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ソフトバンク第3四半期決算、「2016年度に営業利益1兆円」


孫氏

 ソフトバンクは、2011年度第3四半期の決算を発表した。業績に関する発表では、これまで2010年代の達成を目指していた「営業利益1兆円」の達成時期について、初めて時期が示された。孫氏は「2016年に営業利益1兆円を出すような会社にする。こうした中期の目標を示すのはソフトバンクとして初めて」と述べた。

 孫氏は冒頭、「今、日本の経済は土砂降りの状況で、欧州の経済状況もある。中期のビジョンを掲げて今こそ改革を進めるべきではないかと考えた。ずっとインターネット事業を進めてきたが、やっと利益を公言できる時期になった」と語り、プレゼンテーションをスタート。4月〜12月におけるグループ全体での売上高は、2兆3981億9200万円(前年同期比6.6%増)で、営業利益は5327億8300万円(同10.5%増)となった。
今期のハイライト 連結での業績

「営業利益1兆円」に向けて注力、iPhone機種変更で300億円

2016年度に営業利益1兆円を目指す

 今回初めて「2016年度に連結営業利益1兆円」という中期目標を掲げた孫氏は、目標達成に必要な戦略として「顧客基盤の強化」「ネットワーク増強」の2つを挙げる。

 「顧客基盤の強化」として、同氏が紹介したのは家電量販店におけるスマートフォン販売数、そして第3四半期だけ(2011年10月〜12月)でのiPhoneユーザーのMNP(携帯電話番号ポータビリティ)による流出数などだ。

 スマートフォン販売数の具体的な数値は示されなかったが、外部の調査会社に基づくデータとして、NTTドコモやauといった競合他社よりも多くスマートフォンを販売したと説明。孫氏は「iPhoneの台数を公表していないが、ドコモやauのトータルのスマートフォン、スマートパッド(タブレット)の台数を大きく上回り、我々が最も多くのスマートフォン、スマートパッドのユーザーを抱える会社だと自負している」と述べ、他社よりも数多くのスマートフォンユーザーがいるとした。
そのために2つの要素が重要という 家電量販店の総販売数

 この第3四半期中では、iPhone 4Sの発売が大きなトピックの1つ。「auでも販売されることになって、大きな危機感を抱いた」とした孫氏は、“守りを固めるための施策”を実施したと語る。その結果として、同社のiPhoneユーザーがMNPで他社へ乗り換えた人数は、10月〜12月の3カ月間で、約5万人になったことが明らかにされた。

 孫氏は「守りのキャンペーンが有効に機能して、想定よりもはるかにうまく防戦できた」と評価。ただ、iPhone 3GSからの機種変更に向けたキャンペーンでは、約300億円を投じたこともあわせて説明。iPhone 3GSからの機種変更は、第3四半期でおおむね刈り取ることができたとの見方も示され、第4四半期には影響しないという。また、今後、iPhoneの新機種が発売されるとしても、ここまでの費用は投じない方針も質疑応答の際に示された。
MNP流出は5万に抑えた 同じiPhone 4Sを扱うauより純増数が多いとした
iPhoneの機種変更キャンペーンで300億円投じた 総販売数

ウィルコムの業績について

 営業利益1兆円に向けて、顧客基盤が重要となるのは、月額利用で安定した収益をもたらす移動体通信事業がソフトバンクを牽引する存在となっているためだが、その中でも新たな成長軸となるのがソフトバンク傘下となったウィルコムだ。約1年前の2010年12月から本格的にソフトバンクの元で反転攻勢を開始したウィルコムは、それまでの純減傾向から転じ、この2011年4月〜12月までに56万もの純増数を記録した。ユーザー数は431万契約に達し、ウィルコムによる3G販売数をあわせると、ウィルコム契約数は450万になった。

 PHS契約数をソフトバンクモバイルの契約数に合算すると、契約数は3215万契約に達する。孫氏は「我々のユーザーは実質的に3000万を突破した。ボーダフォン買収時は1522万契約で横ばい傾向だったが、買収から6年で倍以上になった」とこれまでの実績をあらためてアピールした。
純増に転じたウィルコム 3Gを加えると450万契約に

ネットワーク増強をアピール、“実質LTE”のAXGP事業も

接続率と速度が重要

 営業利益1兆円を実現するためのもう1つの注力ポイントがネットワークの増強。ここで孫氏は「接続率と速度の2つが揃って、本当のネットワークの満足度が向上する」と述べる。

 最近、ソフトバンクモバイルが取り上げる接続率(電話をかけた際に繋がった割合)は、他社では見かけない評価項目だが、「繋がりにくい」とTwitterでユーザーに指摘された孫氏にとって「自らのことが大変悔しかった」として、担当部署に檄を飛ばしてエリア拡充を図ってきた。その結果として今回示されたのは基地局数で、2010年12月時点で約8万カ所だった基地局が、1年後の2011年12月には18万カ所となり、2.3倍と大幅に増強されたとする。これは家庭向けのフェムトセル(ごく小さなエリアの宅内向け基地局)やリピーター(屋外の電波を屋内に中継する装置)を除いた数字だが、店舗向けやビル内の屋内局、リピーターは含む数字。今回のプレゼンで内訳は示されていなかったが、同社Webサイトによれば、12月末時点の数字として、屋内局を含む無線局が13万局強、リピーター(中継局)が4万5000局となっている。今回の会見で、孫氏はこの取り組みを「ギネス級の増加」とアピールし、その結果として接続率は他社並みに向上したとしている。

 家庭用のフェムトセル装置は積極的に増加させる方針とのことで、全国的に増やすキャンペーンを展開し始めたという。
基地局数が大幅に増加 フェムトセル増強へ

 孫氏はWi-Fiアクセスポイントが20万カ所に達したことも紹介した。同氏は「ドコモの障害が報じられているが、我々は日本で最も多くのスマートフォン、スマートパッドのユーザーを抱えており、そのトラフィック(通信量)はWi-Fiによるオフロード(分散)が必要だ。特に都心で必要であり、急激に増やしてきた。ドコモは数年前まで必要ないとしており、7700カ所に留まり、auは6万カ所だという。しかし我々は20万カ所に達し新宿、渋谷、池袋、銀座など、基地局を増やしにくい場所でWi-Fiスポットを増やし、速度向上だけではなくトラフィック分散を積極的に行っている」とした。
接続率 Wi-Fiアクセスポイントは20万カ所に

 満足度を向上させるために必要な“速度”については、「SoftBank 4G」と銘打った新サービスを開始し、その対応機種であるモバイルWi-Fiルーター「ULTRA WiFi 4G」を2月末にリリースする予定であることが明らかにされた。

 SoftBank 4Gは、かつてウィルコムが開発したXGPという通信方式を発展させた技術を用いているが、孫氏は「ソフトバンクはLTEで遅れていると言われているが、下り最大76Mbpsで、実質的にLTE。技術的には“TD-LTE”と互換性があるもの。これが商用サービスとして今月末から本格的に始まる。重要なのは実効速度や実際のカバーエリア。一気にドコモのエリアを上回るエリアも実現させたい。次世代の通信網で一気にトップに躍り出る」と意気込みを見せた。
2月末に発売という 下り最大76Mbps
900MHz帯は申請済

 かねてより明らかにされてきたように、2011年度、2012年度の2年で1兆円をグループ全体での設備投資に投じること、900MHz帯の免許獲得に向けて申請したことにも触れた同氏は「900MHz帯を持っていないことを言い訳に使うなとお叱りを受けるが、事実は事実。電波の到達度合いは全く違う。獲得できれば、届きにくいという汚名を完全に返上してみせる。2月に事業者を認定するとのことで4社が申請した。ドコモとauは“プラチナバンド”を持っており、持っていない我々こそ割当の順番だと信じている。大災害発生時にライフラインとして携帯電話が繋がる、ということは必要。昨年の大震災でも、我々の携帯電話の電波が1人でも多くの人に繋がったならば、どれほど迷惑をかけずに済んだかと胸を痛めている。3000万近いユーザーを抱える我々にとって繋げることは責務であり、ぜひ900MHz帯を獲得したい」と語った。

 このほか営業利益1兆円達成に関して、現時点でその業績を達成している国内外の企業などを紹介し、そうした企業やソフトバンクの時価総額と業績を比較して、ソフトバンク株の割安感をアピールしていた。

携帯サービスの業績、オペレーションデータ

 携帯電話サービス(移動体通信事業)の業績としては、売上高は1兆6191億7700万円(前年同期比11%増)、営業利益は3464億7800万円(同10.2%増)となった。なおウィルコムは連結ベースの業績に含まれていない。

 10月〜12月における純増数は93万6900件で、そのうちポストペイ(後払い)型の契約件数は94万3500件で、プリペイドは6600件減少した。決算短信には昨年度と今年度の実績が掲載されているが、プリペイドが減少したのは今期だけとなっている。なお純増の背景としてスマートフォン販売の堅調のほか、iPad 2、データ通信端末、みまもりケータイの販売増が要因とされている。

 端末販売数は378万7000台で、新規契約が184万8000台、機種変更が193万8000台となり、こちらも純増数と同じ要因が販売数を支えたとされつつ、iPhone 4Sが既存ユーザーの機種変更を促進したという。
純増数 移動体事業の営業利益

 ARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)は、4230円で前年同期と比べ80円減少した。データARPUは前年同期比で200円増の2530円となる一方、音声ARPUは同280円減の1700円となっている。音声ARPUの減少は、デジタルフォトフレームやiPadなどの増加が影響したほか、事業者間の接続料の値下げで着信料収入が減少したことが要因という。データARPUの増加は、スマートフォンが牽引した。

 解約率は、前年同期の0.91%から0.2ポイント増加し、1.11%となった。デジタルフォトフレームやデータ通信端末の解約が影響したという。新規顧客獲得手数料平均単価は2万5700円。手数料単価が低い端末の販売比率が上がったほか、一部機種で価格を見直したことで、前年同期から1万2100円減少した。機種変更手数料の平均単価は2900円減の2万5800円となる。
営業利益はauを逆転とアピール 利益水準ベースでは国内2位とした

ドコモ×ディズニーへの見方、トラフィック増にも言及

 質疑応答で、前日のドコモとウォルト・ディズニー・ジャパンのコラボについて尋ねられた孫氏は「少なくともMVNOとして取り組んでいるのが、ディズニーと我々との関係。ドコモとの取り組みはキャラクター提携の1つと考えている」と述べ、コラボケータイの一種との見方を示した。

 スマートフォンが招くトラフィック増加に関して、ドコモの障害はドコモだけの問題ではなく世界の通信事業者共通の悩みと指摘。電波の割当について触れた孫氏は、オークションにすべきとして、テレビ局も例外とせず、無駄に利用されている帯域がないか精査すべきと主張した。またトラフィックは、東名阪といった都心部では1年で年間3.4倍増加するとして、「年間3.4倍であれば2年で10倍、4年で100倍、8年で1万倍になる。一方、8年間で電波が割り当てられるとしても、何倍もらえるのか」と語る。

 料金体系も世界中で見直しが始まっていると述べた同士は「スマホを勝手に売ったのだからパケット定額制を永久に続けるのはキャリアの義務で泣き言を言うな、とお叱りを受ける。お叱りを受けても、トラフィック増は世界共通の問題」と述べ、ソフトバンクモバイルにおける料金体系の変更や従量制の導入などには触れないながらも、課題解決の必要性を強調する。さらに「トラフィックが膨大に増えるからと言って、通信事業者として何か責任を放棄するとか、ユーザーに極端な不便を強いることはないよう頑張りたい」とコメント。アプリ提供者側の費用負担の考え方は「わからない」としつつ、トラフィック増への考慮が必要で「一緒にになって取り組んでいただかないと困る。アプリの作法もみんなで協力しなければ。ユーザーも認識しないと、みんなが困る」とした。

 このほかauが固定網とセットでスマートフォンの利用料を割り引くサービスを発表したことに対し、「固定とスマホの複合料金サービスは検討しており、近い将来発表できると思う。ただし、KDDIの割引はユーザー獲得にはほとんど影響しない。当社の調査では、誤差程度、数%の影響だとみている。対抗上、同じようなものは提供するが、騒ぐほどの数に影響するものではない」と市場全体への影響度は低いと評価。

 ただ別の質問でFMCに関して尋ねられた孫氏は「ソフトバンクとしてさまざまなパッケージングをやる。1世帯あたりでどのくらいAPRUを得られるか。固定や無線、コンテンツ、サービスとさまざまなパッケージでサービスを提供したい」とも述べていた。




(関口 聖)

2012/2/2 21:15