英国大使館、日英のデジタルコンテンツに関するプレゼンイベント


 駐日英国大使館は、デジタルコンテンツを中心に、日本と英国でそれぞれ活躍する担当者がプレゼンテーションを行うイベントを開催した。「デジタルとアナログ 創造におけるパートナーシップ」と題され、デジタル時代における、日英の創造的な取り組みの可能性が語られた。

 携帯電話関連では、モバイルバンキングや支払いサービスをグローバルで展開するMonitise CEOのアラスター・ルーキーズ氏が登壇し、携帯電話の進化により、キャッシュレスの時代に移行しつつあることを強調。インフラとして携帯電話が一気に普及した途上国では特に、携帯電話による支払いが普及していることを実例を交えて紹介した。

 大企業を含め、メディアプランニングなどのマーケティングを手掛けるSomo 副CEOのトム・シュルツ氏は、米国を例に、モバイルメディアに触れている時間が非常に伸びているとする調査結果を示し、スマートフォンやタブレットなど多様に進化し、連携している様子を紹介。同社が手がけたアウディやディズニー、ドミノ・ピザといったクライアントの広告展開で、ARなども駆使した最新の事例を示した。同氏は今後、音で注目させる手法や、さまざまな種類の振動で触感を表現するハプティクス技術が、同社が手掛ける分野でも重要になるとの見方を示した。


Monitise CEOのアラスター・ルーキーズ氏Somo 副CEOのトム・シュルツ氏

 

 KDDIからは、新規ビジネス推進本部 戦略推進部 パートナー推進グループリーダー 課長の大野高宏氏が登壇し、KDDIと他社とのコラボレーションの取り組みが紹介された。同氏はGoogleやFacebook、グリーといった企業といち早く協業体制を築いてきた歴史を振り返った上で、モバイルが最も重要な分野として、3M戦略など現在のKDDIの取り組みも紹介した。大野氏からは、フランスのAR技術の企業とのコラボレーションなどを例に、パートナー企業がグローバル市場に拡大している様子が語られるとともに、ベンチャー向けファンドを設立し、こうしたグローバル展開を支援していく方針であることが示された。


KDDI 新規ビジネス推進本部 戦略推進部 パートナー推進グループリーダー 課長の大野高宏氏海外も含めて投資を行っていく

 

 デジタルのアニメーションやグラフィックデザイン、ブランディングなどを手掛けるAirsideからは、日本代表のヘンキ・ルング氏が登壇した。ルング氏はKDDIとのコラボレーションで製作したスマートフォンケースのデザインなど、日本でのこれまでの展開にも触れながら、ゲームなどスマートフォンを中心に展開してきた様子が紹介された。

 音声認識技術を開発しているNovaurisからは、社長のメルビン・ハント博士が登壇、日本企業にも納入されている実績などを紹介した上で、スマートフォンを使ってデモを実施した。ローカルで処理する同社の技術は、応答速度や通信量の節約といった面でメリットがあるとする。デモでは、「○○を再生」と曲名して指定して指示したり、カレンダーの起動、Gmailの表示、カメラの起動といった各種の機能の起動を音声で指示して利用できる様子が紹介された。さらに、デモでは日本語の認識にも対応している様子が披露され、日本語で前述のような指示をしたり、英語を日本語に翻訳して音声読み上げを行うといった通訳機能も披露された。


Airside 日本代表のヘンキ・ルング氏Novauris 社長のメルビン・ハント博士

 

 ここで、会場には特別ゲストとして、通商使節団と共に来日している英国 文化・オリンピック・メディア・スポーツ大臣のジェレミー・ハント氏が登場した。ハント大臣は、会場となった東京・代官山の蔦屋書店を「とてもファンタスティックな場所だ」と絶賛。日英のデジタルコンテンツ市場の大きさに言及するとともに、ロンドンオリンピック終了後は跡地をテックシティとして活用する方針も示し、「ロンドンは欧州のテクノロジー・ハブになる」という構想をさらに拡大させていく方針を示した。


英国 文化・オリンピック・メディア・スポーツ大臣のジェレミー・ハント氏

 

 プレゼンイベントでは、スマートフォンでAR技術を使ったマーケティングを支援するBlipparのCEO、アンバリッシュ・ミトラ氏が登壇した。ミトラ氏は、実際に広告キャンペーンで利用されたアイテムを使い、新聞の広告やDVDのパッケージにスマートフォンのカメラを向けると、AR技術で画面にキャンペーン情報が表示されたり、動画やゲームも楽しめたりする様子を披露。従来型の紙媒体でも連携できる様子が示された。


Blippar CEOのアンバリッシュ・ミトラ氏実際の広告などを使ってデモを披露

 

 日英のコンテンツプロバイダーについて、架け橋となるようなコンサルティングを手掛けるInterarrows 取締役バイス・プレジデントの高橋治彦氏は、ゲームメーカーと多数の仕事をしてきたことからいくつかの例を挙げ、日本市場の独自性や海外市場との差異を指摘する。ゲーム市場の規模は、コンシューマーゲームが減少傾向にある一方で、ソーシャルゲームが非常に伸びている様子を紹介する一方で、日本から海外に出ていく際には、海外市場の特性を知らない、海外の文化を知らないことが障壁になっているという。

 同氏は、カプコンやディー・エヌ・エー、スクウェア・エニックスのタイトルを、現地の企業とコラボした上で展開した実績を紹介し、システムや文化といった面まで含めて、現地の市場に合わせて変更していくということを「日英のコラボの例」として示した。高橋氏は、日本の技術やシステムはレベルが高いとし、ソーシャルゲームのほか、マーケティングや広告分野でも大きな可能性があるとした。


Interarrows 取締役バイス・プレジデントの高橋治彦氏日本のデジタルコンテンツではソーシャルゲームが急速に伸びていることを示した

 

(太田 亮三)

2012/4/10 20:14