HTC Nippon、グローバルモデル「HTC One」を披露


 台湾HTCの日本法人、HTC Nipponは27日、グローバルモデルの「HTC One」3機種を披露する報道関係者向け説明会を開催した。いずれも2月開催の展示会「Mobile World Congress 2012」(MWC2012)で発表された機種となる。

 なお、2月にはKDDIとHTCが日本市場に特化する機種の開発を行うと発表されたが、プレゼンテーションでは触れられなかった。HTC Nipponでは、昨年も「MWCの報告会」としてグローバルモデルを国内向けに紹介するイベントを開催。その際に紹介された「Wildfire S」「Incredible S」といった機種は、過去1年間、日本市場ではキャリアから販売されていない。今回のイベントも「MWC2012の報告会」という位置付けで、会見中、「HTC One」が日本市場へ投入されるかどうか、明言されることはなかった。その一方で、質疑応答や囲み取材において日本市場へ注力する方針については、プレゼンテーションを行ったHTC Nippon社長の村井良二氏や、HTC本社のチーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)の小寺康司氏からあらためて説明された。

ユーザー体験重視の「HTC One」

 2月に発表された機種はいずれもAndroid 4.0を搭載する機種。4.7インチの720pディスプレイ搭載で、クアッドコアの「Tegra 3」(NVIDIA製)を採用した「HTC One X」、1.5GHz駆動のデュアルコアプロセッサを搭載する「Snapdragon S4」や4.3インチディスプレイを搭載し、外観は「HTC One X」とほぼ同等に仕上げられた「HTC One S」、1GHzのシングルコアプロセッサやWVGAの3.7インチディスプレイを備えつつ端末下部が手前に曲げられたデザインの「HTC One V」というラインナップになる。

HTC One XHTC One XHTC One XHTC One X
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 まず村井氏は、HTCの物作りのコンセプトとして、「他社とのスペック競争で開発するのではなく、ユーザーの目線に立って作ることが社是」と説明。ユーザーを中心に考え、日々の生活で新たな機能や自分自身にマッチした使い方をユーザーが発見し、驚きを得られること、さらに不要なものをそぎ落とし、使い勝手の良さをシンプルさを追求する姿勢を重んじているという。

HTCの姿勢を4つのワードで紹介

 こうした姿勢は「ユーザー中心主義」「サプライズ」「シンプル」「秘めた底力」といったワードで表現され、CPOの小寺氏は、具体的な機能の1つとしてカメラ機能を紹介する。スペックを見ると、「HTC One X」と「HTC One S」では800万画素、「HTC One V」では500万画素で、いずれも裏面照射型CMOSセンサーを採用し、「HTC One X」と「HTC One S」の2機種はF値2.0という、より光を取り込むレンズを採用している。こうしたスペックを元に、「HTC One」シリーズでは、一眼レフカメラのような連写性能を可能にし、動画の撮影中や再生中に静止画を切り取れる機能を用意した。さらにカメラ起動は0.7秒、1回の撮影を終えて次の撮影ができるまで0.2秒と、スピーディな撮影を可能にしている。また被写体との距離を自動的に判定してフラッシュの光り方も5段階で変化する。いずれも高機能なデバイスを搭載するだけではなく、より便利に使えることを目指してチューニングされたもの。またオンラインストレージの「Dropbox」と提携することで、HTC Oneユーザーは2年間25GBのストレージを利用できるようにし、撮影した写真を気兼ねなく保存できる環境も提供する。

HTC One VHTC One VHTC One V
HTC One VHTC One VHTC One V
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 楽曲再生機能では、昨年買収したというBeats Electronicsの技術が用いられている。小寺氏は、「アーティストが表現したかった音を再現できる技術」と述べ、どの音楽アプリを導入しても、Beatsのエンコーダーで再生するようになっているという。

 また外観は、開発にあたって最も注力したポイントとのことで、素材や質感にこだわったという。その具体例の1つとなる「HTC One S」のブラックは、筐体の素材にアルミを用いつつ、その表面に「Micro Arc Oxidation(MAO、マイクロアーク酸化処理)」と呼ばれる処理を施している。太陽の表面温度より高い熱で処理するという同技術は、人工衛星にも利用され、表面がセラミックになり、多少傷が付いたとしても、下の素地は出てこないという。

HTC One SHTC One SHTC One SHTC One S
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日本市場への取り組みについて

 日本での投入は明言されていないが、「HTC One」シリーズは世界140以上の通信事業者や販売代理店を通じて、4月初旬より販売される。欧州やアジアでは既に予約を開始したエリアもあるとのことで、米国での店頭価格は199ドル程度になる見込みという。

HTC Nipponの村井氏HTC CPOの小寺氏

 こうしたグローバルモデルを投入する際には、地域ごとに要求される仕様を入れていく、と語った小寺氏は、日本市場におけるローカライズについて「日本は特殊な部分がある。おいおい入れていくことになるのかどうかだが、HTC Oneに日本特有の機能はない」とコメント。囲み取材で小寺氏は「おサイフケータイや防水といったところが日本市場特有のスペックだが、これは端末の競争力というよりも、搭載していなければ選択肢に入れてもらえない。利用頻度が少ない機能でも、ないといけない機能だと思う」と説明。今回の会見では、KDDIとの協力体制について詳細は語られなかったが、小寺氏は、日本市場での取り組みとしてブランド向上と商品力の強化が重要との見方を示す。

 またLTE対応については、キャリアの求めに応じて搭載はするものという位置付けになる。LTE搭載でスピードが高速になればより快適に利用できるシーンはある、としつつも、小寺氏は、HTCがもたらすユーザー体験を大きく左右する要素ではないと説明した。世界各国でLTE用の周波数帯が異なることは、これまでのGSMや3Gでも同じだった、として、大きな影響は与えないとする。米国向けモデルであれば、米国内の周波数帯と、米国のユーザーがよく訪れる地域の周波数帯をサポートする、という方針になるのこと。日本のLTEサービスについても小寺氏は「スマートフォンに切り替わりつつある状況で、なんとかサポートしていきたい。ただ時期などはまだ明らかにできない」と述べた。

 市場全体の動向について、村井氏は「去年まではイノベーター層中心でスマートフォンへの乗り換えが進んできたが、今年から来年にかけては、フィーチャーフォンユーザーが雪崩のようにスマートフォンへ移行するのではないか」と見通しを語る。市場の多数を狙うHTCとしては、「スマートフォンは使いにくいもの、というところから、使えば使うほど好きになる、となることが一番重要。HTCの差別化として、どうメッセージを伝えていくかが課題」とブランド構築などに注力する方針を示した。HTC全体として、日本市場は先端的な機能・サービスが導入される市場として、重視しているとして、今後HTC Nipponの体制も拡充する方針を明らかにした。また、KDDIとの協力を発表した背景には「詳細はまだだが、その分意気込んでいる、ということ」と説明した。




(関口 聖)

2012/3/27 15:51