日本通信、“BTO”な「カメレオンSIM」をアピール


 日本通信は、LTEに対応したモバイルWi-Fiルーター「b-mobile4G WiFi2」と、LTE対応のデータ通信用SIMカード「b-mobile4G カメレオンSIM」を発表した。いずれも3月31日に発売される。27日には都内で記者向けの発表会が開催され、概要が説明された。

 

LTE対応モバイルWi-Fiルーター「b-mobile4G WiFi2」

 登壇した日本通信 代表取締役社長の三田聖二氏は、SIMロックフリーの機器が登場し、それが当たり前になるようこれまで努力してきたことや、クラウド・コンピューティングが次世代のインターネットの基礎として発展していくと展望を語る一方、無線通信の世界で4Gが普及するまでは、クラウド・コンピューティングの発展にも限界があるとする。ドコモのLTEはエリアが拡大しているものの、5年くらいの猶予があるとし、その間には「小さく、軽く、意識しないものが重要になる」として、今回発表の薄型のモバイルWi-Fiルーター「b-mobile4G WiFi2」を披露した。

 日本通信 代表取締役専務の福田尚久氏は、「とにかく小さくしようとこだわった」と、薄型でコンパクトに仕上がった端末を、スーツの胸ポケットから取り出して披露。LEDの点灯の種類でさまざまな状態を識別できるようにし、ディスプレイも省いて薄型化を追求した点や、バッテリー容量も「スリープを併用すれば1日は持つ」と、ある程度バッテリー容量などを犠牲にしながらも「最小・最軽量を追いかけた」とコンセプトを語った。


「b-mobile4G WiFi2」を手にする日本通信 代表取締役社長の三田聖二氏日本通信 代表取締役専務の福田尚久氏は「名刺入れと変わらないサイズ」とアピール

 

カメレオンSIMは“BTO型”、選択できるプランは拡充予定

 4GとしてドコモのLTEに対応したプリペイド型のデータ通信用SIMカード「b-mobile4G カメレオンSIM」については、ユーザーの利用形態に種類にあわせてラインナップを拡大させてきたこれまでの流れを変え、購入後にプランが選べることをカメレオンになぞらえて紹介。選択できるプランは毎月(期間終了後)変えられるほか、「メニューはニーズに応じて増やしていく」と、さらにプランを拡充していく方針も示された。加えて、数日間だけ高速なプランを利用するといったオプションも検討していくとした。

 また、当初の3種類のプランのうちのひとつで、30日間で5400円の「高速定額」は、「従来は提供していなかったプラン」とし、「モバイルWi-Fiルーター向けに、定額は必要だろうと考えた。購入当初に利用できる21日間もこのプラン」とモバイルWi-Fiルーターでの利用も意識した内容になっているとした。

 福田氏は、「日本通信はBTO(Build to Order)の考え。我々は通信サービスのBTOができるようにネットワークのアーキテクチャを設計してきた。これがあるために、これまでも3Gでさまざまな種類のサービスを提供してきた。今回、こうしたある意味でBTO型の4GのSIMを提供する」と語り、同社のこれまでの取り組みの結果として提供できる内容であるとした。

 三田氏は、「キャリアができないことをやらなかったら、MVNOとしては成り立たない。我々の能力は、これだけのものができるということ」と自信をみせ、「端末の付加価値で会社を運営しようというのではない。ネットワークをうまく使える、そういう形でニーズに合わせていく」とあくまで通信サービスでユーザーに利便性やコストを訴えていく方針を示した。


「カメレオンSIM」の名称とパッケージを発表した三田氏3月31日に発売される

 

マルチSIMの提供は今後

 質疑応答の時間には、ドコモの端末ではSIMロック解除済みであってもテザリングができない点について問われ、福田氏は「ドコモの端末で、ドコモ以外の他社のSIMでテザリングができないのはおかしいと、監督官庁を含めて指摘しているところ。SIMによって端末の機能が使える、使えない、というのは、言ってみればSIMロックを違う形にしているもの。我々は“APNロック”と呼んでいるが、これらが実質的にユーザーに不便を強いている。買った端末の機能をフルに使えないのはおかしい」と、ドコモに改善を訴えた。

 一部のMVNOが、マルチSIMとして複数の機器に対応できるよう、複数枚のSIMカードを提供していることについて聞かれると、福田氏は、「『b-mobile Fair』を出した時にマルチSIMをやりたいと話した。しかし、まずはBTOのサービス側をしっかり作ろうとなった。仕組み上、何枚欲しいと言われれば出せるようなものにはなっている。順番として今後、マルチSIMは提供していきたい。少しお待ちいただければ」と説明し、今後提供予定であることが明らかにされた。

 MNP関連の販売施策で同社の音声対応SIMがユーザーに“踏み台”として利用されている件に関連し、“業界への抗議”として1年間の最低利用期間を設定したことについて問われると、福田氏は一連の流れを説明した。「MNP対応で通話機能付きのSIMは、2010年の夏に出したものが初めて。最低利用期間は設けておらず、人気はあった。ところが、2011年の12月、2012年の1月、2月と、契約してすぐにMNPを利用して出ていくユーザーが非常に多くなった。3カ月で500人などという数字になり、調べてみると、キャリアが販売店と連携する形で、MNPキャッシュバックをやっていた。我々はSIMの契約で手数料を得ており問題はないが、1人で30回線とかやっている場合もあった。これはおかしいと、総務省にも相談したが、MNP自体は法的な義務があるのでそれ自体の制限は難しい。キャリアにも対処してもらえない。かといって何も対処をしない状態で我々が意見を表明しても問題が残る。業界としてもおかしい。我々は対策をとった形だが、ユーザーが犠牲を払った形。ただ、こうしたやり方が業界の共通見解ということになれば、1年縛りはやめて元に戻す。対処がとられることを期待したい」と、ユーザーを人質にとった経緯を説明するとともに、業界に対し改善を要求した。

 また、三田氏はこの件に関連し、「ドコモのPS Vita用SIMも、ソニーからイオンSIMを真似たものを出してくれと言われて出したと噂されている。イオンSIMの980円は原価割れだと考え、潰さないといけないと思っているのが今のキャリア。“APNロック”も不公平。MNPも同じで、我々は利益が出ているが売上を犠牲にしている。前向きな動きに障害となるもの。我々に裏はない。こういうことはやっちゃいけない」とキャリアや業界の対応を批判。2年縛りなどの拘束型についても「服も食べ物も自由にできるじゃない。通信サービスも自由にくみあわせることができるはず。選択は消費者の権利だ」と熱のこもった理論を展開した。


プレゼンテーション

 




(太田 亮三)

2012/3/27 17:31