KDDI、2012年度にスマートフォンで800万台の販売目指す

田中社長が「auモメンタムの完全回復」を宣言


 KDDIは、2011年度(2011年4月~2012年3月)の連結決算および2012年度(2012年4月~2013年3月)の業績見通しを発表した。

KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

 そのなかで、2012年度のスマートフォンの販売計画を、前年比42%増の800万台とすることを発表した。同社の携帯電話全体の販売計画は1180万台としており、約7割をスマートフォンが占めることになる。

 KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、「iPhoneは、週によってスマートフォン全体の10数%~40%近くを占めている。これまで使えなかった一部の機能が使えるようになってから、販売に弾みがついている。3月はかなりいいところまでいっており、現状には満足している。また、Windows Phoneについては、現時点では少しずつ売れている段階だが、今後はWindows 8も控えており、それを含めて今後どうするかを検討していく」とコメント。さらに、「フィーチャーフォンのような形状でもスマートフォンを製品化できると考えており、現在フィーチャーフォンを利用しているお客様が、簡単で、使いやすい形のスマートフォンへと移行できるような商品開発を進めていく。当社が取り組む3M戦略を通じて、低廉な支払い料金を設定できるようになり、これをベースにスマートフォンの営業活動を進めていく」などと語った。

 なお、iPadの市場投入については、「ノーコメント」とした。


LTEは「できる限り前倒しで」「全国規模で一気に展開」

 さらに、2012年12月にサービス開始を予定していたLTEについても、「できる限り前倒しで展開したいと考えている。基地局の準備が前倒しで進んでいること、対応する端末の準備も進んでいる。現在、細かな検証を行っている段階である」としたほか、「800MHz帯、1.5GHz帯に加えて、2GHz帯での展開も実施したいと考えている。基地局への設備投資は、今年度見通しで800億円規模を計画しており、2013年3月の実人口カバー率は96%を見込んでいる。当社のLTEサービスの開始が遅れたのは、800MHz帯で開始することにこだわったため。高品質のLTEサービスを全国規模で一気に展開できる」などと述べた。

 2012年度の連結業績見通しは、営業収益が前年比0.2%増の3兆5800億円、営業利益は4.7%増の5000億円、経常利益は8.6%増の4900億円、当期純利益は4.8%増の2500億円とし、「すべての項目で前年実績を上回る」(田中社長)とする。

 au純増数は210万契約と、前年並みを見込む。「800MHz帯の再編で7月には解約数が増加することが想定され、また今後の競争激化も見込まれる。少し保守的な数字だが、確実に達成していく」と語った。

 FTTHは前年比70%増となる63万の純増を目指すとした。


決算の概要と見通し
LTEは予定より前倒しでサービス開始も検討セグメント別業績

 

 また、2012年度から事業セグメントを再編し、家庭および個人向け通信サービスの「パーソナル」、家庭および個人向けコンテンツ・決算サービスなどの「バリュー」、企業向け通信・ソリューション/クラウド型サービスの「ビジネス」、海外での企業および個人向け通信・ソリューション/クラウド型サービスの「グローバル」の4つとし、2012年度の事業計画もこれをもとに発表した。

 「パーソナル」セグメントでは、営業収益が1.4%減の2兆7600億円、営業利益が6.3%増の3700億円。3M戦略の推進により、auスマートバリューを適用したau契約数や世帯数の拡大、au解約率の低減を目指す。また、auの通信ARPUでは370円減の4160円を見込むが、「これを底打ちとし、反転させる」とした。

 auスマートバリュー適用のau契約数は244万件増の310万契約、同じく世帯数では111万世帯増の155万世帯を目指す。「固定電話とモバイルの双方を契約している利用者は300万契約程度。auスマートバリューをフックに双方の顧客基盤にクロスセルを行う」などとした。

 auスマートバリューを展開する際に懸念材料となっていた固定電話の世帯カバー率は、2011年9月の約40%から、2012年3月には73%へと拡大しており、「昨年まではクロスセルには限界があったが、この1年でブロードバンド回線のカバー率が急速に拡大している」と自信をみせた。

 「バリュー」セグメントでは、営業収益が20.2%増の1640億円、営業利益が1.1%増の450億円。auスマートパスの加入率の増加や魅力的なコンテンツの継続投入のほか、スマートフォン以外にもタブレット、テレビ、PCなども利用できるマルチデバイス展開を促進。auスマートパスの会員数は444万件増の500万契約を目指す。

 「ビジネス」セグメントでは、営業収益が1.1%減の6300億円、営業利益が4.9%減の710億円。大企業向けには、モバイル、音声、イントラネット、ソリューションの総合提案を加速。中小企業向けには「スマートバリュー for Business」によって攻め込む姿勢をみせた。

 「従業員300人以上の大企業は1万3000社。ここでの当社サービスの利用率は70%。クロスセルによる1社あたりの売上高を拡大する。それに対して、180万社の中企業、小規模法人での利用率は30%。4月からサービスを開始した『スマートバリュー for Business』で顧客数の拡大をはかる」と語る。

 「グローバル」セグメントは、営業収益が13.6%増の1950億円、営業利益が45.0%増の60億円。新たな成長に向けた事業基盤の整備を目指し、グローバルICT、キャリアビジネス、グローバルコンシューマの3つの観点から取り組む姿勢を示した。現在、KDDIでは、世界26地域59都市98拠点に展開しているという。

 なお、参考値として従来セグメントで算出すると、移動通信事業は営業収益が1.5%減の2兆6850億円、営業利益が3.1%増の4320億円。固定通信事業の営業収益が3.8%増の9500億円、営業利益は12.3%増の600億円となり、移動通信事業は4期ぶりの増益転換、固定通信事業は3期連続の増収増益になるという。


「auモメンタムが完全回復した」と宣言

 田中社長は、2012年度の重点課題として、「3M戦略の本格化」を掲げる。

 「3M戦略によって、ゲームチェンジが図れ、競争優位性を確保できる。マルチネットワークによる高速で快適な通信環境とコスト低減の両立が可能となり、新たな時代における事業成長へのつながることになる」などと語った。

 マルチネットワークの推進では、「au Wi-Fi SPOT」が10万スポットを突破し、「Wi-Fi HOME SPOT」を35万台配布。WiMAXエリアの拡充では全国の制令指定都市の実人口カバー率を95%までに高めたことなどをあげ、「現在、データオフロード率は20%だが、これを今年度末には50%にまで高めることで、連結設備投資を年間4500億円の水準に抑制する」などと語った。

 一方、2011年度の連結業績は、営業収益が前年比4.0%増の3兆5721億円、営業利益は1.2%増の4776億円、経常利益は2.4%増の4512億円、当期純利益は6.5%減の2386億円となった。

 田中社長は、「営業利益は11期連続での増益。営業収益は4期ぶりの増収。そして、営業収益、営業利益、経常利益では期初の見通しを上回った。当期純利益は税制改正の影響が150億円あり、これを除けば期初の見通しを上回った。順調な業績であると認識している」と総括した。

 移動通信事業の営業収益は前年比5.3%増の2兆7270億円、営業利益は4.5%減の4192億円、経常利益は3.8%減の4134億円、当期純利益は5.5%増の2257億円。固定通信事業の営業収益は前年比2.0%増の9155億円、営業利益は122.7%増の534億円。経常利益は388.4%増の383億円、当期純利益は64.4%減の142億円となった。

 田中社長は、移動通信事業において、4つのKPIとして「解約率」「MNP」「純増シェア」「データARPU」を重視する姿勢を示していたが、解約率は0.66%となり過去最低水準に低下。第3四半期には業界最低水準の0.56%になったこと、MNPでは9月に流入増に転じ、10月から3月まで6カ月連続でMNP純増ナンバーワンになり、前年比63万4000件改善の27万3000件の流入となったことをあげた。さらに、純増シェアでは通期で27.2%を獲得し、第4四半期には33.4%増と大幅に上昇したことをあげたほか、データARPUでは、第4四半期実績で前年比240円増の2580円と大幅に上昇。「4つのKPIが劇的に改善しており、auモメンタムが完全回復した」と宣言した。

「解約率」「MNP」
「純増シェア」「データARPU」

 

 auの純増数は211万件となり、累計契約数は3511万契約に到達。200万件規模の純増数は、auが好調だった2007年度の215万件に近い水準。これも田中社長の「auモメンタムの完全回復」宣言につながっている。

 2011年度のスマートフォンの販売台数は、前年比454万台増の563万台となり、全体の41%を占めている。「スマートフォンシフトを目標に掲げ、それを達成した。期初の400万台の計画を大幅に上回る結果になった」という。

 また、新800MHz帯に非対応の端末は、2012年3月末時点で78万台となり、移行率は91%に達したという。「2012年7月に予定しているサービス終息に向けて、着実に進展しており、うまくオペレーションができている」などとした。


auスマートパスなどは「非常にいい結果がでている」

 さらに田中社長が強調したのが、2012年1月からスタートした「3M戦略」が順調な立ち上がりをみせていることだ。

 3M戦略の第1弾としている、スマートフォンと固定通信サービスを契約することで、月1280円の割引が可能になる「auスマートバリュー」が、au契約数で66万件、世帯数で44万に達していること、スマートフォンユーザー向けに各種アプリケーションやサービスを提供する「auスマートパス」の契約数が56万会員に達したことを示し、「非常にいい結果がでている。auスマートバリューでは、固定通信系の提携事業者からも感謝されており、au新規契約時のMNP利用率が約60%と高い。1480円割り引いてもARPUベースでの損益分岐点を超える水準で推移している。auスマートバリューを利用することで、従来のフィーチャーフォン利用時よりもデータARPUが下がるといった実績もでており、スマートフォンの利用料金が高いという不安を軽減し、スマートフォンへの移行を促進できる」としたほか、「auスマートパスでは、サービス開始1カ月で、50万会員を突破した。これほど短期間に有料サービスの会員数が増加した例は過去にない。幅広い年齢層が契約しており、さらなる契約拡大が期待できる」などとした。


auスマートバリューの全体auスマートバリュー、モバイルの動向
auスマートバリューはスマートフォンへの移行を促進auスマートパスの動向

 

 なお、総合ARPUは前年比430円減の4510円。そのうち音声ARPUは600円減の2020円、データARPUは170円増の2490円。

 auの3月末時点での契約数は3510万9000件と、211万件増加。UQ WiMAXの契約数は226万6000件と145万9000件増加した。

 UQ WiMAXを含めた純増数は356万9000件となり、総契約数は3737万5000件となった。

 シンプルコースの契約数は2785万件で、契約率は85%となった。

 また、固定系アクセス回線は71万1000件増の711万8000件。そのうち、FTTHは36万7000件増の226万8000件。メタルプラスは35万5000件減の218万9000件、ケーブルプラス電話は73万3000件増の207万4000件、ケーブルテレビは5万5000件増の114万2000件となった。


ARPU端末販売台数と販売手数料
設備投資ARPUについては3M時代で新たな定義も示した

 




(大河原 克行)

2012/4/25 19:24