなども活用することが重要で、ハイブリッドなネットワークを整備する。

 また重点的な取り組みとして「アライアンス戦略」を挙げた同氏は、海外での提携に注力しているとして、最近では田中孝司社長が渡米してパーティを開催し、現地企業で同社の取り組みをアピールしてきたという。日本では、景気や人口の動向から国内市場が縮小傾向にあると見る意見もあるが、海外の事業者にとっては、巨大な経済力を背景に日本市場への高い。将来的にも東南アジアへの中継地点としての役割も期待されているという。さらに同氏はKDDIの投資活動をあらためて振り返りつつ、KDDIが保有する“資産”として、ネットワーク、課金、プロモーション、アジアでの事業リソースなどを挙げ、それらを活用し、長期的な取り組みとして新興企業や個人エンジニアを支援できるよう準備を進めているとした。

KDDI塚田氏(左)と高橋氏(右)

 会見後、報道関係者からの質疑に応えた高橋氏は、「今回の取り組みはよちよち歩きだったが、互いによい影響を与えることができて、実施してよかった」と総括。北米の動きを手本にしつつ、第2期以降も継続的に活動する方針を示したほか、多くの収益が見込めるほどの形には仕上げられなかったと反省点も挙げる。第1期の5社のうち、いくつかの企業にはKDDIとしても投資を検討する考えを示した。ただ投資額としては、新興企業とあって多額の資本を必要とする段階ではないことから、さほど大きな額にはならないとした。また海外の事業者とも連携を進めるなかで、「KDDI∞Labo」を通じて日本の企業ならではの特徴を問われると、「大きな違いは、北米企業ではパソコンの延長線上でモバイルを捉えているところがある。一方、日本はモバイルで育ってきた世代であり、モバイルだけで100%完結するサービスを最初から設計するのが強みではないか。もちろん北米企業も気づき始めており、たとえばFacebookは最近になって、モバイル専門チームを立ち上げたと聞いている」と説明した。

KDDIではコンテンツプロバイダへの投資活動を積極的に実施KDDIの資産
高橋氏はプレゼンや囲み取材で、コンテンツのクラウド化を指摘

 さらに高橋氏は「スマートフォンでオープン化、と言って、これまで無責任すぎるやり方をしているところがあったのではないかと思っている。たとえば我々は端末だけリリースし、あとは好きにやってください、という形だが、そのままではなかなかiPhoneの世界に追いつけないと感じている」と語り、ある程度、垂直統合の仕組みがスマートフォンでも必要との認識を示した。このほか囲み取材で高橋氏は、今後クラウドを活用するコンテンツの拡大、ひいてはHTML5を用いるようなアプリケーション/サービスの展開にも期待感を示していた。




(関口 聖)

2011/12/14 20:50