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「一市場にゼロから開発したのは初」、グローバルなHTCの狙い


 20日、auのスマートフォン新機種として「HTC J ISW13HT」が発表された。5月下旬以降に発売されるという同機種は、グローバルで端末を展開する台湾メーカー、HTCと、KDDIがタッグを組み、日本市場だけのために開発されたというモデルだ。

 都内では、HTC主催による発表会が開催され、HTC CEOのピーター・チョウ氏、HTC チーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)の小寺康司氏、HTC Nippon代表取締役社長の村井良二氏が説明を行ったほか、ゲストとしてKDDI代表取締役社長の田中孝司氏もチョウ氏とのトークセッションで登場し、HTCとKDDIの協力関係などが語られた。
CMキャラ乃木坂46とKDDI田中氏(中央左)、HTCのチョウ氏(中央右)、HTCの小寺氏(田中氏の左隣)、HTC Nipponの村井氏(チョウ氏の右隣)

両社の“ジョイントワーク”

田中氏とチョウ氏

 スマートフォンがいよいよ主流になってきた――こう切り出したチョウ氏は、HTCがこれまで技術や革新性で市場をリードし、スマートフォンではリーダー的ポジションにある、と今回のプレゼンテーションで幾度も強調。公式な出荷台数は明らかにしていないものの、「ある調査ではグローバルで4500万〜5000万ほど出荷している」(チョウ氏)と、一定のマーケットシェアを確保するHTCは、Windows Mobile時代から定期的に日本市場へ端末を提供してきた。

 これまでのHTC端末は、いずれも海外モデルとほぼ同等のスペック、デザインで、“グローバルなスマートフォン”の代表的な存在だった、と言える。しかし、今回発表された「HTC J」は、グローバルモデルの「HTC One S」がベースとはいえ、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信といった機能を備え、緊急地震速報などにも対応した“日本向けのスマートフォン”だ。このような形で、1つの国に向けた“特別仕様”のスマートフォンが開発されるのは、「HTCとしては初めてのこと」(HTC Nippon 村井氏)とのことで、HTCの注力ぶりが際立っている。

 しかし、これまでグローバルモデルばかりを日本市場に投入してきたHTCが、今回、なぜ「HTC J」というモデルを作り上げたのか。

 その背景の1つとして、HTC Nipponの村井氏が挙げたのは、スマートフォン市場の動向だ。これまで先端層が中心だった日本のスマートフォンだが、いよいよ、フィーチャーフォンからの乗り換えが本格的になる、とHTCでは予測。この大きな波を捉えるには、日本市場に適した機種が必要ということになる。
トークセッション形式でチョウ氏と田中氏が経緯を語った

 ただ、その開発の経緯は、生やさしいものではなかったようで、チョウ氏とのトークセッション、という形で登場したKDDIの田中氏は「HTCのスマートフォンは本当にソフトがすごく、スムーズに動く。しかし海外ではどちらかと言えば、黒く、大きめな機種が好まれる一方、日本ではカラフルで持ちやすく、それでいて中身が凄い、という機種が求められる。ピーター(チョウ氏)は、そうした要素はまるで子供のようだ、として日本市場を理解してくれず、『俺はそうは思わない。しかし、(日本市場の特徴についての)話は聞いてやる』と言われた」と振り返る。

 田中氏とチョウ氏は、2年ほど前からの知己とのことで、初めて会ったのは「海外へ行くと、どこでもHTC端の端末や広告を目にする。これをぜひ日本でも、と思った」という田中氏が、台北にいるチョウ氏を訪れたときのこと。昼はフォーマルにミーティングをし、夜の食事をともにするときは「(せっかくの台湾なので)本当は小籠包を食べたかったが、ピーターが気を遣って、日本食を食べに行った」というエピソードもあったとのことで、今回の発表会の前には、2カ月ほど前にスペインでの展示会「Mobile World Congress 2012」の開催地であるバルセロナで会ったばかりという。ちなみにそのタイミングで、KDDIとHTCが「日本市場に特化した機種を開発する」と発表されている。

 田中氏とチョウ氏の気心が知れていることをアピールする場にもなった今回の発表会だが、田中氏はHTC製品について、先述したソフトウェア面での技術力の高さのほか、これまでau製品として登場したHTC端末は、ユーザーの満足度が他の機種と比べて一番高いとして、「HTC J」という製品に結実した、KDDIとHTCの“ジョイントワーク”(協業)の結果を見て欲しいと語り、「日本の文化と海外の文化は、うまくシナジーが出せないことがあるが、HTCのブランドは日本でも浸透して欲しい。HTC Jを日本市場におけるマイルストーン(一里塚、事業における記念碑的な業績)にしたい」と述べた。

 一方、日本市場で求められる要素を説かれたチョウ氏は「2年以上前に初めて会ったとき、田中さんから本当に熱意を感じた。HTCは技術、イノベーションのパイオニアとして10年以上展開し、WiMAX搭載なども、Android、Windows Mobileなども最初に手がけた。しかし田中さんと話をして『かわいくデザインすることも必要、大衆市場向けのことも必要で、それを考えることも必要』と言われた。HTCは謙虚な企業で、そうしたアドバイスに耳を傾けることにした」とコメント。

 さらに質疑応答でKDDIと協力する背景、HTC J開発の背景を問われると「KDDIのネットワークは、安定性やスペックなどおそらく世界最高峰で、感銘を受けた。KDDIの最高のネットワークがあり、HTCは最高のユーザー体験を提供できる。市場で戦う上で、なにより重要なのは差別化で、当社の製品はそれができていると思う。今回、日本市場だけのカスタマイズを行ったことで、今後の日本市場での見通しが明るくなり、非常にワクワクしている。(日本市場は、出荷数で魅力に欠けるのでは? という問いに対し)今回の投資には非常に意味がある。日本市場のこれまでの出荷数は少ないが、それは関係がない。注力しているのは“将来”だからだ」とした。なお、販売目標や今後の機種の投入ペースは明らかにされていない。

「Japanの“J”」、乃木坂46がCMキャラに

 製品の特徴について説明を行った小寺氏は、「HTC J」の数ある特徴のなかでも、カメラと音楽について大きく取り上げてプレゼンテーションを行った。カメラについては、高速起動や連続撮影、HDR撮影などに触れ、音楽についてはHTC傘下のBeatsの技術を採用したことなどに触れ、「アーティストの意図した音を忠実に再現する」とアピールした。
HTC Jの特徴を紹介する小寺氏 ブランド力強化を掲げた村井氏

 「HTC J」の開発で苦労したポイントについて質疑応答で尋ねられると、小寺氏は、「FeliCa(おサイフケータイ)やワンセグ、赤外線などそれぞれに苦労した部分はあるが、なによりもそうした機能を搭載して、このボディサイズに収めるのに一番苦労した」と語った。

 これから日本のスマートフォン市場は、フィーチャーフォンからの本格的な移行期になる、としたHTC Nipponの村井氏は、「日本市場におけるHTCブランドを強化したい。HTC Jの“J”はJapanのこと。シンプルな名称だが、非常に強い当社の意気込みを表わしている」と説明。先端層から、一般層への普及に向けて2012年は「大きなターニングポイントの年になる」として、訴求するため、乃木坂46の起用を発表。壇上には、乃木坂46のメンバーが登場し、「カメラがすごい」「雑踏のなかにいても音楽しか聞こえない」と感想が述べられたほか、乃木坂46のライブパフォーマンスも披露された。




(関口 聖)

2012/4/20 16:54