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エリクソン、「Mobile World Congress 2012」展示内容を解説


 エリクソン・ジャパンは、スペインのバルセロナで2月27日より開催されるイベント「Mobile World Congress 2012」の展示内容を紹介する、記者向けの説明会を開催した。紹介された展示内容は、MWCの会期中に発表される内容を除いた、展示ブース全体のテーマや、デモンストレーションの内容など。また、説明会の後半には2012年1月よりエリクソン・ジャパンの代表取締役社長に就任したヤン・シグネル氏が登壇し、同社の方針などについて語った。

 エリクソンは従来通り「Mobile World Congress 2012」に出展する予定で、複数のホールからなる同イベントの展示会場のうち、ひとつのホールをまるまる借り切って多数の展示を行うのも例年通り。展示やデモの内容は、通信系のインフラ全般からサービスに至るまで広範に渡る。ちなみに、これまでエリクソンのホールの中にブースを設けていたソニー・エリクソンについては、今回はソニーとしてエリクソンのホール内にブースを構えて携帯電話などの展示を行う予定だ。

 展示内容を紹介したエリクソン・ジャパン CTOの藤岡雅宣氏は、ネットワークと社会の結びつきといった比較的抽象的なものから、キャリア向けの障害対策システムや、最新の通信技術、次世代のネットワーク運用方法の概念まで、大きく10のテーマで展示することを紹介した。


展示テーマは大きく10種類に分けられた 展示ブースのイメージ

 

スマートフォンのトラフィック対策

エリクソン・ジャパン CTOの藤岡雅宣氏

 このうち、同社として大きな位置を占めるのがモバイルブロードバンド関連。特にLTEなど次世代の通信方式への移行と共に注目されるのが、各国のキャリアでも課題となっている、スマートフォンの普及に起因するトラフィック増への対策だ。藤岡氏は、スマートフォンのトラフィック特性について、従来の携帯電話(フィーチャーフォン)と比較して、無線通信ネットワーク上で制御信号のトラフィックが多い上に、コアネットワーク上の制御信号トラフィックも増加する傾向にあることを解説し、これらはアプリの仕様によっても大きく変わるとする。この制御信号を抑制する方法としては、3GPPのリリース8に組み込まれる、無線状態の遷移の最適化例を挙げ、端末とネットワーク側の双方で対応すれば制御信号の抑制が図られるとした。

 無線状態の遷移の最適化とは、具体的には、端末がデータ通信を行わない休止状態(Idle/アイドル)と、データ転送が可能な状態(FACH:Forward Access Channel/ファッチ)の、中間の状態を設けるというもの。この状態は「URA」(UTRAN Registration Area/ユーラ)と呼ばれ、ネットワーク圏内に端末が認知された状態で休眠している状態で、ネットワーク側の制御による高速休眠への移行が可能になっている。これまでのように端末がアイドル状態からデータ転送を起動すると多くの制御信号が発生するが、URAからデータ転送を起動すると、状態の遷移による制御信号の量は抑制できるという。


モバイルブロードバンドへの取り組み 制御信号が従来より多いスマートフォンのトラフィック特性
状態遷移にURAを規定することで制御信号の抑制を図る仕組み YouTubeの再生を例にした、端末によっても違うトラフィックの例。頻繁に通信するものから、最初に通信するのみのものまでさまざま

 

VoLTE

VoLTEについて

 LTEネットワークで音声通話を可能にする「VoLTE」についても、LTE世代のネットワークでは不可欠とアピールする。藤岡氏は、導入の是非よりも、どう導入するかが課題になっているとする。

 MWCの展示でもデモを実施する予定で、従来の回線交換による音声通話以上の、高音質な通話やビデオ通話、会議通話、メッセージング、プレゼンス、ファイル共有といった付加サービスが規定されてていることについてアピールするほか、音声トラフィックが従来の1/4で済む点や、電池消費が抑えられるなど、特性の面からもVoLTEの紹介を行う。

 また、クアルコムと共同で、LTEからW-CDMAに音声通話のハンドオーバーを行う実験を行い、成功したことも紹介。同時にはひとつの無線規格しか使用しない、「SRVCC」(Single Radio Voice Call Continuity)と呼ばれる技術が用いられており、これらは日本のキャリアも導入を検討している技術とのこと。「複雑な処理が発生するが、これを解決していこうというもの」と藤岡氏は引き続き開発していく方針を示した。なお、米Verizon Wirelessなどが3〜4月に開始する予定のVoLTEについては、異なる通信方式間の音声通話のハンドオーバーについて、同時に2つの無線通信規格をアクティブにするデュアル・レディオの方式が採用されており、SRVCCと比較すると「もう少し簡単で済む」とした。


従来の音声通話にはない付加価値を提供できる 効率良く帯域を使うVoLTE
従来より高音質な音声通話も可能 LTEと従来のネットワークの音声通話をハンドオーバーできる技術

 

HSPAは84Mbpsの商用サービス登場に言及

 藤岡氏からはHSPA規格の進化についても触れられ、「去年は84Mbpsのデモを行ったが、日本では今年84Mbpsまで行くと考えられる」と、商用サービスでも84Mbpsクラスの通信速度が実現する見込みであるとした。一方で、「今年は、速さよりもキャパシティをアピールする」とし、展示内容では、高度化でより効率的に帯域を利用できる点をアピールしていく方針であるとした。

 同氏からはまた、HetNet(Heterogeneous Network)と呼ぶ、広範囲のマクロセルと狭い範囲のピコセルを組み合わせ、最適化を行う制御により高いデータ通信速度を実現する技術も紹介されたほか、無線基地局の構成も、無線ユニットをアンテナに一体化させるといったものが登場しているとした。


HSPAはさらなる高度化が進む一方、効率性もポイントとした HetNetも今後導入される技術で、日本のキャリアでも研究されている

 

ネットワーク運用の支援

 エリクソンでは、ネットワーク障害などに対する支援策(OSS:Operation Support System)も、今後必要とされる要素を組み込んだソリューションを開発している。藤岡氏は、「問題が起き、エラーが出てから対応するだけでは難しくなる。ネットワークの中で障害を監視していても、ユーザーが感じるものは分からない。サービスのパフォーマンスを監視して、障害が発生する前に対応していこうというもの」とOSSの考えを語り、アプリごとの監視や、ユーザーの利用動向に応じた最適化が可能になるとした。こうした制御の仕組みは、通信インフラが「単なるパイプにならないように」という「スマートパイプ」の考えに則ったものでもあり、サービスの制御やトラフィックの監視が、最終的にネットワークに付加価値を付ける要素になるとした。

 また藤岡氏は、こうした監視や制御の流れと合わせて、ネットワークだけを監視するのではなく、「機能的にサービスのエンド・トゥ・エンドで見ていこうというもの。ネットワークセントリックから、サービスセントリック、ユーザーセントリックがトレンドになる。現在は着信など基地局のイベントをベースに情報を集め分析しているが、基地局からの情報を5分ごとに分析できれば、どの基地局が混んでいるかなどが分かる。また、アプリごとにどう使われているかを分析できれば、ネットワークの改善の方向性が分かる」と、ネットワークの運用・監視がサービスなどを含んだ、より包括的な内容になっていくとした。


OSS/BSSは障害対策など、これからのキャリアの課題に応えるものとなる スマートパイプとなることで、付加価値を追加する
イベント情報へのアプローチの変化 アプリごとの使用状況が把握できれば、より踏み込んだ最適化が可能になる

 

M2M、固定通信、Wi-Fi

 藤岡氏からはこのほか、M2M向けのソリューションとして、ネットワーク上のプラットフォームとAPIを提供し、国際ローミング経由でも、さまざまなアプリからM2Mを利用できるようにするソリューションや、消防など公共機関向けのソリューション、次世代のパケット交換機などが紹介された。クラウドサービスについては、モバイルの利用を大きく取り入れたものを「クラウド 3.0」と定義し、「クラウドとモバイルが組み合わさると、ビジネス的にも変わってくるだろう」と予測した。

 Wi-Fiなどの無線LAN関連のソリューションも、データ通信のオフロードで引き続き注目を集めている分野。エリクソンではMWCの展示にて、タイやインドネシアのキャリアで導入が決まったという、モバイルネットワークとWi-Fiをシームレスに利用できる仕組みを紹介する予定。これは、例えばspモードのようなモバイルネットワーク上のみで実現されているサービスを、Wi-Fi環境においても同時に利用できるようにするもの。「高度なソリューションで、単にWi-Fiにオフロードというのではなく、トラフィックを見分けて、モバイルに行くトラフィックを分けるのがポイント」とし、日本でもキャリアに向けて展開していく意向を示した。


M2Mではプラットフォーム化しAPIを提供
固定通信向けに次世代のIPプラットフォームも開発 クラウドはモバイルを取り込むことで「3.0」に
データセンター構築やクラウドなど多方面でキャリアに提案していく Wi-Fi環境でモバイルネットワーク向けサービスも利用できるようにするソリューション

 

1月から社長に就任したヤン・シグネル氏が挨拶

 説明会の後半には、2012年1月にエリクソン・ジャパンの代表取締役社長に就任したヤン・シグネル氏が挨拶を行った。

 シグネル氏は、同氏がエリクソンに入社した25年前は、モバイルはVIPが使うおもちゃ的なものだったと振り返った上で、現在はモバイルコミュニケーションが必需品になっているとし、日本市場が同社にとってアメリカ、中国につぐ規模になっていることを紹介。「日本はまだ可能性を秘めている市場。世界での最前線の市場で、新サービスや発端となるアイデアが生まれるのも日本。変わりすぎているとは考えておらず、トレンドを引っ張っていく市場。前例を見て成功できる市場ではなく、創造的に仕事をできる」と日本市場について語る。

 同氏は今後のネットワーク社会についても、ネットワーク化、通信速度の高速化が社会に急激な変化をもたらしているとし、すべてがモバイルを中心としたトレンドになっているという。一方で、トラフィックの増加などの課題に対しては、「ネットワークを見直す時」と決断を促し、「エリクソンの役割は、接続の後ろにある複雑さを紐解いていくこと」と説明。

 シグネル氏はまた、「新しい加入者より、既存ユーザーのサポートに注力するようになり、OSSなどが重要になる。業界は大きな可能性を秘めており、新規よりも既存顧客の満足度を上げることが重要になる」と、MWCの展示紹介でも一部で触れられたように、既存ユーザーに対する満足度向上のアプローチが今後重要になってくると予測した。


エリクソン・ジャパン 代表取締役社長に就任したヤン・シグネル氏 通信業界のトレンドについて

 




(太田 亮三)

2012/2/7 19:20